隠して核武装する日本

  • 影書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784877143763

作品紹介・あらすじ

「原子力の平和利用」を隠れ蓑に、日本は核開発を進めていた?!「日本核武装論」に正面から反論を挑む初の本格的論集。核武装推進・容認国会議員リスト収録。

感想・レビュー・書評

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  • 表題、編者からも分るとおり、核武装、原発に反対する立場から書かれている。帯には「日本核武装論に正面から反論を挑む本格的論集」とある。

    日本で核武装論が持ち上がったのは2006年、北朝鮮の核実験が開始されたのを受けて、故中川昭一政調会長(当時)が「日本も核武装論議をするべきだ」と発言したことがきっかけだ。

    核兵器には、抑止力としての核兵器が必要なのか。これは中川昭一氏自身の講演でもあったようだが、北朝鮮が日本を攻撃するのであれば、核爆弾を持つ必要はない。日本にある54基の原発をミサイル攻撃すれば、済む話だ。

    それは福島第一原発の事故で、はからずも証明されてしまった。エネルギーだけの問題ではない。原発を持つという話は軍事上でも、非常に危うさを持っている。

    同書では、核武装論の問題点を指摘し、原発と核兵器との関係、原爆がどのように広島、長崎に投下されたのか、日本の原発がどのように誕生したのかなど数人の評論が掲載されている。

    日本初の東海村原発の原子炉はイギリスが開発した黒鉛炉というものだ。黒鉛で減速した中性子によっ天然ウランから軍事用の濃縮プルトニウムを生産。世界の原爆のほとんどは、この黒鉛炉で作った軍用プルトニウムで用いている、という。

    イギリスはこの原子炉を発電しながら、軍用プルトニウムを生産できる原子炉と評価したが、米国がそれを許さなかった。その結果、再処理はイギリスが行い、得られる軍用プルトニウムはイギリスが購入し、これらがイギリス製原爆になっている。

    さらに、この軍用プルトニウムは米英間の核物質交換協定によって、米国にも入り、原爆化されているという。原発は平和利用を言いながら、しっかり軍事用に使われていたというわけだ。

    ただ、原発からプルトニウムを盗んで、核爆弾を作るというのは映画の中だけの話のようだ。

    現状では、原発から軍事用プルトニウムを取り出すことはできない。しかし、高速増殖炉「もんじゅ」なら、それは可能であり、真の目的は超軍事用プルトニウムを取り出すことだ、という。

    原爆をめぐる話は、日本人なら怒りを抑えられないだろう。

    ドイツが先行して開発しているとの話が前段にあり、米国が完成を急いだとされているが、ターゲットはドイツではなく、最初から日本と決まっていたようだ。

    その理由は、日本はドイツに比べ、この爆弾から得る知識が少ないだろうというものだった。日本の科学者は低くみられていた。

    投下時期についても、早期戦争終結のためではなく、ソ連参戦の前にどうしても投下しなければいけなかった、という事情があったという(これらはいくつかの本でも指摘されていることであるが)。

    思わず、松下幸之助の言葉が思い出された。

    「科学の力は原子力をつくり出すまでに進んだのでありますが、それがまず戦争に使われ、人類殺戮の手段に用いられたのであります。 ... 今後も戦争が起こるかぎり、原子力は人類殺戮の手段として使われるでしよう」(「松下幸之助の哲学」P292)

    松下の予言は的中した。原子力は劣化ウラン弾として、今も実戦で使われている。

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著者プロフィール

1933年東京生まれ。東京都立大学理学部化学科卒業。東京大学大学院物理課程D2修了後、同大助手を経て理化学研究所研究員。定年退職後、94年から名城大学経済学部教授。06年定年退職。05年4月から09年3月まで高千穂大学非常勤講師。
著書に『資源物理学入門』(NHKブックス)、『環境保護運動はどこが間違っているのか?』
(宝島社)、『Co2温暖化説は間違っている』『弱者のための「エントロピー経済学」入門』『「地球生態学」で暮らそう』(ほたる出版)など

「2011年 『原子力に未来はなかった』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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