凍りついた香り

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著者 : 小川洋子
  • 幻冬舎 (1998年4月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784877282233

凍りついた香りの感想・レビュー・書評

  • 調香師という仕事をしていた弘之が、香りによって記憶を定義付けしている部分の描写が、とても小川洋子の文章が持つ静けさと美しさにマッチしていて読んでいて、不思議な気持ちにさせられました。「凍ったばかりの明け方の湖」「締め切った書庫。埃を含んだ光」この2つが特に好きです。

    主人公である涼子の恋人、弘之が死んでしまったところから始まる物語。涼子は、弘之の弟と弘之の生きた記憶を辿ったり、彼らの実家に訪れたり、プラハに旅立ちます。何が現実で、何が幻なのか。温室に孔雀とともにいた人物は何者なのか。

    弘之が自殺してしまった理由も明らかにはなりませんでした。小川洋子の世界にどっぷり浸かった事による疲労感と、結局物語のなかで何が起きていたのかわからないまま終わる、突き放されたような感じがとってもすきな一冊でした。

  • うーむ。小川洋子らしいモチーフばかり強くてそこにとどまった印象。いやでもまあ、すてきなんだが。

  • 死んだ恋人が作った香水から始まる旅の話。
    作者らしい、奇妙なエピソードが次々と待ち伏せしていて、想像力の豊かさに圧倒される。
    文章も端正。
    ただ、イメージの広がりは彼女の優れた特色だと思うのだけど、私は一点に集約していく物語が好きなこともあり、最後まで幾つかの点に物語が散らばったままに感じられ、読み終えて少し戸惑った。
    けれど読後感は良い。

  • 数学の規則性が持つ静謐さや、調香師など一般的ではなく謎めいた職業を描くところが小川洋子らしくてよい。
    ただ謎にうっすらと包んだまま終わるには長編だと物足りない感じもある。

  • 細かい疑問はいろいろあるけれど、美しい言葉と情景が心に残る。小川洋子さんは特殊な能力を持つ人を描くのがうまいな。

  • あなたをどんな香りとしよう。

  • 30歳で突然自ら命を絶った弘之(ルーキー)と1年間同棲していた涼子の前に初めて登場した弘之の弟・彰。彰から聞く弘之の過去はあまりにもかけ離れた姿でした。その謎を求めて涼子が仙台の史子を訪問、そしてプラハへ。亡くなった弘之のスケート、数学そして香りへの天与の才能と爽やかな人柄は印象に残ります。同じ著者の「博士の愛した数式」を思い出しました。それだけに、弘之が何故死を選んだのか、何故、脚本家であるなどと履歴に嘘があったのか、など疑問のままであることが、十分に熟成していないのではないかと、やや残念です。

  • いかにも理科系の作家による文章という感じ。

    もっと香り(調香士)について
    出てくると思ったが
    あまりなかった。

  • なんか不思議で引き込まれていった。
    あっさりだけどどこか寂しかった。

  • 香水工房につとめていた恋人の弘之は前触れもなく突然死んだ。自殺だった。

    それによって明らかになる弘之の過去、偽りの履歴書、数学コンテストにスケート、弟の彰の存在。

    何一つとして知らなかった弘之のこと。
    なにか、なんでもいいから彼の足跡を探しにむかったチェコのプラハで見たもの知ったこと。

    取り戻せないもの、戻れない過去、残ったのは、ともに過ごした記憶と彼からもらった香水だけ。

    賢い故に生まれながらの才能の扱いに苦労して優しい性格だからこその決断だったのかな?

    表現が豊富すぎてうっとりした)^o^(

  • 全てが少しずつ説明不足という気がしたけど、
    それでも描写の美しさが素晴らしいと思えた。
    夢の中の物語のよう。悪い夢で、きれいな夢。
    恋人が自分のために作った香水、一滴ずつ消えて行くけど
    全てが無くなった時、彼女は幸せに暮らせているだろうか。

  • 弘之の美しい鼻、あらゆるものを分類していく姿、数式を操り回答を導く様、それら1つ1つに色気があり、ため息が出た。

    また、プラハの描写も丁寧で、目に浮かぶよう。

    小川洋子先生は、よほど数学が苦手と見える。なぜなら、小説を通して、数式を操る人に対する尊敬と憧れの感情が溢れ出て伝わるからだ。

  • 調香師だった恋人・弘之がある日突然自殺した。
    霊安室には弟が駆けつけていた。弟がいるなど聞いた事がない。
    それだけではない。一緒に住んでいながら、彼が調香師だったこと以外、涼子は何も知らなかったことに気付いた。
    何故、何の前触れもなく自殺したのか? 彼の過去には何があったのか?

    遺品から得られた手掛かりはスケート場の入場券の半券と、情景を表わすいくつかの短いフレーズだけ。
    そして彼女に残されたのは、自殺の前日にプレゼントされた彼女のために調合された『記憶の泉』という名の香水・・・。
    弟・彰にとっても、18歳で家出して以降の兄については謎だった。涼子は彰と共に件のスケート場へ、そして彼の実家へと更なる手掛かりを探しに足を運ぶ。
    そして彼女は単身、プラハへと旅立つ。

    次第に明らかになる過去。
    数学の天才で、スケートの天才で、誰もが将来を嘱望した才能に溢れた少年だった彼だが、
    プラハでの国際数学コンクールで、彼女の母親が、彼のライバルのお茶に強い洗剤をいれた罪をかばい、コンクールを辞退。
    帰国後、高校を辞め、家を出ていってしまう。
    そして母親は彼の獲得したトロフィーに囲まれて生活をし、心を病んでいる。

    そして彼女はプラハの修道院の裏庭にある温室の洞窟で、
    記憶をつかさどる孔雀の番人と、"記憶の泉"と同じ香りに出合った。
    プラハで弘之は自分の記憶を、孔雀の心臓に託し、彼女はその心臓を通して涼子は16歳の弘之と出会うことができた。
    しかし、過去を変えることはできなかった。

    彼は彼女との未来を築くために、過去に立ち返り、過去の記憶に繋がる香水を、涼子のために調香したのだろうが、
    過去を振り返ったことで、精神が耐えられなくなり、自殺したのだろう。
    そして、過去を偽っていたことは、母親に損なわれ、傷ついた過去を消し去り、新たな自分として再出発したかったからに違いない。
    そして、彼の死は誰も止められない決められたことというのが一応の結論だが、
    こんな繊細な男性だと、いつか自殺していただろうし、ちょっと周りにとっては迷惑かも。
    どことなく村上春樹、江國かおりのような作品。

  • 静かで、どこか埃っぽくて、瓶の中のように息苦しくて綺麗な空気。
    突然自殺した恋人・ルーキーとその生を探す物語。

  • 美しい。。洞窟で記憶の中に沈んで行く所と、リアルなはずなんだけど、時間が止まってしまった様なプラハの街並みの対比が心に染み込みます。
    個人的にはジェニャックのチェロ描写をもっと書いて欲しかった。数学的に美しいのはベートーベンのメヌエットよりバッハだと思う。。。
    匂いを言葉に置き換えて記憶するってなんだかロマンチックだな〜〜

  • 初めは、最後に謎が解けて丸く収まるのだろうと思っていたのに、途中からそれすら気にならなくなってしまった。
    むしろ、小川洋子が紡ぎだす言葉の刺繍を、結末とは関係なしにいつまでもずっと読んでいたいと思ってしまう。

    ひっそりとした、静けさ。読む側が呼吸を潜めてしまいそうになるほどの、静けさ。閉じられた、美しいまでに完璧な静けさ。

    それが小川洋子作品の一番の魅力だと思う。

    と言いつつも、やっぱりルーキーの自殺のきっかけやこれから主人公がどう生きてゆくのか、孔雀の番人が何者なのか等々…気になるところもいくつかあったので、☆は4で。

  •  著者は、天才を理解することが可能かを試みる。主人公の女性は、同居人の突然の自殺に戸惑い、彼をあらためて理解しようとする。読後、彼はなぜ死ななければならなかったのかわからなかった。数学的才能の表現は『博士の愛した数式』に通じます。数学や香りへの天才的才能は、なぜ生きることへの能力を生み出さないのか。

  • 図書館にて。
    こういう小説には答えを求めてはいけないんだろう。
    でも、どうしても答えが欲しくなってしまう。
    どうして自殺なんて。
    最後に少しだけ見えた希望の光が救い。

  • 主人公の恋人は、突然死をした。
    恋人の過去をめぐって次々と明らかになる嘘と増える謎。恋人にうりふたつな弟の存在。
    真実を求めて主人公はプラハへ行く。

    最近の小川洋子の作風に迫ってきてるころの作品。
    愛情は人を変えるし残酷でもある。彼を愛するあまり狂った母親の存在がリアルだ。そして何も語らない静かなルーキーの死がとても美しいと思った。

  • ある日、涼子の元に恋人・弘之が自殺したという
    電話がかかってくる。突然のことに呆然とする涼子。
    弘之が運ばれた病院の霊安室には、職場の上司と、
    見慣れぬ男性が一人―。男性は弘之の弟だった。
    弟と弘之の遺品を整理するうち、涼子の全く知らなかった
    弘之を知る事になる。
    ついに涼子は、過去の弘之を追って、単身チェコに渡る。
    そこで涼子は、弘之から捧げられた香水「記憶の泉」の
    香りを漂わせる温室に迷い込み…。


    「香り」がお話の根底に漂い、悲しさを鎮静しているような
    静かなお話です。特に涼子が温室で孔雀の管理人と
    話しているところがお気に入りです。
    弘之は調香師だったわけですが、弘之が残した
    レシピで、香りのイメージとして書き綴った
    「凍ったばかりの明け方の湖」や、「締め切った書庫。埃を含んだ光」
    なんかは、共感できるというか。好きな香りかも…。
    ツンと冷たい、鼻がすすがれるような雪に似た匂い。
    お昼の温かい光にきらめきながら舞う埃。古い書籍の、甘いような匂い。
    香りは記憶を呼び起こすもの。しかし儚くもあるそれを頼りに
    弘之の真実を見出そうとする涼子が切なかったです。

  • 調香師だった恋人弘之が突然の自殺を図り、過去を辿るためにプラハを訪れる涼子。数学とスケートが得意だった弘之。どことなく不思議で綺麗な文章だった。2009/8

  • 2009.08.18. 表紙が、やはり素敵。前よりは、冷静に読めた。こう書くと変な感じがするけれど。プラハの旅で右往左往する気持ち、切羽詰まった気持ち、恋人への想い、生きていた頃の幸せな思い出。いろいろ錯綜するのを、淡々と引き受けられたとでもいうか。死んでしまった恋人の、知らなかった別の顔が次々と現れてきて、それがとても魅力的であるというのは、どんな気持ちがするのだろう。

    2006.12.20. 切ないような、冷たいような不思議な空気が漂っている。死んでしまった恋人の足跡を辿るためにプラハへ行く主人公、そのストーリーと錯綜していく静かな話たち。死んでしまった恋人が、香水を作る技師で数学がものすごく得意だったというのも興味深い。小川さんの小説には、標本と数学がよく出てくる。★5つ

  •  この世に謎なんてないのだと思っていた。弘之さえそばにいれば、この世のどんな謎でも解いてくれると思っていた。弘之が死んでしまうきざしなど、どこにもなかった。
    (P.111)

     私の知らない十六歳の弘之が渡った橋を、彼を失った私が同じように渡っている。彼はもういないのに、どうして橋はそのまま変わらずにあるのか、そのことが不思議でならなかった。
    (P.201)

  • 彼女らしい、理系のちょっとひんやりする感じがする本。

    ラブストーリー…なんだけど、ひんやりする感じ。
    冷めてるわけじゃないんだけどね、ひっそりとした感じ。

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