映画は呼んでいる

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著者 : 川本三郎
  • キネマ旬報社 (2013年6月26日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784873764238

映画は呼んでいるの感想・レビュー・書評

  • 川本三郎はだんだん淀川長治に似てきているようだ。
    淀川は『映画千夜一夜』を読めばわかるように、非常に好みの偏った人だったが、
    TVの「日曜映画劇場」ではその顔は見せなかった。
    どんなに好きになれない映画でも無理にいいところを見つけ、
    それでも見つけられない場合はむりやり話題をつくり、映画への案内人を務めた。
    川本も、嫌いな映画はいくつもあるはずだが、あまり表立っては語らない。
    悪口を言っているひまがあったら好きな映画について語ろう、というのが彼の信条。
    だから細部にこだわる。映画のロケ地はどこか、使われている音楽はなんだろう、
    この鉄道はどこの鉄道だろうか、監督は、女優は、小道具は……。
    話は限りなく続く。私はすっかりリラックスしてそれを聞いている。
    川本にはいくつもの顔があるが、この本での顔は、映画へのおだやかな案内人としての顔だ。
    老舗の「キネマ旬報」の連載「映画を見ればわかること」は、もう十三年も続いている。
    この本はその連載をまとめたもので、四冊目にあたる。
    読んでいて感じるのは、さらりと書いたように見える短文にも批評家としての蓄積があるということだ。
    ロード・ムービーという言葉は日本ではヴェンダースから定着したのではないか、という話から中村登監督「集金旅行」をとりあげ、この流れから「男はつらいよ」「幸福の黄色いハンカチ」が生まれたと説く。そういえば寅さん映画はロード・ムービーだったことにいまさらながら気づかされる。これでたったの3ページ。
    懐かしの西部劇について語っているのを読むと、逢坂剛との共著『大いなる西部劇』を思い出すし、昭和二十年代、三十年代の日本映画を懐かしく観ている彼を見ていると『今ひとたびの戦後日本映画』や『映画の昭和雑貨店』シリーズを再読したくなる。
    「海炭市叙景」の函館や「悪人」の九州に注目し、森田芳光監督は東京のあまり日の当らない地味な土地を撮っていたと追悼しているのを読むと、そういえばこの人は『都市の風景学』や『言葉のなかに風景が立ち上がる』の著者だったな、と気づく。
    川本の著作は多く、近年でも年に三、四冊出すのは当り前。それなのにあいかわらず質は高い。映画にうとい私は、彼の本にどれだけ世話になったかわからない。
    海外の監督へのインタビューも精力的に行っている。『川本三郎インタビュー集』は出ないのだろうか。
    おだやかな案内人の顔をはずす時も、たまにある。
    「子供の頃から映画館できちんと映画を見ていること。これが映画について語る人の基本だろう。大人になってビデオで映画を見たり本の知識を通して映画を語るようなにわかファンの書くものはどうも信用出来ない」(p204)
    私などまさにその「にわかファン」の典型なので、恐れ入ってしまう。
    しかし、ドイツ文化史研究家の瀬川裕司がビリー・ワイルダーのロマンティック・コメディ三作のほぼ全場面に丁寧な解説を加えているのを読むと「ビデオ時代ならではの成果だろう」と評価している。頑固一徹にはならない、川本のやわらかさを感じる。
    この連載中に東日本大震災が起った。
    半年後、川本があるテレビ番組紹介雑誌で黒木和雄監督「原子力戦争」(78年)のことを書いたら編集長から「刺激が強すぎるので掲載できません」と言われた。
    メディアの自主規制に腹を立てた川本は、五年間続いた連載を辞めたという。
    あとがきを読むとしみじみする。
    「試写室で新作を見ることはもう若い世代にまかせて、シニア世代としてはDVDやBS、あるいは神保町シアターなどで昔の映画を見るようにしている。それがもうじき七十歳になろうとする人間の役割だと思う」
    川本さん、これからも映画の伴走者でいてください。
    私たちを映画の世界に案内してください。
    あのサヨナラおじさんのように……。

  • 映画書誌的に使えれば良いのだが。

  • 映画を観ることよりも、映画関連の本を読むことの方がはるかに多い私。たとえ観ていなくても楽しめるのが川本氏の著作。

  • 「そして、人生はつづく」(平凡社)、「美女ありき」(七つ森書館)どちらも読んでません、、、追いつかない。。。

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    「映画を見ると細部が気になる。細部はさまざまな形であらわれる。
    音楽、映画、鉄道、風景、あるいは絵画、本、野球、猫……
    自分の好きなものが映画に出てくるとそれだけで幸福な気持になる――。
    13年目に入った『キネマ旬報』の人気連載「映画を見れば分かること」でキネマ旬報読者賞を最多の6回受賞、評論家・川本三郎が旧作も新作も分け隔てなく、「映画好きと、面白く見た映画について話している気分で」(まえがきより)書いた最新映画評論・エッセイ集。 」

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映画は呼んでいるの作品紹介

自分の好きなものが映画に出てくるとそれだけで幸福な気持になる。最新映画エッセイ集。

映画は呼んでいるはこんな本です

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