永遠の仔〈上〉

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著者 : 天童荒太
  • 幻冬舎 (1999年2月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (422ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784877282851

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永遠の仔〈上〉の感想・レビュー・書評

  • あまりにテーマが深刻で、でもストーリーがとてもドラマチックで、
    心揺さぶる場面が多いから、しばらくはうっかりしていた。

    これは日本推理作家協会賞を受賞した上に、
    「このミステリーがすごい!」の一位にもなっている小説だということを。
    つまり、ミステリーの要素も充分にある、ということを。

    天童荒太氏の長編小説 永遠の仔である。

    長編も長編、文庫本では5巻になっているから、読み始めるときには少し躊躇した。
    この、辛い世界に、普通の本の5倍もの時間、わたしは浸かることができるのか。

    しかし、不安をかかえながらも読み始めると、もう本から顔を上げることができなかった。
    夢中になって読んでしまったのは、話の続きが気になるから、といった単純な理由ではない。
    もともとミステリー要素に関心の薄いわたしは、多少の謎を気にもとめなかった。

    生まれること・生きていくこと・生き終えること
    その3点が、不足なく描かれていることに、圧倒されたのだ。

    「人の悩みを、相手の立場になって、真に感情移入して聞くことは、大変なことだからね」
    という言葉があるように、あまりに重い現実をかかえる登場人物と、真に向き合うことは大変だった。

    でもこの作品は、真に、自分の心を添わせて読むよう、要求する。
    相手に心を添わせることを、もちろんこの読書中だけでなく、
    日々の生活の中でも意識して行わなければと、自然に精神教育されていく。
    押しつけがましさはないけれど、拒むことのできない、揺るぎない倫理。

    どこかで見たことのあるゲーテの格言も、特別な重みを持って心に響いた。
    「われわれにはいろいろ理解できないことがある
    生きつづけてゆけ
    きっとわかってくるだろう」

    そして、日本推理作家協会賞で、このミス一位である。
    意外性充分なストーリーであるうえに、事件の真相にはすっかり驚かされた。
    また、描かれる人間の誰もが繊細だから、些細な出来事でも過激な出来事でも、奥行きのある深い印象となった。

    五木寛之氏は、この小説のことを
    「小器用な解説を拒む謎、不可侵の核を抱いて成り立つ小説である」
    と表現している。

    幼児虐待も老人看護も、社会問題とはいえ、まったく無関係・無関心でいられる環境も多い。
    実際は、そういった問題と直面している人のほうが、圧倒的に少ないのではないかと思う。
    人それぞれ、かかえている問題は様々だろう。
    でも幼児虐待や老人看護の問題で、現実には悩んだことのない人も、事態の深刻さを知るべきなのだ。

    この重く苦しいテーマを、小説としての味わいを伴いながら世間に訴えかけてくれるため、
    そのために、優希たちは誕生した、とわたしは思いたい。
    そうでないと、永遠の仔たちの存在が、あまりに悲しすぎるから。

  • トラウマが人生を支配してしまう哀しい話

  • 入り込んでしまいました。

  • 2014年107冊目。

    小児精神科病棟で出会った3人の少年たちが17年振りの再会を果たす。
    3人だけが知る秘密が明かされぬまま、事件が3人を複雑な関係へと巻き込んでいく。

    幼年期の傷つきやすさ、繊細な心が見事に描写されている。
    読んでいて苦しくなる場面も多い。
    が、その生々しさがこの小説の優れているところだと思う。
    暗くとも綺麗ごとではなく内面をえぐり出すような話を求めていたため、とても読み入っている。

  • ルフィン、ジラフ、モウル…。
    そこは通称動物園と呼ばれる小児精神科。
    1人の少女と2人の少年が出会い、とある秘密を抱えてしまう。
    大人になった3人に待ち受けていたのもとは…、という物語。

    ようやく上下読破。
    暗いわ心がえぐられるわで遅々として進まなかった本ですが、ほんとにようやく。
    題材や内容は好みですが、ただ、長いトンネルを這いつくばっているような気分になりました。

  • 大人や児童の心の闇を描いた心理物語。

    上巻では1つの綻びが連鎖して3人の過去を洗い出している。
    物語全体的に臨場感があり惹き込まれる。

    優希、梁平、笙一郎の3人の過去と現在を、時間章ごと分かれて丁寧に描いている。

    児童精神病棟(動物園)での出来事や、児童や親の心の深い闇、虐待事件など、
    暗く重い内容を物語で扱っている。
    しかし霊峰や神などの神秘的な印象を匂わしており、独特な世界観を感じる。

    物語の主軸の3人の過去や謎が上巻ではすべて解けていない。
    しかし大人になった現代でも、幼少期と同じく心の闇を彼女達は抱えている。
    過去の出来事が少しずつ明かされることで、彼女達の心の闇が沸々と理解出来る。

    そして物語の鍵を握るのは優希の弟・聡史。
    彼の物語の動きで3人の過去の末端に綻びが出てくる。
    少しずつ糸を解すように過去と現代を繋げる物語構成が良く惹き込まれる。
    下巻では現代の水死事件と過去の霊峰の事件の犯人が解るだろうが、上巻で何となくその目星がつけられる。

    それを踏まえた上で感じるのは、心の闇の深さは他人には計り知れない。
    その事実をこの物語で突きつけられた。
    下巻での物語展開と結末がどういったものになるのか。早く読みたいと素直に思える作品は少ないですが、この本の結末が不透明なため早く読みたいという欲求に駆られています。



    上巻の個人メモ↓

    モウル(笙一郎)125P
    「みんながみんな、稼ぐ奴とか有名な奴、きれいな奴や、そういう奴と結婚したい奴…何者かになろうと焦ってさ、争ってる。
    でもみんな、本当はもう疲れてて、いやになってて、きっとこんな世界、誰も好きじゃないんだ…。だから最後は、互いにつぶし合って、終わりを迎えるんだ。」


    イフェメラの日記P240
    「成功と有名の依存症なのよ。
    平和やボランティアの世界でさえ、偉人やスターを作らずにはいられないんたから」

  • このミス2000年度第1位。重いけど読むのがやめられなかった。
    もっと早く読めばよかった。ミステリーというか
    心を探る本というか。テーマが重い。みんなそれぞれ心に闇があるんだろうか。
    私にも。うーん。

  • 過去に犯した罪を隠して生きてきた3人の男女が、大人になってから偶然再会し、
    様々なことが起こっていく…という話。

    ああ、罪からの救いってやっぱりすべての人に必要なんだな、
    って読みながら思った。

    誰かに自分を認めて、受け入れてもらいたい欲求。
    やりなおせない過去。
    背負い続けなければならない過ち。

    だれもが、すべてを受け止め、赦してもらわないと苦しくて仕方ないんだ。
    そのやりきれなさ、悲しさ、怒り、寂しさをあらゆる形で周りはぶつけられ、
    時として悲しい連鎖を引き起こす。
    親子間、夫婦間、友人間、どんな他者とも起こりうること。

    ああ、みんな神様がくれる救いを、許しを、すべてを受け止めてくれる愛を、
    知ってくれたらいいのにな。

  • 世の中にある様々な親子関係の問題の描写があり、正直怖いもの見たさ半分でした。ネグレストみたいな虐待は大小あれど、結構な家庭であると思う。子供がいる世代にはぜひ読んでもらいたい。

  • 読みにくい本だった。ドラマは良かったが、若干感情移入しづらかった。

  • 【内容】
    霧の霊峰で一人の少女・久坂優希と二人の少年が起こした聖なる事件。その秘密を抱えたまま別れた三人が、17年後再会した。そして過去を探ろうとする弟の動きと殺人事件の捜査によって優希の平穏な日々は終わりを告げた-。

    【感想】
    親子の関係、親の苦悩、子供の感受性など、
    「虐待」に係る描写が非常に丁寧で、心を打たれる一方で、
    話の展開や表現がドラマティック過ぎるため、
    リアリティが希薄化している点で、評価が低くなってしまった。
    でも、子供を持つ親、持とうとする者には一度は読んでみて間違い無い一冊だと思う。

    私は子供の頃虐待をされたという認識も事実も無いけれども、非常に居づらい家庭で、家庭がうまくいっていない時ほど情緒不安定になっていたという自覚がある。
    母は教師で、主に父方の祖母が面倒を見てくれていたが、祖母は常に母の悪口を言っていた。
    私が小学4年生の時、病気がちで、いじめを受けていた弟に対し、「こんな子、生まれてこなければ良かったのに」とか、「育て方が悪い」などと祖母が言い、弟を庇った母と言い争いになった。そして、母は実家に帰り、離婚寸前にまでなったことがある。
    どうやって解決したのかは分からないが、
    その時から、私まで母に悲しい思いをさせたくないと思う一心で、祖母の理想の人間になろうとしてきたように思う。
    祖母の理想の人間とは、「勉強の出来る、自慢できる子」だ。とりあえず、外面が良ければ何も言われない。大人になって、祖母が「良い思いをさせて貰った」と言う時、私は感謝の気持ち以上に「早く死んでしまえばいい」と思うのだ。

    自分が頑張れば頑張るほど、期待は大きくなり、当たり前になる。弟に対する扱いが微妙になる。私はとても弟に対して、申し訳なかった。だから、何かあった時に助けてあげられるように、ちゃんと資格をとって、お金を稼げるような仕事につこうと思った。でも、就職活動でそんなこと言えないし、やっぱり自分にも弟の為にもならないと気付いた。

    母方のおばあちゃんには「お母さんのことをお願いね」と言われ、母には「弟のことをお願いね」と言われ、じゃあ、私は誰に甘えたら良いんだろう、と悩んだこともある。
    色んな人たちと出会う中で、やはり私の父母は子供っぽいと思うのだ。子供の前では、「親」でいなければならないと思うのだ。父母のことは、「友達」だと思えば、期待しなくて良い、というのが持論だ。そう思うことは悲しいけど、じゃあ親らしくないことばかりだったか、と言われるとそうでもなく、特に母は私と弟を母親として大事にしてくれたことが思い浮かぶ。そして、著書を読み、感じたのは、親も人であり、完璧ではないということ。少なくとも、母に関しては私は甘えられていた部分があるのだ。

    私は周りの大人たち、友人たち、そして、旦那に出逢えたから今がある。随分助けられていた。

    もう直ぐ、母親になるにつけ、やっぱり人は育てられたようにしか育てられない部分はあるんだろたいなぁと実感する。経験がないから。著書を読んでも、虐待をされた親は自分の子にもしてしまう描写が所々に出てくる。
    だけど、周りを見渡せば、「自分が嫌だったことはしない」と親を反面教師にしている人達もいる。色んな人に影響を受けて生きてきた訳だから、そして、常に初めての経験で、学んで身につけてきた訳だから、何とでもなると信じたい。

    ・子供の話をきちんと聞いてあげる親であること。
    ・子供を「子供」としてではなく、1人の「人間」として扱うこと。

    を心がけていきたい。


    最後に、
    「生きていても、いいんだよ。おまえは......生きていても、いいんだ。本当に、生きていても、いいんだよ」
    著書の最後の結びだが、何だかしっくりこなくて。
    「あなたは、決して悪くなかった」
    母から優希への言葉が、たとえ遅くても、直接でなく... 続きを読む

  • 児童虐待を取り上げた物語

    精神疾患を抱えた少女と少年二人が、田舎の病院で出会う
    退院前には恒例の石鎚登山、その石鎚山で起こった事故
    少年少女は、大人になって再開する
    過去の事故の真実は・・

  • 面白すぎる‼︎
    この内容の本を面白いという表現で表すのは不適切かもしれないけど、先が気になりどんどん読み進めることが出来た。
    400ページ超え、しかも二段表記の本で、最初は読めるかなーって思ったけど、そんな心配は一切不要‼︎

    幼児の精神病って母親の影響が強いのかな?
    上巻を読んでるだけでは、主人公優希がどうして病院に入るまで精神的に不安定になってしまったのか書いてなかったし、主人公たち3人が山で犯したこと、今後どうなっていくのか…
    きっとハッピーエンドにはならないだろうけど、登場人物たちの今後を見守りたい。
    早く下巻が読みたい‼︎

  • 受験生の頃、国語の先生から大まかなあらすじを聞いて非常に興味を惹かれた小説です。上下巻に渡る長編ミステリーですが、複雑に絡み合う人間ドラマが大きな見どころとなっています。章ごとに主人公の幼少期と成人期が交錯するのがこの物語の特徴です。文章自体は読みやすく、次の展開が気になって一気に読み進めたくなること間違いなしです。
    この物語には、救いがない───
    紹介して下さった先生は、この本のことをそう評していました。結構暗く、過激な描写も多々ありますが、そういう物語が好みだという方には是非読んでみて欲しい一冊です。(haru)

    所在:本館2階学習室(日本小説)
    請求番号:913.6│Te
    資料ID:29901451

  • 感想は下巻にて。

  • 3人の子供が、家庭での問題から子供用の精神科の病院に入院する
    3人とは一人の少女と二人の少年、少年たちは、少女の心の病の根源を取り除こうと必死になる、そして悲劇がおきる、事故か故意か、すべては霧の中
    17年後、それぞれ立派に成長した3人を、昔の悲劇の記憶が襲い始める
    心の傷後が、それだけ人を傷つけるのか、人間の心の深層を余すことなく描いている、そして人間はどれほど愛おしいものかも我々に教えてくれる。
    登場人物が次々と悲劇に襲われるのは悲しい、みんなに幸せになって欲しかった

  • 17年前同じ小児精神科の入院していた3人の男女。
    時を経て再会し、殺人事件に巻き込まれていく。

    小児精神科という名前自体が初めてだったので目新しく思いました。過去の事はかなりゆっくりとしか明らかになりません。もどかしい思いで読み進めました。

    かなり厚い本ですがどんどん読めます。
    成長してそれなりの社会的地位を築きながら、どこか歪にしか人を愛せない3人。

    これからどうなってしまうのか楽しみに下巻を読みたいと思います。

  • 速攻で下巻、借りてきました。

  • <読了後、10年以上経過の備忘録>
     社会人になって、いろいろ悩み、本を読みだした頃に出会った本である。これを読んで天童荒太の世界にはまり、その後、彼のいくつかの作品も読了した。

     衝撃を受けた。いろいろと考えさせられた。時間が経過しすぎて詳細な感想は述べられないが。男というものは、今も昔も基本的なところは変わらないんだな、という感じだ。

     ところで、この本を本棚に登録しようとして検索をかけたら、続編が出ていたではないか。しかも10年前にだ。天童荒太ファンを名乗っているくせに全く知らなかった。早速5巻全部を注文してしまった。気合いを入れて読むことにしよう。

    <再読へ>
     とんだポカをしでかした。馬鹿丸出しである。「気合いを入れて」読むはずの文庫版の5巻は、続編なんかではなく、かつて読んだハードカバー版の上・下巻を5分冊にしただけであった・・・
     注文して早速届いた5冊の文庫本が、今か今かと私を待っている。確認のためにさわりを読んでみると、やはりそうだ。こんな当たり前の営業上の戦略を見抜けないとは(大袈裟か?)。

     少し読んだだけで、かつて読んだ時の雰囲気や記憶がよみがえってきた。しかし当然ながら忘れている部分のほうが多いだろう。今はいろいろな本を読みたい気持ちが強いので、基本的に再読はしない考えだったが、これも何かの縁だ、再読しなさいということなのかもしれない。ということで再読を決意した。大筋や結末はだいたい覚えているし、読みながらも思い出すはずなので、スピードを上げて読むことができると思う。

  • 久々にボリュームのある本に手を出してしまったが 先が気になって どんどん読みたくなる。
    17年前に何が起きたのか?まだ分からない。
    聡志の考え方がおかしいと伊島は、考えていたが 私は、聡志の考え方を全否定は、出来ない。
    さあ下巻読むぞ。

  • なにかで、この本がおもしろいとやっていて、ホントは文庫を買おうと思ってたんだけど、なぜかどの本屋にもなくて、たまたま近所の図書室に行ったらあったので借りてきました。

    この本、存在は知ってたけど、なんとなく感動もの、そしてシリアスな感じじゃないかと思っていて、躊躇してました。

    感動もの…ではなさそうだけど(上巻を読んだ限りでは)、シリアスはシリアス。

    聡志がなんだかからんできて、事件が起こったりし始めてからがおもしろくなってきました。
    下巻でどうなるのか。一体、ユウキはなんで精神を患うようになったのか。なんとなく、想像はつくけれど………。

  • 辛い…けれど、悲しい幼少期を強いられてきた子供たちの、その後の人生を綺麗事でなくリアルに描かれていると思う。3人が成人して立派な職業に就いているのは何故なのか…だからこその衝撃が待っているのか…下巻へ。

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