- Amazon.co.jp ・本 (152ページ)
- / ISBN・EAN: 9784872751734
感想・レビュー・書評
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お風呂やキッチンなどをシェアしながら、身軽に住まう新しい住まい方・ライフスタイルの提案。
さらに、「家は所有するものなのか?」、「一住宅=一家族というシステムはすでに現実感を失っているのではないか?」といった、現在の社会システムに対する問いかけも含む。
提案をさらに具体的に表現するために、郊外高密モデル、都心超高密モデルとして、実際の敷地を想定した具体的なプロジェクト提案を行っている。
・郊外高密モデル
敷地:横浜市鶴見区下野野町
敷地面積:14,722㎡
延べ床面積:42,619㎡
居住人口:1,700人
・都心超高密モデル
敷地:横浜市中区不老町
敷地面積:11,000㎡
延べ床面積:55,000㎡
居住人口:1,650人
一読して感じたのは、このような取り組みは、特定の敷地における単体のプロジェクトとして立ち上げることがはたして適切なのだろうかということである。
まず、これほどの規模のプロジェクトとして立ち上げるためには、相当の資金と事業リスクを引き受ける必要がある。
また、身軽に住まうという方法を選択するためにも、近隣及び他エリアに同様のプロジェクトが複数立ち上がって来なければならない。各人のライフコースの段階に応じた引っ越しができなければ、結果として選択できないと思われる。
むしろ、このような住まい方を広げていくことは、既存の老朽化マンション、社宅、高齢者施設、旅館などの再生を通じて可能となるのではないかと感じた。
そのためには、社会システムの在り方としてプロジェクトのファイナンスの手法(住宅ローン制度の見直しを含む)や、都市計画法、建築基準法、旅館業法、消防法など、現在改修やコンバージョンを阻んでいる様々な規制の見直しが必要である。
一方、このような具体的な提案は、ライフスタイルを訴求するという点では非常に有益であると感じた。
対談の中で、金子勝氏や上野千鶴子氏が述べているように、シェアしたいものとシェアしたくないものの繊細な感覚やつながり過ぎずにつながっていたいといった距離感が、今後の実践の中で具体的にどのような形で建築的、ソフト的に解かれるのかが大変興味深い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
都市だから成り立つモデル。氏の近未来の都市、住宅のあり方に対する危惧に大変共感する。
人口密度や使用するエネルギー量などを今以上に建築側から規定する計画は良いと思う反面、コミュニティはこうあるべき論に支えられた計画には危うさを感じる。
絵は見ていてとても楽しい。こうなったらいいなという明るい未来論か。
金子勝氏との対談が面白い。
「若い人はトイレの共同には耐えられないだろうというのが僕の正直な感想。(途中省略)共用にどれだけ慣れることができるか。ホテルにあるようなデラックスなトイレだったら、みなで共用するのもありかもしれない。」
建築家の職能とその領域について考えさせられる。