丹生都比売

著者 :
  • 河出興産
3.75
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感想 : 131
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  • Amazon.co.jp ・本 (197ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784875990734

感想・レビュー・書評

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  • 大海人皇子と鸕野讚良皇女の息子、草壁皇子を主人公に大海人皇子が壬申の乱を起こす辺りを描く。
    私は中学生の頃から、この飛鳥時代の時代背景にとても魅かれていて、この本も今まで知らなかったのを悔いたくらい素敵な作品だった。梨木さんらしい美しい文章で紡がれる草壁皇子の優しさと苦悩。私の中では埋もれがちだった(周りが派手すぎて(笑))草壁皇子が静かながらも印象的で魅力的に思えた。この装丁がまた良いですね。

  • 梨木香歩さん、初めましてです。
    自分で詠めるかどうかはさておき、和歌が好きです。
    なので、この時代の本にはとても興味があるのですが、全く知らなくて。
    教えてくれたお友達に感謝です♪

    まず、この装丁の美しさです。
    なんと表現したらいいのか、深い趣のある色あいが素敵。

    後にそう称される天武、持統天皇の間に生まれた草壁皇子。
    異母兄弟である大津の皇子の、ある意味短くも華やかな生涯とは異なり、
    母・鸕野讚良皇女の陰で、いまひとつ印象の薄い存在でした。

    純粋で、心優しいご気性。
    そして、病弱であるがゆえの諦観や苦悩。
    そんな儚げな皇子さまの哀愁が描かれています。


    丹生都比売さま・・・
    銀の神御衣を身にまとい、愛くるしいモマを肩に乗せたキサに導かれ、
    あの懐かしい少年の日々に帰る草壁の皇子。

    しめやかで、もの悲しい美しさの残る物語でした。

    • けいたんさん
      こんにちは(^-^)/

      凄いわ(⁎˃ᴗ˂⁎)
      私より丹生都比売の世界に溶け込めてるよ〜♪
      羨ましいなぁ。
      私ももっと勉強しなく...
      こんにちは(^-^)/

      凄いわ(⁎˃ᴗ˂⁎)
      私より丹生都比売の世界に溶け込めてるよ〜♪
      羨ましいなぁ。
      私ももっと勉強しなくちゃ。

      この本はもう売ってないんだよね。
      たくさんの人に読んでもらえなくて残念と思っていたよ。
      でも、数年前に復刻されてね、丹生都比売と他何編か入った本になったよ。
      だけど、丹生都比売のある部分がごっそり削除されていてね。
      どうしてだろうって悩んだんだ。
      いつか、読む機会があったらそちらも読んでみてうさちゃんはどう思ったか教えてね。
      2016/04/17
  • 壬申の乱の前後を、後の天武天皇である大海人皇子と後の持統天皇である鸕野讚良皇女の間に生まれた草壁皇子の視点を中心に描いた、儚い童話のような物語。

    両親に似ず病弱で繊細な幼い草壁皇子の抱える悲しみや諦め、常に堂々としているようで実は恐怖にも近い不安を抱えて運命の時を待つしかない大海人皇子、苛烈で欲しい物の為なら身内すら殺していくのに深い孤独を背負う鸕野讚良皇女など、それぞれの陰ある姿が淡々とした優しい言葉で紡がれていき、読んでいると胸が静かな哀しみでいっぱいになります。

  • 草壁皇子(くさかべのおうじ)が主人公の和風ファンタジー。
    淡々と夢見るように語られていきます。

    父の大海人皇子(おおあまのおうじ)が、一家で吉野に逃れていた時期。
    丹生都比売(におつひめ)の加護があると皆は信じて、安心していたのだが、実は顕現がないために大海人皇子は悩んでいた。
    草壁は、大海人皇子と鵜野讃良皇女(うののさららのひめみこ)一人息子だが、身体が弱い。
    吉野には来ていない異母弟の大津皇子には、何かと負けていて、引け目を感じていた。

    野心などない、吉野で僧になると、人が来ても言う大海人皇子。
    だが、それで済むだろうか?
    古人大兄王(ふるひとのおおえのおう)がやはり跡継ぎ争いの緊張が高まったときに吉野に逃れた後で、中大兄皇子(今の天智天皇)に3ヶ月後には結局殺された例もある。
    弟の大海人皇子はいぜんは天皇の跡継ぎと目されていたが、天智天皇は実子の大友皇子に継がせたくなったのだ。
    卑母の出の大友皇子の即位には反対する勢力もある。
    時期を待っているということは、誰もが察していた。

    草壁は地元に住む少女に出会い、口がきけない不思議なその子にキサと名付ける。
    キサは、青い勾玉をくれた。
    キサのことは、草壁と弟の忍壁皇子にしか見えない事に気づいていく。

    鵜野讃良皇女(のちの持統天皇)の野心。
    正当な血を誇る実母に圧倒され、畏れる草壁。
    鵜野の姉・大伯(おおく)皇女がかって、草壁に語ったこと…
    幻視なのか?草壁が見た女性の、したことは…

    草壁の見るふしぎな光景の中に、ゆったり引き込まれてしまいそうです。
    激動の時代、強く生きた人々の陰に埋もれたような、ひそやかな人の存在感。
    渋い作品ですが、キラキラと輝くようなイメージも込められています。
    このあたりの日本古代史に興味があれば、なお面白いのは間違いなし。
    そうでなくとも、独特な文体やイメージの美しさは味わえるでしょう。

  • 梨木香歩さんインタビュー | BOOK SHORTS
    https://bookshorts.jp/nashikikaho/

    丹生都比売-梨木香歩図書館
    https://nashikikaho.blogspot.com/2014/09/blog-post_27.html

    出版工房原生林の代わりに新潮社のサイトから
    梨木香歩 『丹生都比売 梨木香歩作品集』 | 新潮社
    https://www.shinchosha.co.jp/book/429910/

  • 図書館で借りて読了。
    さらさらと、静かでどこか植物の匂いがするような文章。
    ああ、こういう言い回し、好きだなぁ…と頭の中でゆるやかに想起される。
    確かとは語られていないけど、非業のさだめを選ぶ者と選ばれた者の物語。
    ただ割り切れない情があまりにやさしくて切実で、だからかなしい。

  • 時は壬申の乱の頃。草壁皇子が主人公です。
    心優しく争いを好まない皇子の優しさが愛しいです。
    水銀の姫神の不思議な雰囲気の物語です。

  • 小説というよりは長い詩を読んだような気分。
    天武天皇と持統天皇を両親に持つ、ちょっとひ弱な草壁皇子の生活が、なんともはかなげで心細げで切ない。その切なさが吉野の自然、水銀の鈍色、キサの素直さ、周りの大人たちの事情と相まってなんとも切ないバラードと化す。

    がっつり読みたいという時に向いている本ではないが(そうだとしたらこの本を開けた途端に違和感感じると思う)、優しい自然の空気なんかを感じながらほっと一息気分をストレッチしたい時なんかに読むのにお勧め。

    歴史上の超巨峰に囲まれてそっとたたずむ2000M級日本の山的良さが堪能できるはず

  • 「西の魔女は死んだ」の翌年
    でも知らなかったな、この本
    美しい静かな文
    大胆な余白
    小さな出版社がすごいがんばったと思う
    草壁皇子、魅力的だなあ
    いい本に出会いました
    《 水と銀 毒と宝と 砕け飛ぶ 》

  • 壬申の乱前夜、天武天皇と持統天皇の子である幼い草壁皇子が、複雑な親子関係と政治に翻弄されながら過ごす吉野での日々の出来事。「丹生都比売(におつひめ)」とは水銀を司る女神。キサという少女と銀光の勾玉の正体、丹生都比売のこの物語での役割が私の読みが浅い為か今ひとつ明確に解りませんでしたが、全体を通して草壁の哀しみが伝わって来るようでした。作者にインスピレーションを与えた「持統天皇」(吉野祐子)という本も読んでみたいです。求む、両作品の復刊。

    • はこちゃんさん
      これ、絶版なんですよね。欲しいのに~(>_<)
      これ、絶版なんですよね。欲しいのに~(>_<)
      2013/09/04
    • 【静】さん
      絶版、そうなんですよねー。復刊して欲しいですね。オフ会で、この本を貰った方がいらっしゃいました^^美品だったなぁ。ウラヤマシイ。
      絶版、そうなんですよねー。復刊して欲しいですね。オフ会で、この本を貰った方がいらっしゃいました^^美品だったなぁ。ウラヤマシイ。
      2013/09/05
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著者プロフィール

1959年生まれ。小説作品に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』『裏庭』『沼地のある森を抜けて』『家守綺譚』『冬虫夏草』『ピスタチオ』『海うそ』『f植物園の巣穴』『椿宿の辺りに』など。エッセイに『春になったら莓を摘みに』『水辺にて』『エストニア紀行』『鳥と雲と薬草袋』『やがて満ちてくる光の』など。他に『岸辺のヤービ』『ヤービの深い秋』がある。

「2020年 『風と双眼鏡、膝掛け毛布』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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