永遠の仔〈上〉

  • 2225人登録
  • 4.00評価
    • (450)
    • (310)
    • (407)
    • (14)
    • (4)
  • 288レビュー
著者 : 天童荒太
  • 幻冬舎 (1999年2月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (422ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784877282851

永遠の仔〈上〉の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • あまりにテーマが深刻で、でもストーリーがとてもドラマチックで、
    心揺さぶる場面が多いから、しばらくはうっかりしていた。

    これは日本推理作家協会賞を受賞した上に、
    「このミステリーがすごい!」の一位にもなっている小説だということを。
    つまり、ミステリーの要素も充分にある、ということを。

    天童荒太氏の長編小説 永遠の仔である。

    長編も長編、文庫本では5巻になっているから、読み始めるときには少し躊躇した。
    この、辛い世界に、普通の本の5倍もの時間、わたしは浸かることができるのか。

    しかし、不安をかかえながらも読み始めると、もう本から顔を上げることができなかった。
    夢中になって読んでしまったのは、話の続きが気になるから、といった単純な理由ではない。
    もともとミステリー要素に関心の薄いわたしは、多少の謎を気にもとめなかった。

    生まれること・生きていくこと・生き終えること
    その3点が、不足なく描かれていることに、圧倒されたのだ。

    「人の悩みを、相手の立場になって、真に感情移入して聞くことは、大変なことだからね」
    という言葉があるように、あまりに重い現実をかかえる登場人物と、真に向き合うことは大変だった。

    でもこの作品は、真に、自分の心を添わせて読むよう、要求する。
    相手に心を添わせることを、もちろんこの読書中だけでなく、
    日々の生活の中でも意識して行わなければと、自然に精神教育されていく。
    押しつけがましさはないけれど、拒むことのできない、揺るぎない倫理。

    どこかで見たことのあるゲーテの格言も、特別な重みを持って心に響いた。
    「われわれにはいろいろ理解できないことがある
    生きつづけてゆけ
    きっとわかってくるだろう」

    そして、日本推理作家協会賞で、このミス一位である。
    意外性充分なストーリーであるうえに、事件の真相にはすっかり驚かされた。
    また、描かれる人間の誰もが繊細だから、些細な出来事でも過激な出来事でも、奥行きのある深い印象となった。

    五木寛之氏は、この小説のことを
    「小器用な解説を拒む謎、不可侵の核を抱いて成り立つ小説である」
    と表現している。

    幼児虐待も老人看護も、社会問題とはいえ、まったく無関係・無関心でいられる環境も多い。
    実際は、そういった問題と直面している人のほうが、圧倒的に少ないのではないかと思う。
    人それぞれ、かかえている問題は様々だろう。
    でも幼児虐待や老人看護の問題で、現実には悩んだことのない人も、事態の深刻さを知るべきなのだ。

    この重く苦しいテーマを、小説としての味わいを伴いながら世間に訴えかけてくれるため、
    そのために、優希たちは誕生した、とわたしは思いたい。
    そうでないと、永遠の仔たちの存在が、あまりに悲しすぎるから。

  • トラウマが人生を支配してしまう哀しい話

  • 入り込んでしまいました。

  • 2014年107冊目。

    小児精神科病棟で出会った3人の少年たちが17年振りの再会を果たす。
    3人だけが知る秘密が明かされぬまま、事件が3人を複雑な関係へと巻き込んでいく。

    幼年期の傷つきやすさ、繊細な心が見事に描写されている。
    読んでいて苦しくなる場面も多い。
    が、その生々しさがこの小説の優れているところだと思う。
    暗くとも綺麗ごとではなく内面をえぐり出すような話を求めていたため、とても読み入っている。

  • ルフィン、ジラフ、モウル…。
    そこは通称動物園と呼ばれる小児精神科。
    1人の少女と2人の少年が出会い、とある秘密を抱えてしまう。
    大人になった3人に待ち受けていたのもとは…、という物語。

    ようやく上下読破。
    暗いわ心がえぐられるわで遅々として進まなかった本ですが、ほんとにようやく。
    題材や内容は好みですが、ただ、長いトンネルを這いつくばっているような気分になりました。

  • 大人や児童の心の闇を描いた心理物語。

    上巻では1つの綻びが連鎖して3人の過去を洗い出している。
    物語全体的に臨場感があり惹き込まれる。

    優希、梁平、笙一郎の3人の過去と現在を、時間章ごと分かれて丁寧に描いている。

    児童精神病棟(動物園)での出来事や、児童や親の心の深い闇、虐待事件など、
    暗く重い内容を物語で扱っている。
    しかし霊峰や神などの神秘的な印象を匂わしており、独特な世界観を感じる。

    物語の主軸の3人の過去や謎が上巻ではすべて解けていない。
    しかし大人になった現代でも、幼少期と同じく心の闇を彼女達は抱えている。
    過去の出来事が少しずつ明かされることで、彼女達の心の闇が沸々と理解出来る。

    そして物語の鍵を握るのは優希の弟・聡史。
    彼の物語の動きで3人の過去の末端に綻びが出てくる。
    少しずつ糸を解すように過去と現代を繋げる物語構成が良く惹き込まれる。
    下巻では現代の水死事件と過去の霊峰の事件の犯人が解るだろうが、上巻で何となくその目星がつけられる。

    それを踏まえた上で感じるのは、心の闇の深さは他人には計り知れない。
    その事実をこの物語で突きつけられた。
    下巻での物語展開と結末がどういったものになるのか。早く読みたいと素直に思える作品は少ないですが、この本の結末が不透明なため早く読みたいという欲求に駆られています。



    上巻の個人メモ↓

    モウル(笙一郎)125P
    「みんながみんな、稼ぐ奴とか有名な奴、きれいな奴や、そういう奴と結婚したい奴…何者かになろうと焦ってさ、争ってる。
    でもみんな、本当はもう疲れてて、いやになってて、きっとこんな世界、誰も好きじゃないんだ…。だから最後は、互いにつぶし合って、終わりを迎えるんだ。」


    イフェメラの日記P240
    「成功と有名の依存症なのよ。
    平和やボランティアの世界でさえ、偉人やスターを作らずにはいられないんたから」

  • このミス2000年度第1位。重いけど読むのがやめられなかった。
    もっと早く読めばよかった。ミステリーというか
    心を探る本というか。テーマが重い。みんなそれぞれ心に闇があるんだろうか。
    私にも。うーん。

  • 過去に犯した罪を隠して生きてきた3人の男女が、大人になってから偶然再会し、
    様々なことが起こっていく…という話。

    ああ、罪からの救いってやっぱりすべての人に必要なんだな、
    って読みながら思った。

    誰かに自分を認めて、受け入れてもらいたい欲求。
    やりなおせない過去。
    背負い続けなければならない過ち。

    だれもが、すべてを受け止め、赦してもらわないと苦しくて仕方ないんだ。
    そのやりきれなさ、悲しさ、怒り、寂しさをあらゆる形で周りはぶつけられ、
    時として悲しい連鎖を引き起こす。
    親子間、夫婦間、友人間、どんな他者とも起こりうること。

    ああ、みんな神様がくれる救いを、許しを、すべてを受け止めてくれる愛を、
    知ってくれたらいいのにな。

  • 世の中にある様々な親子関係の問題の描写があり、正直怖いもの見たさ半分でした。ネグレストみたいな虐待は大小あれど、結構な家庭であると思う。子供がいる世代にはぜひ読んでもらいたい。

  • ( ′︵‵。)

全288件中 1 - 10件を表示

天童荒太の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
天童 荒太
宮部 みゆき
横山 秀夫
東野 圭吾
村上 春樹
宮部 みゆき
宮部 みゆき
宮部 みゆき
有効な右矢印 無効な右矢印

永遠の仔〈上〉に関連するまとめ

永遠の仔〈上〉を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

永遠の仔〈上〉を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

永遠の仔〈上〉の作品紹介

再会は地獄への扉だった。十七年前、霧の霊峰で少年たちが起こした聖なる事件が、今鮮やかに蘇る-。山本周五郎賞受賞作から三年余。沈黙を破って放つ最高傑作ミステリー。

ツイートする