焼かれる前に語れ~司法解剖医が聴いた、哀しき「遺体の声」

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784872903171

作品紹介・あらすじ

本来、死者に「人権」はない。あるのは「権利」である。その権利を尊び行使することは、すなわち正しい死因究明を施すことにほかならない。だが、検死体制、責任の所在、施設、人員、予算、法整備…。日本はそこに至るシステムがあまりにずさんである。死因を特定することは、生命保険や損害賠償など死者の最後の法的権利に関わる情報であると同時に、公衆衛生や類似事故の再発防止という意味でも重要だということを誰もが認識すべき時期にきている。本当の死因は何なのか-。声なきまま葬られていく現実を通して日本の死因究明のあり方に警鐘を鳴らす。

感想・レビュー・書評

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  • 衝撃を受けた本。アメリカのドラマ「CSI科学捜査班」とか「ボーンズ」のように、事件が起これば鑑識が行われ専門家が死因について調べるのが、当たり前で当然日本でも行われていると思っていた。しかし、実際はほとんどのケースでは、現場の警察官の判断で死因を特定していたりする。本当は毒殺だったかもしれないのだが、現場で不自然なものが無いと判断されれば、それっきり。千葉大学大学院教授の岩?さんの勇気ある提言を無駄にしてはいけない。私も知り合いの議員にこの本を紹介することにする。

  • 千葉大学法医学教室で解剖に携わる教授の現場の声を、聞き書き
    でまとめた1冊である。

    本書を読んでいると、病院で病気で死ぬ以外が怖くなってくる。
    もし、何かの事件や事故に巻き込まれて行き倒れても病死扱いに
    されるのでは?との不安を感じさせる。

    現場の解剖医だけに、変死体が解剖に付される率や司法解剖に
    充てられる国の予算、1体あたりの謝礼金など、具体的な数字も
    表記されているので分かりやす。

    巻末にあるウィーンの解剖事情も日本の現状と対比している。
    良書なのだが、モノクロ1ページで表皮を剥いだ解剖時の写真が
    掲載されているので、グロが苦手な人には要注意か。

    日本の司法解剖は他の先進国に比べ、立ち遅れているらしい。
    都道府県別に見ると司法解剖及び行政解剖に回される率に
    かなりの開きがある。

    平成18年度の解剖率で最下位に輝いたのは我が埼玉県である。
    「死体を捨てるなら東京ではなく千葉か埼玉へ行け」とまで
    言われているらしい。面倒臭いのか、埼玉県警よ。とほほ…。

  • 法医学、死因解明に興味を持って読んだ本。別の法医学者も現在の死因究明の制度に大きな欠陥を訴えていたが、それを財面的な面も含めて訴えている。
    死を待つ全て人に考えて欲しい一冊である。
    (星1つないのは少々攻撃的で、愚痴的な印象を感じたので)

  • タイトルから、犯罪被害者の遺体の声なき声のノンフィクションかなぁと思ったら、甘かった。2007年時点の日本の状況なので、今は変化があってほしい、変死体の死因究明システム。ほとんどが正確な死因を判明してもらえないまま焼き場へ…。それは完全犯罪の手助けになってしまうことも、って怖っ。
    ラノベで司法解剖率の低さを取り上げていたの、最近読んだの思いだしました。あれ?やっぱり改善されてない?
    とりあえず、実情はドラマの世界とは全くかけ離れておりました。

  • 日本の死因究明制度のずさんさを実感。解剖嫌い、死を直視しない国民性が招いた結果なのかもしれない。著者の先生の人徳が伝わってくる。

  • 現役法医学者とジャーナリストが手を組んで書かれた良書。

    法医学といえば上野さんが有名だけど、こちらの本は現在の法医現場の問題点を現場視点から明らかにされた点で貴重な一冊。

    確かに「警察が事件と判断→司法解剖」は本末転倒で「事件かもしれないから司法解剖→警察が事件と判断」であるべきなのに、様々な事情からそれが許されない点はおかしい。原因不明の死であろうとも闇に葬られるこの国では、そりゃ治安も悪化するわ、、と思う。

    法医学や社会的事件に興味のある人は必読。加えて、著者の職業に対する強い使命感を感じる。

  • 司法解剖医が検死・解剖の現状を語る。
    なので看板には偽りありだよなぁ。「司法解剖医が聞いた、哀しき『遺体の声』」ってサブタイトルがついているけど、遺体の声なんて一つも出てこないし。
    変死体で解剖されるのはほんのわずかだって話は以前にも法医学者の著書で読んだことがあるし、何年か前にそれについて運動が起こったのも記憶にある。
    この本が言っていることはもっともだと思うし、実際に行動している人たちには頭が下がる。けど。やっぱり騙された感は拭えないんだな。
    このタイトルだったら、読み手は司法なり行政なりの解剖で隠された試飲や犯罪が暴かれたって話を期待すると思う。
    少なくとも自分はそうだった。かなり残念な気分になった1冊。

  • 昨年に引き続き、法医学関連書を読み続けてます。3冊目。

    日本では、
    生きている間は、世界最先端の医療技術を施されるが、
    死んだ瞬間に、江戸時代へ戻ってしまいます。

    死体に合掌するだけでは供養とは思えず、その死者が残したメッセージを伝える仕事。
    司法解剖医の仕事を改めて、尊敬します。

  • ●まだ読んでないけど忘れないようにリストしておく。

  • 日本の法医学の世界がこんなに問題が多いなんて
    最近の官僚主義、の良いところが急速に実態に合わなくなり
    悪い部分がものすごく大きく開きが出てきた感がありますね。
    いままで、善しとして曖昧にしてきた良い事が崩れていく
    しかし誰も改めようとしない、そんな警鐘をしてくれる
    一冊だと思います。
    法医学の世界以外にもそれぞれの世界で今同じような問題が
    起こっているのではんばいかと感じるこの頃です

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著者プロフィール

千葉大学大学院医学系研究院法医学教育研究センター長
東京大学大学院医学研究院法医学教室教授

1993年東京大学医学部医学科卒業。1998年医学博士号取得。東京大学大学院医学系研究科法医学講座(助教授),千葉大学大学院医学研究院法医学教室(教授)を経て,2014年より現職。日本法医学会理事。おもな著書,『焼かれる前に語れ~司法解剖医が聴いた,哀しき「遺体の声」』(WAVE出版),『法医学者,死者と語る~解剖室で聴く 異状死体,最期の声』(WAVE出版),『死体は今日も泣いている 日本の「死因」はウソだらけ』(光文社新書)など

「2023年 『こども法医学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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