ジェノサイドの丘 下: ルワンダ虐殺の隠された真実

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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784872901597

感想・レビュー・書評

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  • 有象無象、玉石混交入り乱れる情報過多の現代を生きる私たち。その字面だけを見ると、どちらかというとネガティブな印象を受ける。でも、本作で描かれたジェノサイドの悲劇は、SNSも発達した今なら、もっと防げた気がする。国連っていう壮大な話になると、どうしても小回りが効かないんだろうし、大きな組織ならではの”責任を取りたくない個々人”問題も浮上してくることだろうし。それより、聞こえるか聞こえないかの小さい声が寄り集まった力の方が、こういう悲劇には強いと思えるのです。責任の在り処をいかにうやむやにするか、ってことにかなりの情熱を持っていかれた感があるこのジェノサイド。やるかたない気持ちの中、ネットワークのあり方をつらつら考えていた次第です。

  • ルワンダ大虐殺に至る経緯と実際に起きたことを記録した上巻に続き、下巻では冒頭から、ルワンダから逃れたジェノサイド当事者たちの足取りについて触れられている。ツチ族を殺害したフツ族至上主義者たちによる政党の結成や、彼らが国際社会にうまく取り入り、必要な支援を引き出していったことも明らかにされており、当時の国際援助機関の限界、もしくはある種の敗北と言ってもいい動きを知ることができる。

    中盤では、国際赤十字スイス代議員の「人道援助がそれを造りだしている政治的効果の煙幕となり、政府がその裏に隠れて援助を政策の道具として使うようになったら、我々もまた紛争の当事者と見なされるようになる」(131ページ)という言葉が紹介されている。この言葉、そっくりそのまま「ISILと戦うアクターのために資金援助をする」などと脳ミソお花畑な公式会見を世界中に流してくれた某総理大臣にプレゼントしてあげたいところ。
    ここに陥らないようにするため、国際人道支援機関は
    いずれのアクターにも肩入れしない「中立性」を原則としているが、この当時は必ずしもそれが実現できていなかったことが、この言葉から伺える。

    著者は「古い世代のアフリカの解放とは、即ちヨーロッパ帝国からの解放であった。しかし1980年から90年代のアフリカ大陸の人々にとっての解放とは、同じアフリカ人による独裁からの解放を意味している」(58ページ)と書いている。
    実際、ルワンダの混乱が波及したこともあってかザイールのモブツ政権は崩壊し、コンゴ民主共和国が復活した。しかしこの際、アフリカ諸国は国際社会によるコンゴでの虐殺調査団の介入を拒否した。ルワンダでのジェノサイドを「無視」した国際社会が、自分たちの土地にのうのうと入り込んでくるのを感情として拒否したのだろう、と著者は読み解いている。

    「アフリカ人が勝手に自立しようとしている危険な発展はつぶしちまえ、ってことなんだよ」というルワンダのカガメ大統領の言葉(224ページ)は、非常に端的に国際社会において「支援をする側」に立つ者の傲慢と偽善を言い当てている。
    ルワンダ虐殺から21年が経つ今、当時のカガメ大統領のこの言葉を改めて見直し、何ができるか(あるいは外部者として、知ることは続けつつもあえて余計な手出しはしないのか)を考え、内省し、質すべきを質す時期に来ていると思う。やや飛躍するが、その視点を持たない限り、世界で起きている戦争や紛争の解決の糸口も掴めないのではないだろうか。

  • ジェノサイド以降のルワンダ、殺人者フツ族避難民について。
    家族を殺されたツチ族と難民キャンプから戻ったフツ族はまた隣人として暮らさなくてはならない状況や加害者側であるフツ族の難民キャンプで人道支援し、武装化させる国際社会には世界の見方が変わるような衝撃を受けた。1994以降の話とは信じられない。
    翻訳がもうちょっと。

  • 上下巻を読んでやっとルワンダで起こった事の全体像が見えました。

    ジェノサイド後のルワンダは、被害者と加害者がまた隣人として暮らすのです。
    第二次世界大戦後にユダヤ人とドイツ人が一緒に暮らすようなものです。
    家族を殺された憎しみ・恨み・悲しみを抱いた状態で暮らすのも想像を絶するのに隣を見れば殺した本人がいるのですから生き地獄です。

    100日で100万人と書いてありましたが
    ジェノサイド後も含めるとどれだけの人間が
    殺されたのか想像出来ません。

    ホテル・ルワンダを知らなければ、ルワンダの場所はおろかジェノサイドのことなど知る由もありません。
    大昔の歴史を学ぶのもいいが、自分の生きている今と言う時代に起きている問題に目を向けることのほうが大事ではないだろうか。

  • ESSAYにて述べたツチ・フツの民族間虐殺、詳細本。メディアの威力で家族間や友人間で殺し合いが起こる。レビュー後日追加。

  • 虐殺後〜その後
    人道支援の難しさ(人道支援のはずが逆に反政府ゲリラ活動を助長することに)や国連職員の無力を描きだしてる。

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