CIA洗脳実験室~父は人体実験の犠牲になった~

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制作 : 苫米地 英人 
  • WAVE出版 (2010年4月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (374ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784872904710

CIA洗脳実験室~父は人体実験の犠牲になった~の感想・レビュー・書評

  • MKウルトラ。1950年代から1960年代まで、アメリカ・CIAが行って
    いた洗脳実験のコードネームである。被験者の同意を得ぬまま、
    LSDを含む数種類の薬剤や過剰な電気ショック、強制的な睡眠と
    自己否定を促すような録音テープを流し、人格を作り替えようと
    する実験だ。

    アメリカ国内のみならず、隣国カナダでも行われていたこの実験の
    犠牲者のひとりが著者の父である。

    事業で成功し、精力的でユーモアも忘れなかった著者の父は腎臓
    結石の検査の為に打たれた注射で窒息するのではないかとパニッ
    クを起こした。一時的な不安は去ったかに思われたが、時が経つご
    とに不安は大きくなり、精神療法を受けるようになる。

    崩壊の始まりだった。気の短い父は精神療法では物足りず、ある
    施設に辿り着く。そこにいたが精神医学者のユーイン・キャメロンで
    あり、彼は研究費助成をCIAに申請し、助成金を受け取っていた人物
    でもあった。

    しかし、父の症状は関税に向かうどころかキャメロンの治療を受ければ
    受けるほど悪化して行った。事業を続けられなくなったどころか、家まで
    も手放すことになり、経済的にも逼迫する。1日の大半をぼんやりして
    過ごす姿は、かつての父とは別人だった。

    父に何が起こったのか。誰も分からなかった。著者が真相に辿り着いた
    のは数十年後。キャメロンの実験について書かれた本をテーマにした、
    小さな新聞記事がきっかけだった。

    息子が父に起こったことを調べ、綴る。辛い作業だったではないかと
    思う。そして、父の尊厳を守るために著者はアメリカ政府・カナダ政府
    を相手とした集団訴訟にも参加し、闘った。

    この裁判闘争も凄まじい。キャメロンの実験が行われてから既に30年
    が経過し、著者の父を始め、訴訟に名を連ねた被害者たちは皆高齢
    になっている。被害者が亡くなるのを待っているのではないかとさえ
    思ってしまったわ。日本の水俣病認定のように。

    被験者の同意を得ない人体実験は禁止されているはずである。だが、
    アメリカは本書の洗脳実験や『プルトニウムファイル いま明かされる
    放射能人体実験の全貌』のようにプルトニウムの人体投与事件を平気
    で行っている。ウィキリークスもアメリカの製薬会社がアフリカで新薬の
    人体実験をしているのをすっぱ抜いてなかったか。

    医療倫理はどこへ行ってしまったのだろうと思う。自分に行われている
    のが実は治療ではなく実験であっただなんて、当時、被験者の誰が思っ
    たことだろう。

    「人格を作り替える」どころか、被験者の人格は壊された。被験者本人
    ばかりではない。その家族の絆さえ、壊されてしまったのだ。おぞましい
    という言葉だけでは表現しきれない嫌悪感が湧き上がって来た。

    父を奪われた当事者の筆になるだけに、壊れて行く過程の父の様子を
    綴った部分は本当辛かった。父か壊れてしまった原因が不明だった時
    の、「自分もいつか父のようになるのだろうか」との不安も胸を締め付け
    られるような苦しさだった。

    権力は国民なんて「数」としか思っていないのだろうな。責任は誰も取らな
    い。そうして、被害者だけが残されるのだ。

  • Dr.苫米地と宮崎哲弥の巻末対談、あやしげだ。実は以外と普通でまともな対談でした。前文ではそのDr.苫米地がオウム真理教の洗脳テクニックについて今ではなんだかよく分からない「マインド・コントロール」と片付けられていることに警鐘を鳴らしている。それはLSDやチオペンタール(自白剤)を使って精神的な抑圧を取り除いた上で強制的に暗示をかけるー例えば繰り返しメッセージをいやになるまで聞かせるーと言った人体実験の様なテクニックが用いられていたという。Dr.苫米地が言う様にオウムが異常なテロ組織のみならずバックにそれを操っていた組織があるかどうかは知らないが。

    過去にCIAが行ったことは一言で言うと洗脳のテクニックに使える異常な人体実験に資金を提供していたことでしかもそれが行われていたのはカナダだった。被害者達からなる原告団はCIA相手に訴訟を起こし一人10万ドルで和解することになったのだがCIAはあくまで通常の医療行為に体する資金提供であり、後で見ればその手法は適正ではなかったが当時はそれがわからなかったと言い逃れをし、責任はカナダ政府にあるという。一方のカナダ政府も自国の主権が侵されていたにもかかわらず同様に責任を認めず証言者をかくまった。原告団には国会議員まで含まれていたのにだ。

    ナチス・ドイツのヘルマン・ヘスに対する精神鑑定を行い、責任能力があると鑑定した三人の精神医学者の内の一人ユーイン・キャメロンはナチス・ドイツの様な間違った信念を社会に吹き込むことに対しナチズムの悪夢が二度と繰り返されない様な世の中を作りたいと思っていた。しかし、どこで道を謝ったのかキャメロンのとった手段は「社会を再び混乱に導く可能性のある人々」から社会を守ることであり、具体的には1946年に発表した「社会精神医学の先駆者」という論文でナチス・ドイツを取り上げ「者の見方、信条、生活様式の伝達」を取り締まるために、社会精神医学は、社会統制の仕方を開発することに一役買わないといけないとしている。ナチスに感化された人々に興味を抱き、「彼らの者の見方や信念を帰る方法を考案できれば、それは他にも応用できるかも知れない。他の分野において、同じ様に発展を妨げ、我々の時代を不安定なものにして来た者の見方や信念から、我々は開放されるかも知れない」と論じている。

    キャメロンは1950年代には精神医学会の最高峰に達し、短期間の内にアメリカ精神医学会、ケベック精神医学会、カナダ精神医学会、アメリカ精神病理学会、生物学的精神医学会の会長に選ばれた。キャメロンの作った医療ネットワークのおかげでアラン記念研究所はたちまち世界を代表する精神医学研究および臨床期間の一つになった。このアラン研究所で行われたキャメロンの研究が洗脳や捕虜になった場合の対策に使えると考えCIAがキャメロンに接触した。CIAが研究したプロジェクト「MKウルトラ」は人間の行動を変える方法を探るという物であった。

    著者の父ルー・ワインスタインは腎臓結石の手術時の注射でおそらく今で言うパニック障害を発症し窒息感を覚えた。そしてアラン記念研究所で「治療」を受けることになるのだがおそらく今なら軽い薬を出して様子を見る程度で済むのだろう。しかし強い鎮静作用のある薬を飲まされ薬に対する依存状態に陥り長期入院を余儀なくさせられた。電気ショック療法、LSDの大量投与、感覚遮断、睡眠療法などを組み合わされこれまで作り上げた行動様式を失うまで退行させられ、その上でサイキック・ドライビングで新しい行動パターンを上書きさせられ様としていた。キャメロンの治験者を見る目は患者に対してというよりは実験、それも効果も理論も不明な独自の考えに基づいた物だった。サイキック・ドライビングとは抵抗を弱めさせられた状態で患者の生き方や考え方を帰る録音されたメッセージを数週間ぶっ続けで聞かせる物だ。

    被害者の一人ドクター・モローは神経科医として働きアラン記念研究所でのフェローシップ・プログラムに参加したいと申し出た際にキャメロンからその前に診察を行う必要が有ると告げられた。その理由は少し神経質そうだからと。11日間の電気ショック療法とさまざまなバルビツール剤の組み合わせでモローの脳は酸欠状態になり薬のアレルギーにより重度の喉頭部水腫も発症していた。

    つい最近のニュースではCIAの拷問レポートが公開されたが、それは冷戦下ではなくブッシュ政権下のテロとの戦争でのことだった。水責め、性的暴行他にもレッチリやメタリカの音楽がBGMに使われていたとニュースになっている。しかもそうやって得られた証言は信憑性がなかったというのだ。治療行為としては全く効果のなかったキャメロンの研究に金を出すCIAもうさんくさいがそのキャメロンが数々の学会長になったのもどうかしている。犠牲者とされたのは精神病患者ですらなく一般人だったというのもたまらない話だ。

  • CIAでこれほど恐ろしい実験が行われていたのなら、似たようなことが、日本でも、精神科医によって行われているんだろうなと。正義の名のもとに。

    もしや自分は実験体にされてないだろうかと。

    苫米地英人氏と宮崎哲弥氏の対談を読むと、本当にそういう気がしてしまう。

    父が崩壊する姿を目の当たりにし、自らも精神科医になって真実を知り、それを公開した著者の勇気と、正常な意識を失わなかった勇気に敬意を払いたい。

  • 2000年4月、デジタルハリウッド出版局より刊行されたノンフィクションが、2010年4月、WAVE出版より復刊。
    新装刊版の帯には、“Dr.苫米地「洗脳論」の原点!”とある。
    苫米地英人と宮崎哲弥による対談も収録。

  • 一国の情報機関と権利欲にむしばまれた科学者によって、人生を狂わされた一家の物語。時代に翻弄され、人が人を支配するという欲望の犠牲となり、不必要な悲しみを背負わされることに、こんな事は起こってはならないと、強いやりきれなさを感じます。

  • 精神科医である筆者の父がCIAによって行われた洗脳実験によって変わっていく様子、それによって筆者の家族に起こった悲劇を綴った1冊。

    実際にCIAって洗脳の実験していんだということが分かり少し怖いと感じました。よくこの非人道的な実験を繰り返していたものだ驚くばかりです。

    もともとは洗脳ってなに?というところから読み始めたのですが、1950年代前後の精神科治療の実態も垣間見れて、精神科治療の歴史も知ることのできる側面があり参考になりました。

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