ライン

著者 :
  • 幻冬舎
3.31
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本棚登録 : 260
感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784877282516

作品紹介・あらすじ

登場人物の性とプライドとトラウマが現代日本の光と闇に溶けて消えていく。あしたは、朝が来ないかも知れない…。

感想・レビュー・書評

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  • 1990年代頃の都市部における若者たちの風俗が描かれた連作短編集。鍵になるのは、電話やテレビのコードから、その会話や映像が読みとれる「ユウコ」という女性。直接的な関係がない人の話もあるが、20人近い人物の性向を書き続ける村上龍の力は、凄いと思った。

  • みんなそれぞれに事情がある。
    みんな少しずつずれていて歪んでいて、それを少し自覚しつつも客観的に見て特別に自分を不幸とは感じてはいない不穏感。
    それが物語全体を纏う無機質でクールな雰囲気に繋がっている気がする。

  • 実家の自分の本棚にあったんで再読。←全く内容を覚えていませんでした・・・
    ラインというだけあり、次々に物語(人)が繋がっていきます。
    人には人の生い立ちというのがあります。
    自分が知っているパターンの生い立ちというのは自分の生い立ちだけかもしれません。
    隣の人の生い立ちもこの本のような・・・

  • こういうような青年たちは、いるんだろうな。
    と感じました。
    小説的よりも、
    ノンフィクションの世界のような気がしました。

    『「青春という言葉には、許しがたい響きがある」
    と村上龍は後書きに記している。

    青春は執行猶予期間で
    いずれは大人側へ行くのだという「了解事項」を拒否し
    て生きていくなら、
    青春を徹底して「消費」し「枯渇」するまで
    「自分を使い果た」さなければならない-
    という強いメッセージ 。』
    村上龍自選小説集1/(村上龍著)「消費される青春」

    青春を使い果たすまで、生きていくことは、
    青年たちにとってある意味では苦痛なのかもしれない。

  • 村上龍の卒論を書くにあたり、前作として参考にするべく買った本。表紙から滲みでるアングラ感が何ともそのまま現れたような話だった。簡単に言うと、ナイスキ○ガイ。登場人物は全員自分勝手な理屈で相手のことを解釈し、己の行動を決めている。そして自分の理屈から外れた人間は、全部「分からない」の一言で切って捨てている。
    構成はまずその話で視点となっている人物の普段抱えていることや考えていることがあり、家族構成などと絡めて紹介される。次に章末で別の登場人物に会い、章の終り直前でその人物の視点に突然切り代わり、次の章ではその人物の視点で物語が進む。なお、各章題は次の章の視点人物の名前が付けられている。これだけ見ても少し変な構成になっているように思うだろう。
    ちなみにユウコはただ見えるだけでその力を使って何かするわけではない。この辺りは非活動的な人物造形が見て取れる。精神病に詳しい人がいれば、この小説を読ませるだけで彼等がどんな病気なのか診断してくれそうな気もする。そのくらいリアル。
    当然、各章題はその章の視点人物の名前を持ってくる方が自然だが、この一件違和感のある題名の付け方、視点の切り替わり方にこそ、次から次へと人物を接続していく「ライン」としての役目があるのではないかと思った。パイプの中を流れる電気信号が見える女ユウコがまさしくそうであるように、物語の外枠から人物の内面を見ている様はどこか登場人物同士の会話から電話線を辿って行くような感じがしたのだ。
    これほど何事かを語るより読むほうが分かりやすい小説もないかと思う。直接的なあまり描写はないが、性的な言葉が散逸するので苦手な人は注意されたし。(まあ村上龍だしこの辺は読者も分かってるんじゃないかなと)
    卒論関連で使えそうなのと言えば、この時期の村上龍はコミュニケーションの問題にかなり関心を払っていたようで、本作にも明らかにコミュニケーション不全と見られるシーンがいくつも登場している。次回作『共生虫』にみられたあの長ったらしいカギカッコ内の文章や、不自然に具体的な固有名詞などだ。卒論の材料として、これらも活用していきたいと思う。

  • それぞれの章の人物へ繋がっていく物語。村上龍にしては少しだけ変わった設定で新鮮ではあったけど、内容は設定を生かしきれてなかったと感じた。村上はある時期から完全に失われてしまったのかもしれない。

  • 敏感すぎて他人と上手く関われない人と、ただのキチガイとの違いは何か?

  • 語り手の話に登場する人物が
    次の語り手となって、
    様々な人間が繋がり、描かれる。

    面白かった。
    登場人物たち皆がぶっ飛んでる。
    一人一人のストーリーが濃くて面白い。
    一人の男から辿った人間たち皆が
    こんなオカシイ奴らばっかりだとしたら
    世の中怖すぎるな。
    これだけたっぷり詰め込まれてれば、
    完全にお腹いっぱいになれる。
    満足できる作品だった。

  • 借りて読んだ。いつの間にか視点が移り変わっていく手法が興味深かったが、暗くてしんどい読後感。現代の閉塞感をなんとも「いやな感じ」で見せつけてくれる。

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著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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