ビザンツ文明の継承と変容 (学術選書 43 シリーズ:諸文明の起源 8)
- 京都大学学術出版会 (2009年6月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
- / ISBN・EAN: 9784876988433
作品紹介・あらすじ
ビザンツ帝国は、「文明の十字路」コンスタンティノープルを帝都に、約千年にわたる長いあいだに徐々に独自の文明を形成してきた。専制皇帝の絶大な権力、宦官の活躍で整備された官僚制、戦いに明け暮れながらも必要悪としか考えない戦争観-ここには、古代ギリシア・ローマの都市文明を継承しつつも、明らかに異なった文明への変容がみられる。この過程を、社会構造と人間類型の転換として描く。
感想・レビュー・書評
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ギリシア・ローマ文明を「継承」し、それを状況に応じて「変容」させていったビザンツ文明。 都市、「パンとサーカス」、皇帝、宦官、戦争――ビザンツの特徴的な要素を取り上げ、それらがギリシア・ローマからどのように「継承」され「変容」したのか、また、同じギリシア・ローマの子文明である西欧とはどのように違うのかを描いていく。一通り、ビザンツに関する入門書を読んだ後で、さらにビザンツについて知識を深めようするときにちょうど良い一冊だと思う。
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トルコ旅行を控えて、ビザンツ史を知りたくなり読んだ。高校世界史程度の知識しか持っていなかったので、情報の濃度にまず満足。
特に戦争と内乱続きの国というイメージがあったビザンツが、(消極的)平和主義思想だったというのが、思いもよらぬことで面白かった。少し飛躍したまとめとなった終章も、情熱を感じてよかった。 -
穏やかな語り口の手堅い中世史叙述を読みながら、念頭にはE・フロムと平和憲法論が浮かぶ。
キャリアの集大成というべきビザンツ文明論は、とくに「思いの丈を一筆書のように書いた」(あとがき)終章において、熱を帯びた迫力あるものとなる。
著者にはめずらしいが、久しぶりに「歴史書」「歴史家」をみた思いがした。