民具・民俗・歴史: 常民の知恵と歴史

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  • 慶友社
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  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784874492482

作品紹介・あらすじ

的に作りだした身辺卑近の道具とされており、また、有賀喜左衛門先生は、第一回民具研究講座において、日本人はどの時代にも常に新しい日本文化をつくり出してきた。何千年このかた、民具の製作にその能力を投入した日本の伝統は、現代の工業の成立にも基礎的に参加していることは疑いない。と言われ、さらに、宮本常一先生は、『民具学の提唱』で、民具研究は単に民具を研究することではなく、民具を通じてあるものを研究することではないかと思う。そのあるものとは文化とか技術とかを明らかにしていくことであり、個々の民具を知ることは手段であった。とされている。この「或るもの」というのは柳田國男先生が「郷土研究と郷土教育」で、日本人の生活、殊にこの民族の一団としての過去の経歴であった。という提言そのものである。こうした先学の言わんとされていることを推し量っても、もはや今日においては民具研究も民俗学的視点、歴史学的視点を合わせ持ち、常民の生活の知恵と才覚が、歴史世界を築き上げてきたことを明らかにすることに貢献せねばならないであろう。民具は常民すなわち伝承文化を保持する人々が、生活の必要から考案し、作り上げた物質文化であることはいうまでもない。民具学と極めて近い位置にある民俗学は、民間伝承を素材として常民社会・常民文化の歴史的展開を明らかにする学問である。その常民文化たるものには、当然生活の中からつくり出された道具、すなわち物質文化なるものが大きな位置を占め、その道具の考察・使用が伝承文化を保持・継承させる役割を果たすことが少なくない。歴史学は、端的に言えば文書資料をはじめ文献形態の資料を史料として、人間社会の生成・変遷・興亡の来歴を明らかにする学問である。しかし、歴史的社会における庶民の生活も社会構造とのかかわりの中で明らかにされているし、伝承文化についても取り上げられていることはいうまでもない。こうしたことから考えると、三学の協業さらには統合的な研究の視点と、さらにその実践が必要であろう。なお、付言すると民具学、民俗学においては伝承文化を継承・保持する人々を常民と称しているが、よく考えると公家・武家をはじめ各時代の支配階級でも伝承文化を保持していることが少なくない。したがって、伝承文化を保持するかぎりにおいては、彼らもまた常民である。すなわち、常民は身分・階層・階級によって規定されるものではない。また歴史学の主たる資料とする文書にも、伝承文化の内容をもつ伝承文書とも称すべき資料が多く存在し、民具学・民俗学研究においてもきわめて重要なるものである。かように考えると、民具学・民俗学・歴史学がそれぞれ独自性をもち、個性ある研究を推進しながらも、総合的に広義の歴史学の構築を意図し、個々の問題についても考察せねばならないであろう。

著者プロフィール

1932年奈良に生まれる。立命館大学大学院文学研究科日本史学専攻修士課程修了。民俗学専攻。大阪市立博物館主任学芸員を経て、国立歴史民俗博物館教授。日本民具学会会長、日本民俗学会理事、日本展示学会理事。
著書:『絵馬』『小絵馬』『奈良祭事記』『大和の民俗』『大和の年中行事』(共著)、『神饌』『絵馬秘史』(編著)ほか。

「2014年 『地域社会の民俗学的研究 〈オンデマンド版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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