尾張春風伝〈上〉

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著者 : 清水義範
  • 幻冬舎 (1997年11月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784877281908

尾張春風伝〈上〉の感想・レビュー・書評

  •  主人公通春(みちはる)は、尾張徳川家三代藩主綱誠(つなのぶ)の第二十男。下の方のみそっかすの子だ。
     その通春の人生を描いた小説。上巻では青年時代のことが書かれています。

     藩主の息子とはいえ、兄たちがたくさんいる中で自分にその跡継ぎが回ってくるはずもなく、自由闊達に過ごす。遊びか過ぎるが、人柄の心地よさ、明るく派手好き、人を身分や格ではなく、その能力や人格で判断できる江戸中期では珍しい人間であった。

     その部屋住みの若様であった通春。
     尾張藩主であった吉通が亡くなり後を継いだ嗣子の五郎太もその3か月後に急死してしまう。
     そして、徳川の御三家では、筆頭と言われていた尾張藩が将軍の跡目争いで、その座を紀州藩の吉宗に持っていかれたのである。
     様々な出来事を、末子の気楽さゆえ、無責任、客観的に見ているのである。

     歴史小説ながら、主人公通春の明るさや軽快な文章でぐいぐい読み進められます。

  • 徳川御三家筆頭、知行六十二万石尾張徳川家第三代藩主綱誠(つなのぶ)の第二十男、江戸中期生まれの松平通春、後に徳川宗春の物語。二十男とは言うものの、当時は乳幼児の死亡率が非常に高かったので、幕府の正史では第七子とされている。通春は尾張の殿様の子ではあるが、一番下のほうのみそっかすの子であり、いずれは藩主の可能性というようなことはほとんど有り得なかった。いわゆる一生部屋住みの身である。もし運がよければ、どこかの小藩の養子にもらわれて、小大名になることがあるかもしれない、というぐらいが関の山のようなものであった。

    しかし、通春が巻き起こした風が、江戸時代の尾張藩の性格を決め、尾張人の性格を決定したとまで言える。御三家筆頭たる名家を守り抜くことだけを願っている、お家大事の家老達を嫌い、そのような徳川本家ばかりを上目遣いする境遇に育ったこともあるからか、人に対しても、自分に対しても自由というものを認めたかった。そんな通春が十八になるとき、江戸に長旅に出ることとなった。

    江戸では、荻生徂徠の興した、けん園学という学問に出会い、勉強している。けん園学は、”君子は聖人でなければならぬ”とするような古い朱子学とは対立し、”人間の欲望を認めた上で、天下万民に平和な世はどうすれば実現できるか”を求める学問であり、通春の思想に大いに影響を与えた。また通春は物事を悲観的に感じない。人は人と関わって生きている。自分のことを心にかけてくれている人の人数は、自分が思っているより多いかもしれない。物事をあまり寂しく考えてはいけない。この世に生きているということは、それだけで面白いことなのだからと、通春は思うのである。

    また、通春の兄で尾張藩当主の吉通から、尾張藩の当主に代々、言い伝えられていることを教わった。それは、水戸光圀に尊王の思想を教授したのが、尾張藩の藩祖義直公であるということと関係がある。御三家は将軍の家来ではなく、朝廷より官位を頂く、朝廷の家来であるということだ。したがって、いったん朝廷に事があれば、朝廷に従って、官軍になるべし。一門なりとて公方に属して逆賊となるべからず、ということだった。驚くべき尊王宣言である。尾張家とは、もともとそういう思想を持った藩なのである。ただし、前期の藩主たちがそうだっただけで、後期の藩主はそうではなかった。また、家老以下の重臣達は必ずしもこの思想に同意していたわけではないので、尾張藩の行動はそうきっぱりしたものではない。でも、とりあえず、前期の藩主たちにはこの考え方が伝えられてきたのある。

    そんな十八歳の通春に初恋が訪れる。しかも、相手が今は亡き前将軍家宣の側室の一人、未だ二一歳で未亡人となった寂香院であったが、胸の病で亡くなってしまった。通春は、初恋の刺激が大きすぎたせいか、寂香院への想いを断ち切れず、生涯妻は娶らないと誓い、女は楽しく遊ぶだけだという考えが、女性関係の基本となっていったのだった。

    通春は吉原を愛した。遊郭とは良きものという考えを一生持ち続けた。ひとつに、吉原には自由と平等がある。侍だろうが、町人だろうが、豪商だろうが、その中では同格であり、金と才覚だけで計られるのだ。金は余りなくても、男気と伊達ぶりでもモテるのである。その風通しのよさが、通春の性格と考え方にピッタリだった。そして、もう一つは、吉原が派手なことである。無数の提灯の不夜城であり、豪華絢爛の花魁道中で、この世とも思えぬ贅沢な祭りで、それが一年中続いているのである。自由と派手がそこにはあった。また、吉原は目立ちたがりの洒落っ気のあるかぶき者が集まり、新趣向で人目を惹こうとした。新しいものとは古いものを捨てて変革するものである。過去の常識を軽蔑し、進んで未来を受け入れることであると通春は思っており、そういう男にとって、吉原は天... 続きを読む

  • 主人公は実在の人物ですが、彼についてあまり知らなかったので、歴史的興味という意味で面白かったです。ある実在のアマチュア書家をからませる書き出しも洒落ていると思います。吉宗がらみの陰謀は、描き方が浅いと感じました。本上巻でさんざん宣伝されているので、早く下巻での活躍が読みたい。

  • 春様がとことん自由を貫いているのが気持ちよかった。

  • 感想は 下巻 で。

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