光の教会安藤忠雄の現場

著者 :
  • 建築資料研究社
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感想 : 52
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  • Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784874606964

感想・レビュー・書評

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  • 安藤忠雄が手掛けた大阪の小さな教会、通称「光の教会」の話。
    発案からお金のやりくり、安藤忠雄のこだわりと現場の折衝など、竣工に至るまでの紆余曲折を淡々と、しかしユーモラスに綴っている。

    安藤忠雄は、溢れ出る熱意と体力と才気で仕事をしている。
    その仕事ぶりがあまりにもワンマン過ぎて、今だったらパワハラとかで告発されて破滅しているだろうな…と思った。
    「教会が風雨に晒されてても良いんじゃないか?厳しい環境の中で信仰を深める、それこそ宗教のあるべき姿だ」というようなくだりがあっていかにも説得力がある風だったが、
    安藤忠雄は普通に住宅とかでも吹き曝しの空間を作るので、宗教とか関係なく自分がそういうの好きなだけだと思います。
    「(賛美歌を歌ったりするが)教会にオルガンはなくてもいい」と言い出すほど内装にこだわっているのに、音響に配慮しなかったせいで結局教会の人間がマイクとスピーカーを置かざるを得なくなったりしていて、でもそのことを『人間、不便を感じると、何かと頭を使うものなのだ。』と表現していて、安藤忠雄を守り過ぎな感が否めなかった。

    そこに住むひとのことを考えて設計するのが建築家の第一信条だと思っていたが、安藤忠雄はそうではなく、どちらかというと芸術家なのだ、と思うと納得する。
    安藤忠雄の才能よりも施主との間に立ち続けた部下の水谷さんに共感する本だった。

  • 光の教会―安藤忠雄の現場
    (和書)2009年12月24日 21:54
    2000 建築資料研究社 平松 剛


    安藤忠雄の伝説的経歴に随分憧れたものです。設計事務所の雰囲気がよく書かれていて、自分にはとても務まらないなって思う。でもこういう本を読むと、なんだか自分が日々過ごしてる中で無感動であったものに何か突然光が当たり、何かやれそうな高揚感みたいなものを感じる。ただ今の自分は、優劣がどうとかではなく自分に向いた何かに向かいたい。それが栄光に包まれたものではなくても。

  • 2016年9月3日読了

  • 著名な建築家・安藤、安藤の設計であれば出血受注する土建会社社長・一柳、その従業員那須、そして茨木教会の軽込牧師、役員(また毎日記者でもある)・宮本など登場人物の熱意が一つの美しい教会誕生へ。特に安藤忠雄が苦労の末、若い日にプロボクシング選手を目指し、大卒でない身ながら、建築の道で成功するまでの、前半も面白く、画期的な教会完工までの物語りも、特にクリスチャンとして教会建築の過程に興味がある私にはこたえられない楽しい内容でした。光の十字架をしかも吹きさらしでというアイディアへの安藤の情熱と教会の人たちの気持ちの変化が手に取るように分かりました。

  • 安藤忠雄は、今や日本を代表する建築家の一人と言っていい。独学、ボクサー経験者という経歴故か、マスコミもよく採り上げるのでその風貌は多くの人の知るところである。京都の三条木屋町にあるビルはかつて見たことがある。高瀬川の水を建築の一部に入り込ませるという発想が新鮮だった。その外部と内部の通底というコンセプトは、大阪府茨木市に建てた通称「光の教会」でも共通している。教会を建てたいが金はないという施主に「それならいい物ができるかもしれない」という建築家の言葉は驚きを通り越して奇怪でさえある。金がないからこそ贅肉を削ぎ落としたシンプルな物が作れるというのが安藤の考えだ。安藤の頭の中にはシトー派教会の質素な佇まいが生きていた。しかし、建築は一人でできる物ではない。設計・施工と一口でいうが、図面で書いた物を具体化するには多くの人間の意志や情熱、それに労苦を必要とする。いいものをつくりたいという建築家の思いに引っ張られるように、赤字覚悟で動く人々がいなければ、この教会はできなかった。当然できあがった建築物は建築家の作品として扱われるのだが、この本を読んだ後では、単にそうは思えなくなる。丁寧な聞き取りを重ねた上で、複数の関係者の視点から書かれているためか、ドキュメンタリーなのだがよくできた小説を読んでいるような気にさせられる。一つの建築が、どのような過程を経て本当の建築物になるのかを教えてくれる。こんな本が今までなかったのが不思議である。

  • ご存知、世界の安藤忠雄が設計した光の教会の
    仕事が決まる前から設計、現場、完成までのノンフィクション
    同じ建築に多少なりとも関わっている身として
    建築に対する真摯な気持ちや行動に身震い
    建築のこと、全然わからない人が読んでも
    分かるだろうなと思う文章で綴られているお勧めの本

  • 安藤忠雄の魅了満載。
    オルガン、教会の椅子、十字架
    竣工後も建築は続く。
    お金は貯めてもやがて目減りする。だからお金は自分の体に貯める。祖母の言葉)
    水木しげる 妖怪天国「トイレ談議」

  • 2009/09/18 購入
    2009/09/20 読了

  • この本を読むと、毎回目頭が熱くなってしまいます。
    建築家・安藤忠雄に惚れ込んだ
    一人の建設会社の社長の思い入れがなければ
    建築史に残る教会は生まれなかったのだと。

  • ずっと読みたいなと思ってそのままにしておいた本です。古本市で格安で出ていたので購入(笑)。安藤忠雄さんの代表作のひとつともいえる、大阪府茨木市の小さな教会、通称「光の教会」の建築過程を追ったノンフィクションです。信徒さんである、ある新聞記者さんが依頼を持ちかけるところから始まります。あまりの予算の少なさに、安藤さんサイドは最初渋る。それは気まぐれではなく、単にその予算では引き受けてくれる施工会社がないから…そこから、押したり引いたり、突然ガーッと進んだり…牧師さんや信徒さんの希望どおり、クリスマスのミサを新しい教会で開けるのか?と悪戦苦闘の日々がつづられます。安藤さん、安藤事務所の若手担当者さん、依頼した教会側の牧師さん、施工会社の社長さんと現場監督さん、構造設計を担当した建築事務所さん、当時の建築事情(幕張メッセの建設時期と重なってしまい、工事の職人さんが集められない、とか)とまんべんなく取材が行われており、非常にきまじめな筆致でまとめられています。テクニカルな解説もそんなに重くない。惜しむらくは、解説図のレイアウトがいまひとつよくないことと、なんだか理系の論文調の表現が多く、読んでいて微妙に退屈…「オシムの言葉」の木村元彦さんのような、クールながらも起伏のある感じが欲しいと思いましたが、理系のライターさんの書く文章で、ここまで売ったらオッケーかとも思います(初版発行後1年で5刷までかかっている!)。参考文献の一覧は、読みたい本をその中からピックアップできましたし、律儀な感じで合格です(笑)。装丁は和田誠さん。安藤さんの製作中のイラストですが、ちょーっと仕掛けがあってラブリーです(笑)。建築に関しては、気がつくと安藤本ばかり読んでいるような気がします(笑)。隈健吾さんに代表される、ポスト安藤の優秀な建築家さんはたくさんいるのに、彼らをうまく紹介した本が少ない(「GA」とか読めばいいんでしょうが、まあそれはそれで:笑)。もったいないことです。建築家さんの活躍する場自体が減っているようにも思いますが、それだけじゃなくて書き手の問題でもあると思います。その道のライターさんのがんばりを期待したいと思います。

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