平和通りと名付けられた街を歩いて―目取真俊初期短編集

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著者 : 目取真俊
  • 影書房 (2003年10月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784877143053

平和通りと名付けられた街を歩いて―目取真俊初期短編集の感想・レビュー・書評

  • 表題作、作中の沖縄弁がきつすぎて無理! 雰囲気出すどころか解読に時間がかかるわ。
    あと、本土に対する微妙な感情出すぎ。皇太子夫婦についての記述なんて左翼化と思ったぞ。全部が全部そういう話だったわけではないので、表題作だけが私の肌には合わなかったらしい。
    収録作で一番印象に残ったのは「雛」。想像妊娠でお花畑に飛んでってる妻と、世間体も含めてそんな現実を受け入れられない夫。これは普通に好きなテーマでもあったし、話も読みやすかった。
    あとは「蜘蛛」がなー、描写が緻密なだけにうげええええってなりつつ(虫が嫌いなため)「ああ…なんか純文学って感じ…」という感想。しかし視点がコロコロ変わりすぎて何がなんだかわからんかった。

  • 『魚群記』についてのコメントです。

    舞台は1960年代後半の名護のパイン工場地帯。主人公の少年「僕」は季節労働者の台湾人女工に思いを寄せるも、収まらない欲望をテラピアの眼球をえぐる行為で解消する。ある晩、女工達の宿舎に忍び込んだ「僕」が見たものとは――? ちょっとブキミな青春ラブストーリー!

    【琉球大学】ペンネーム:おさかな だいすき

  • 『平和通りと名付けられた街を歩いて』
     汚物、むき出しの老女の性器、その向こうにいる天皇(皇太子)・・・・・・。
     1983年、皇太子(現平成天皇)の二度目の来沖のため、那覇には厳重警備が敷かれ、少年カジュの祖母で「痴呆」のため街を徘徊する老女のウタは自宅に軟禁されてしまう。しかしかつて沖縄戦で長男を失い、戦後派女手一つで生き残った子どもたちを育ててきたウタは自分を押さえつけようとする力を跳ね返し、誰もが状況に抵抗できない中で一人皇太子に立ち向かっていく。
     最後、一人ウタを連れてヤンバルに向かうカジュが窓越しに見たのは、広々と広がる米軍基地のフェンスとその中で笑う米兵であった。戦争は終わっていない。正気を失ったウタのたった一人の闘いを目撃したカジュにその闘いは未来の沖縄で継承されただろうか?

    『魚群記』
     かつて復帰前、沖縄には多くの台湾女(イナグー)という台湾からの出稼ぎ女性労働者たちがいた。沖縄の復帰、そして日中国交正常化の時代の中で、彼女らは台湾に帰り、沖縄の公の記憶の中でその存在を思い出されることもなかった。
     目取真俊はそんな記憶のポリティクスに抗うように、少年主人公の目を通して、忘れられた彼女らの姿を活写する。ここで目取真俊が本土の沖縄観だけでなく、沖縄内部にある記憶の欺瞞も暴いていることがわかる。
     注目すべきは、主人公の兄が(父も)、復帰運動に積極的に関わり労働運動も熱心に行う理想に燃える青年であるのと同時に、同じ工場で働く台湾女たちの運命には無関心で彼女らを性的な視線の中に囲い込んでいる点だ。これは何を暗示しているのか? 復帰運動の問題点は今日では多く論じられているが、ここでは復帰運動が何を切り捨ててきたかを問うている。そして沖縄の男たちと台湾女たちの間にどんな関係があったのか、という点も。

     目取真俊は何に抗おうとしているのか。それは沖縄を「癒しの島」などといって米軍基地を押し付けたまま自己に都合いいように囲い込もうとする日本の視線と沖縄内部にある都合の悪い記憶の忘却であるように思えてならない。




     

  • ノスタルジイと儚い喪失感。ソリッドな文体。
    テーマはまったく異なるもののなぜか安岡章太郎「ガラスの靴」を思い出した。かっこええわー。

    社会的弱者ゆえ忘れられゆくものへのあたたかな眼差し。主人公たちにより正義は振りかざされることなく行使されるが、報われることはない。
    弱い者がさらに弱い者をいじめているだけなのだと大人達に示している。その哀しい図式はそのまま琉球・沖縄の姿に似ている。
    台湾から来た女工たち、ウタ姉さん、林の奥に住む少女。そしてマー。
    たとえ自分ひとりになっても彼らを想い、決して忘れない主人公。カッコエエやん!

    ウチナー言葉、ええなあ。耳で聞いても話されたらわからへんねやろなあ。くやしいけど。


    読みたくなるのはこんな本:
    駒沢敏器 - アメリカのパイを買って帰ろう
    奥野修司 - 沖縄幻想
    安岡章太郎 - ガラスの靴

    聞きたくなるのはこんな曲:
    かりゆし58 - ウージの唄、アンマー

  • うーん、何とも言えない重い読後感……。『魂込め』の感想で、「本土/沖縄、この世/あの世、大人(の男)/老人・子ども、男性/女性、などなど、さまざまな対立軸が示しつつ、前者と後者のあわいに生きる人たちの姿を描きながら、前者の人々の『まなざし』(の権力性)を撃つ作品」と書きましたが、それはこの作品集にも言えることだな、と思いました。この人の作品の通奏低音、というところでしょうか。収録された5篇の中では、最初の「魚群記」がよかったですね。(20071122)

  • 2006.10.15

    汚物越しに見る、かつての「神」

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平和通りと名付けられた街を歩いて―目取真俊初期短編集はこんな本です

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