- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784873767369
感想・レビュー・書評
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映画やアニメなどの映像作品とは何か、について改めて明確な定義づけをしてくれる本でした。絵画などの固定した一枚絵の芸術と違って、画面内の動きや構図の切り替わりによって登場人物の感情の変化を表現するもの。そう考えた時に、その表現は全てが感性で生み出されるのではなく、人間共通の心理構造に基づいた「原則」に従って作られる必要があります。
本書を読んでその原則を意識しながら作品を鑑賞すると、今までと違った見え方がしてきます。例えば、「今あえてイマジナリーラインを超えた。それによってキャラの心境の大きな変化が表現されてる。違和感がないように、ちゃんとカメラが回り込んでいる。」といった具合です。
毎週放映のアニメ業界で戦ってきた富野監督の言葉だけあって、映像業界以外の仕事一般にも活かせそうな教えも散りばめられています。まずラフに終わりまでラフなコンテを描いて全体像を煮詰め、それによって実務に入ってからのやり直しのリスクを減らす。職人が体系化をしないと、業界全体が発展しない、などなど。
一枚絵のレイアウトを描く、綺麗な絵のコンテを頭から書いていくなど、本書で批判されている作り方がまさに宮崎駿監督のスタイルなのが面白かったです。おそらく原則を無視した超天才のなせる技なのでしょう。
デジタル技術が発展して作業が楽になった結果、とにかく動かして映像の原則を無視する作り手が増えたというような批判は、昨今の超絶作画クオリティで動かしまくるが感情表現が貧弱な作品を見ていると納得の指摘です。
いっぽう本書の唯一の難点は、富野節の文章がとにかく読みにくい点です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
映像に違和感を感じさせないための基本的なルールが書いてある。映画やアニメでこういう演出あるわ…なるほど…となった。
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教科書として正しいかはわからないけれど、「表現」に関係することにはかなり広範に適用できる考え方が示されていると思った。
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富野由義悠季が論じるガチな演出論。物語の重要性、コンテの切り方、イマジナリィラインなど現場ならではの理論は説得力がある。アニメと演劇の関係なども示唆に富んでいた。