銀河宇宙観測の最前線: 「ハッブル」と「すばる」の壮大なコラボ

著者 :
  • 海鳴社
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784875253327

作品紹介・あらすじ

日本が技術の総力を挙げて建設した、口径8.2㍍の光学・赤外線望遠鏡「すばる」。その真価が、深宇宙の銀河探査・宇宙地図作成の国際プロジェクト「コスモス」を通じて世界の天文界にとどろいた。「すばる」の技術を引っさげて、同プロジェクトに参加した著者とそのチームが、コスモス・フィールドの天域で、めくるめく画像を取得! 引いては、宇宙の大規模構造探査、暗黒物質の分布の策定などに実を結んで、いまや、「すばる」なくして深宇宙における銀河進化の研究は語れない時代となった。本書は、「すばる」関係者の血の滲むような努力と、それから生まれた成果の一端の紹介だ。

感想・レビュー・書評

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  • ★2017/7/1読了 銀河宇宙観測の最前線「ハッブル」と「すばる」の壮大なコラボ 谷口義明著 海鳴社刊 評価A

    観測機器と宇宙に打ち上げられた望遠鏡により、急速に発展する天文学の今を語った素人向けの最先端天文学者による著作。
    ほとんど小難しい計算式が出てこないままに、最先端の天文学を分かったような気にさせてしまう谷口氏の語りには感動。

    彼が、参加したHST(Hubble Space Telescope)の基幹プログラムである宇宙進化サーベイ(The Cosmic Evolution Survey)すなわち宇宙の大規模構造を調べるプロジェクトの話がその中心である。

    ポイントは、
    ①なぜ暗黒物質があると予測され、何も発しない質量だけの物質をどのようにしてとらえようとしているのか?

    ②そして、なぜこの宇宙の銀河は、粗密があって、フィラメント状の大規模構造となっているのか?

    ③138億年前に誕生したこの宇宙はその後20-30億年までは激しく恒星を生み出していた。ところが、その頃をピークに、まだ星を作り出すガスは沢山あるにもかかわらず、『宇宙史の午後 Cosmic noon』と呼ばれる星の生成が減ってしまう状態となり、特に大質量銀河では穏やかな状態となって進化している。その原因は何か?


    ①の答えは、暗黒物質の莫大な質量による光が屈折させられる重力レンズの観測により、そのCold dark matterと呼ばれる暗黒物質を測定。
    コスモスプロジェクトは、その暗黒物質の分布を描き出すことに成功。

    ②結局、暗黒物質がその重力で宇宙の屋台骨を作り、その重力に引き寄せられてガスが集まり、星が生まれて銀河が育ってきた。(すなわち、我々の創造の神は、暗黒物質ということになるのでしょうか?)

    ③まだ6個しか見つかっていないというマエストロ銀河というライマンα輝線が非常に強いにもかかわらず、その銀河にはその輝線の元になる大質量星が少ない銀河、そのマエストロ銀河は赤色になりつつあって、パッシブ銀河という穏やかな銀河へ進化しつつある過渡期の銀河が解明のカギ。その銀河では多数の大質量星が超新星爆発を起こして死につつあり、スーパーウィンド(銀河風)を生じさせ、その爆発がゆえに、星を生成する物質さえも吹き飛ばしてしまうことから、星の生成が下火になってしまうのではないかという仮説が有力。

    いずれにせよ、宇宙はいつも元気に恒星が生まれ、死んでいくと理解していた私にとっては、驚きの最新研究結果。

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著者プロフィール

1954年北海道旭川市生まれ/東北大学大学院理学研究科博士課程修了・理博(84年 東北大学 天文学)東北大学大学院理学研究科助教授(91年).愛媛大学大学院理工学研究科教授(2006)・同大学宇宙進化研究センター長/専攻・銀河天文学/
主な著書:『現代の天文学 第4巻 銀河』(07年日本評論社;共著),『宇宙進化の謎』 (11年,講談社),『宇宙の始まりの星はどこにあるか』(13年,角川新書)

「2017年 『銀河宇宙観測の最前線』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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