SLY

著者 :
  • 幻冬舎
3.13
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本棚登録 : 429
感想 : 44
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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784877281038

作品紹介・あらすじ

死の輝きが、生命の影を映すとき。太陽の国、エジプト。何千年も前から、いま届いた永遠の物語。最新書き下ろし長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 先にエジプト旅行が在って、行ってみたらそのエネルギーに圧倒されて小説にせざるを得なくなった。
    あとがきにあるこのような内容の文を見て、物書きとは因果な職業なのだな、とつくづく思った。
    最初から書くつもりでその下見で向かったわけではなくても、見てしまったものを物語にするわけにはいかなくなる。見たもののエネルギーと、見た人の内側で渦巻くエネルギーと。

    エジプト旅行の描写が大半を占める小説で、最後には旅行記的な写真なども載っている。
    物語中に書かれている建物や施設はすべて実在するもので、(20年以上前の小説だから変化したものもあるとは思うけれど)旅のちょっとしたガイドとしても読めるかもしれない。エジプトに行ったことがある人や、興味のある人なら尚更楽しく読めると思う。

    主人公は清瀬という女性で、元彼の喬が登場人物たちの中心にいる。
    清瀬と付き合っていた当時に喬がバイセクシャルであることが分かって別れ、喬はその後日出雄と付き合い、そして別れ、今はミミという女性と交際している。
    清瀬、日出雄、ミミは喬と付き合ったことがある、という共通点でつながっていて、4人は実際関わりがある(むしろ仲が良いと言える)。
    そんなある日、喬がHIVに感染していることが分かり、ひょんなことから清瀬、喬、日出雄の3人でエジプトに旅行することになる。

    今すぐ死ぬわけではないけれどいつか絶対に死ぬ、というのは生きているもの全ての共通点。明日、もっと言うと1分後の命があるか分からない。でも大抵の人は、明日も明後日も1ヶ月後も1年後も生きている気でいる。
    だけど病気というものが身近にくると、やはり意識はがらりと変わる。限られたものなのだということが、リアルに迫ってくる。
    そのことに気づいてしまった喬と、喬と付き合った(付き合っている)3人。
    旅に出て、壮大なものたちに触れることで、自分というものの小ささを知る。だけど、小さな命が自分にとってかけがえのないものだ、という事実は変わらない。
    楽しく過ごしていても、不意に忍び寄る“死”という影。それから逃れることはきっと出来ないまま、それでも毎日を過ごしていかなければならない。

    色んな結果が出ないまま終わる物語なのが良かった。
    エジプトとかインドとかって行くと人生観が変わるとか言うけど、あながち嘘じゃないのかも、と思った。
    日本にいて自分の小ささに触れる機会はあまりない気がする。

    エキゾチックな挿し絵も素晴らしい。

  • 恋焦がれて、全身火傷しそうな位、大好きなエジプトの話。
    凄く綺麗な情景を文章だけでも浮かんでくるから、読んでて凄い幸せだった~!! いつか絶対に行きたい場所。

    それまでは、この本を何度も読もう

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「凄く綺麗な情景を」
      そうなんだ、、、エジプトって何か惹かれるところがあります(この表紙のイラストも雰囲気出てますね)。
      しかし、エジプトの...
      「凄く綺麗な情景を」
      そうなんだ、、、エジプトって何か惹かれるところがあります(この表紙のイラストも雰囲気出てますね)。
      しかし、エジプトの政情不安早く治まらないかなぁ、、、
      2013/07/26
  • エジプト旅行記兼小説。私が生まれた頃の作品。写真の古めかしさがぐっと来た。

  • エイズかもしれないそのことが自分を死に近くした。
    身近な人がエイズであるとわかり私もその検査をすることになった。
    そしてその検査結果を聞く前にエジプトに旅行することになる。


    どこにいてもその人が目立って見えたからかな。他の人よりもはっきり見えるような感じがするんだ。
    私には大事なことだった。だって、それまで他人がいることなんか忘れてたもの。自分のことで精一杯で。

  • 死ぬことが身近になるほど、生きることが見えてくる。ずーっとずーっと昔から受け継がれてきたであろう、生命の営みを感じる話でした。目に見えない大きな力と、それに触れる瞬間。

  • 男か女かも、友達とか恋人、っていうのも超越してしまってて、魂で繋がりあってるようなこういう関係に憧れる。
    エジプトが行ってみたい国リストに追加されました。
    吉本ばななさんの文章を読むと心が洗われるー。

  • 旅に出て、そこで感じたものを小説に書き下ろすシリーズのエジプト編。
    HIVに陽性反応が出たお兄ちゃんとかつて付き合っていたジュエリーデザイナー(女性)さんとお店経営者のお兄さんが3人でエジプト旅行をして、ピラミッドとかミイラなんかを見て、死生観やら何やらをいろいろ考えるってお話。

    男性も女性もOKのHIVお兄さんのいわゆる元カノと元カレ(って言うのかな?)が仲良く旅行して、みんな大好き♪って感じは、とてもよしもとさんらしい。
    日常的な行動に大げさな意味をつけて、過剰とも言える心理的な説明を加えるよしもとさんの本は、飛ばして読むと意味がないので、案外じっくりと読まなければなりません。
    で、読み終わったあと、その過剰な心理描写に妙なデトックス感を味わえるのが醍醐味なんだよね(笑)

    エジプトには、いつか行ってみたいなぁ…。

  • HIVに感染した人物と、友人と。
    エジプトを旅するお話。
    何も解決していないなー、とおもうのにどこか情緒的。
    エジプトに行きたくなりました。

  • だいすきな人たちと一緒にいると生まれるあのきらきらとした一瞬…

  • エジプトって、こんなに生命力に溢れている場所なのかと驚いた。
    客観的に誰がどうした、ってことが描かれているというよりは、主観的に心の中の動きをひたすら描いている感じ。エジプトで見たものをどのように感じたか、感じたことに関連して過去のことや未来のことに思いを馳せる、といった心の中の変化が描かれていた。
    ラストの取材記や写真を見て、物語の世界がより深く、自分の中に印象付いた。

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著者プロフィール

1964年、東京生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年『キッチン』で第6回海燕新人文学賞を受賞しデビュー。88年『ムーンライト・シャドウ』で第16回泉鏡花文学賞、89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞、95年『アムリタ』で第5回紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞(安野光雅・選)、2022年『ミトンとふびん』で第58回谷崎潤一郎賞を受賞。著作は30か国以上で翻訳出版されており、イタリアで93年スカンノ賞、96年フェンディッシメ文学賞<Under35>、99年マスケラダルジェント賞、2011年カプリ賞を受賞している。近著に『吹上奇譚 第四話 ミモザ』がある。noteにて配信中のメルマガ「どくだみちゃんとふしばな」をまとめた文庫本も発売中。

「2023年 『はーばーらいと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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