本の顔 本をつくるときに装丁家が考えること

  • 芸術新聞社
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感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784875863786

作品紹介・あらすじ

「人と人とのコミュニケーションが装丁をつくる」それを30年間、第一線で実践してきた坂川栄治と坂川事務所による、装丁の教科書。今までに手掛けた数千冊の中から約180冊を厳選し、1冊の装丁ができるまでを図解した、坂川事務所の集大成ともいえる内容です。

感想・レビュー・書評

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  • 「小さな本の数奇な運命」のブックデザインを手がけたのが坂川栄治さん。
    30年間で数千冊以上もの本の装丁をされたそうで、私たちが知らぬ間に手にしていた作品も相当数あることだろう。
    本書はその中から180冊を選び、1冊の装丁が出来るまでを図解したもの。
    お仕事本としても、デザインの学びの一冊としても楽しめる。
    懇切丁寧なつくりで、画像が多い分大変分かりやすい。

    特色は、採用案と不採用案をそれぞれ掲載して比較解説してくれる点。
    編集者とデザイナーの試行錯誤の過程が手に取るように分かる。
    どのような書体にするのか、サイズは、バランスは。
    カヴァーはイラストか写真か、それとも色で装うか。
    装丁が気に入って読んだ本が載っていると、やはり嬉しい。
    どれも読み手の年齢や性別を想定して変えているなんて知らなかったわ。

    「本をつくる」という本にも載っていたが、一番最初に手掛けるのは本文のレイアウト。
    カヴァーのレイアウトの前に、まずは中の文章の文字組みをする。
    一頁に入れる文字の分量や書体・大きさで、印刷も本の厚さも変わるからだ。
    意外に知られていない部分だがここも腕の見せ所らしい。
    文字が詰め込み過ぎだったり、行間が開けすぎだったりがないように。タテ組みか横組みかも大事なところ。
    書体の見本も登場し、「活字」「書き文字」「作り文字」の3種。
    それぞれ個性もあればうったえるものも違ってくる。
    アルファベットを用いる欧米書体は、意外にも日本での歴史が浅いらしい。
    装丁の世界にも時代の波というのはあるものなのだ。

    本の中身を読まず、編集さんとの会話やタイトルからイメージを固めていくという坂川さん。
    モニターの前で長時間パソコンをいじり続けるスタッフを見ると腹が立つという。
    パソコンがつくってくれるわけではない。
    先ずはどういうデザインにしたいかという明確なイメージがあってのこと。
    ではイメージをどのように育てるか。
    本書に答えはないが、日常で目にする様々なパッケージデザイン、配色パターン、材質等々眼を配っておき利用できるパターンを常に用意しておくこと。
    時間をかけて培ったものの中からイメージというのは立ち上がるものなのだろう。
    デザインって暮らしの中の努力と創意工夫そのものだ。

    終盤に出てくる紙と加工の話。書体と共に好きな箇所で、ワクワクしてくる。
    見ためだけじゃなく、紙の本の持つ質感。
    明るさ、渋さ、厚さ、めくったときの滑らかさ。これは皆さんも同じかと思う。
    単行本から文庫になると変わる部分でもあるが、失いたくない読書の喜びだ。
    薄めの本ながら情報量が大変多い。
    編集さんとの打ち合わせも垣間見れて、そのメモまで公開している。
    読んで楽しいコラムもあり、どなたにもお勧めの一冊。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「限定部数があまりに少ない・・悲しい。」
      確かに、、、

      チョッと珍しい絵本を出されていたのですが、潰れた?出版社があって。
      販売価...
      「限定部数があまりに少ない・・悲しい。」
      確かに、、、

      チョッと珍しい絵本を出されていたのですが、潰れた?出版社があって。
      販売価格や部数の兼ね合いって難しいところですよね。。。
      2020/11/20
    • nejidonさん
      猫丸さん。
      まぁ装丁のことを載せるのに安っぽいものを作るわけには行きませんからね。
      この価格でもぎりぎりに抑えたのかもしれませんし。
      ...
      猫丸さん。
      まぁ装丁のことを載せるのに安っぽいものを作るわけには行きませんからね。
      この価格でもぎりぎりに抑えたのかもしれませんし。
      必ず売れるって保証もないしね。辛いところだと思います。
      ところでスズメ歳時記、ワタクシ持っておりますよ!あれは良い本です!
      2020/11/20
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      nejidonさん
      そうですよね、それなりに凝った本はねぇ、、、綺麗な写真で見たいと思うと、紙質もサイズも気を配って貰いたいですから。
      スズ...
      nejidonさん
      そうですよね、それなりに凝った本はねぇ、、、綺麗な写真で見たいと思うと、紙質もサイズも気を配って貰いたいですから。
      スズメは大好き!猫ですから、、、
      2020/11/20
  • 本の装丁について、タイトル文字のロゴからイラスト・写真の配置、活字まで、試行錯誤の過程が見えて、デザインの本としてもエッセイとしてもお仕事本としても、何重にも楽しめた。

    取り上げられている本の中には、読んだことのある本・持っている本もたくさんあって、決定稿がなるほど一番イイなと思ったり、この方向で行ったら全然違う印象だけどカッコいいなと思ったり、とても面白い。
    装丁家の仕事が、本文の文字の書体や配置まで含まれるとは知らなかった。
    何となく、装丁の仕事は表紙や見返しの紙まで…本の洋服部分だけに関わるのだと思っていたので。

    電子書籍を否定はしないけれど、断然紙の本が好きなのはこれこれ!
    ジャケ買いならぬ装丁買い?で初めて読む作家さんと出会ったりするのも、紙の本の楽しみ。
    予算の都合で文庫になってから買おう…といじましく待っていたくせに、文庫版の表紙が我慢できず改めて単行本を買ったり、シリーズで楽しみに読んでいた本の装丁が途中で変わってキーッとなったりするのは私だけではないよね?

    魅力的な装丁の本を手にして、指の先からもたっぷり味わって読もう!

  • 本の装丁に興味のある方は必見。
    装丁の写真が並んでいるだけではなく、ポイントの解説や、採用案と不採用案の比較までしてくれている素晴らしい本。
    例として紹介されている本は、私自身書店で目を留めたことがあるものばかり。
    坂川さん、すごいです。

    対談に登場した秘密のノートのことをもう少し知りたかったな…とも思うけれど、装丁についての本としては今まで読んだどの本より面白かった。
    大満足です。

  • 無知だった。装丁ってカバーだけじゃないのねぇ!本文レイアウトまで関わってると知りませんでした、反省。特に絵本カバーは作家が考えてると思い込んでたから余計びっくり。装丁の基本のキがわかる。その奥深さも

  • 本との最初の出会いとなる装丁を専門として、数千冊以上を担当してきた著者と事務所による本の装丁についてその仕事を詳細に解説する1冊。装丁の基礎からベストセラーの装丁ボツ案までフルカラーで紹介されているこの本は、「装丁」ってなんじゃらほいという向きから、本屋に行くと絶対ジャケ買いしてしまうという本好きまで楽しめること間違いなし。
    (生命理工学コース  D2)

  • 2022/09/01 読了。

    図書館から。
    こう色んな人の思いや試行錯誤の上に一冊の本が、
    できてるんだと思うと感慨深い…。

    実際のOK本と、
    没になった案と並べて見れるのものあるのですが、
    それしかないっていう収まり具合なのがすごいよなーと。

  • 本の装丁に関するお話。
    作業行程の説明に加え、どういった観点から想定を作り上げていくか、実際に作られた本とともに紹介されている。
    文字、イラスト、色、写真など、また紙の種類や加工方法、文字の印刷の仕方など、いろいろな要素を組み合わせて一冊の本を作る。
    装丁は大変だけどすごく楽しそうだな、と思うお仕事の一つ。

  • 装丁の実践ノウハウ。
    古い考え方の視点が新鮮。
    本づくりはコミュニケーションのすえだ。
    絵本のお話しがいい。たしかにデジタルからもっとも遠い位置にありそう。
    絵本コーナーに立ち寄りたくなった。

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