土とは何だろうか? (学術選書)

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著者 : 久馬一剛
  • 京都大学学術出版会 (2005年12月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784876988013

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土とは何だろうか? (学術選書)の感想・レビュー・書評

  • <第1章 はじめに>

    p.5 明治から大正にかけて自然主義文学者として知られた徳冨健次郎(蘆花)による『みみずのたはこと』。その中の「ひとりごと」8篇は著者の田園生活の中でのスケッチ、偶感などをおさめたもので、「農」と題された九つの短文の一、四、八にそれぞれ次の文がある。
    「土の上に生まれ、土の生むものを食うて生き、而して死んで土になる。われらは畢竟土の化物である」
    「大なる哉土の徳や、如何なる不浄も容れざるなく、如何なる罪人も養わざるはない」
    「土の土たるは、不潔を排斥して自己の潔を保つでなく、不浄を包容そ浄化して生命の温床たるにある」

    <第2章 土壌はどのようにしてできるか>

    p.14
    微生物の働きで土をくっつける有機物が発生し、適度な隙間のある「団粒構造」を持つ土壌になる。隙間があることで、土中に植物が必要とする空気(酸素)と水が入り込むことができる。また、透水性(水はけ)、通気と保水の両立にも役立つ。
    土壌に生物がいない土は、すぐバラバラになってしまい、隙間ができないので、植物の成長に適さない。
    また、土内に隙間がなく水はけが悪いと、雨水が表面を流れて表土を流し、土壌侵食の危険が大きくなる。

    p.16
    土壌は、固相・液相・気相からなる三相組成。固相は、無機物と有機物より成る固体の部分。固体の隙間空間(孔隙)を、水(液相)と空気(気相)が分け合っている。土によってこれらの比率が異なってくる。

    <第3章 植物の栄養と土壌の働き>

    p.49
    植物栄養学の進歩により、植物の生育には以下の無機養分が必要なことがわかってきた。
    三主要元素:窒素(N)、リン(P)、カリ(K)
    中量元素:カルシウム、マグネシウム、硫黄
    微量元素:鉄、マンガン、銅、亜鉛、ニッケル、モリブデン、ホウ素、塩素
    有機物を構成するもの:炭素、酸素、水素
    これらは欠乏しても過剰にあってもいけない。だが、実際は難しい必須元素を知らなくても、土壌に種子を蒔いておけば植物はだいたい生育する。これは植物が進化の過程で土壌条件に適応してきたために、土壌中での平均的な養分量やバランスに自らの要求を合わせることができるようになっているためではないかと、筆者は推測する。

    <第4章 日本の畑の土>
    p.86-
    日本の土壌は、山も畑も水田も、程度の差はあれみな酸性。水素イオン濃度が高い。植物の養分である塩基性陽イオンの土壌溶液中の濃度が低下することになるから、それが植物に不利に働く場合がある。
    ホウレンソウ、クローバーの仲間は最も酸性に弱い作物。稲や燕麦は強い。お茶の木(チャ)は極めて酸性に強い。
    土壌生物の多くは酸性に弱い。動物の中ではミミズが、微生物では細菌(窒素固定をする菌や、アンモニアから硝酸を作る硝化菌)が特に敏感。だから土壌の酸性化は植物の窒素栄養に悪影響を与えることが多い。

    p.110-
    明治時代直前の日本の農業は、作物の残渣や家畜・人間の排泄物などを用いて徹底して養分のリサイクルを行う有機農業だったという記録がある。多量の有機物が土壌に入ってさえいれば、自然に土壌生物が働いて団粒構造を作り、水もちと水はけの良いバランスを保証してくれる。しかし、養分を化学肥料に頼り、農業機械を多用して、有利や商品作物だけを連作することの多い今日の農業では有機物の供給が少なく、土壌の団粒構造は壊れ、良好な物理性を維持することができない。

    p.116-
    特殊な条件下では日本でも土壌の塩類過剰(アルカリ化)が問題になる。たとえば温室のように雨による土壌洗浄が行われないところで、園芸作物の栽培に多量の化学肥料を施要したときとか。雨よけを外して雨で洗えば過剰な塩類は取り除けるが、水中の肥料成分が地下水やため池の富栄養化... 続きを読む

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