- Amazon.co.jp ・本 (493ページ)
- / ISBN・EAN: 9784877282868
感想・レビュー・書評
-
重かった。特別な話のようで、誰にでも当てはまるものなのかもしれない。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
親から虐待を受けて施設で育った3人の子どもたちが大人になって再会する物語。
大人になっても心の傷が癒えない彼らが互いに支え合う姿にいたく感動し、貪るように読みました。
悩み多き時期に読んだので、特にのめり込みました。
虐待受けたわけではないけど、何かしら親からの圧力があって、大人になり切れず鬱々とした時期があったのですよね。
ドラマ化されて優希役は中谷美紀さんでしたが、自分の脳内では石田ゆり子さんでした。 -
終わりのない負の連鎖。
本当の救いなんてあるのだろうか。
フィクションのようでいて、きっとどこかに現実として存在する問題なんだと思わせられた。
一つの歯車の狂い、ボタンの掛け違いから全てが狂っていくような恐ろしさ。
その中で幼少期の3人の絆はこの作品唯一の温かみのように感じられ、
負の感情の中にわずかな光を射してくれ、ただただ暗い作品になるのを防いでくれたように思う。
そうでなければ読破出来なかったかもしれない。
それくらい辛い内容だが、引き込んで読ませるのは作者の腕なのだろう。
自分には想像もできない世界の話の中で、共感できる部分があったとすれば、誰しもが大なり小なり自分を受け入れてくれる人を求めているんだろうなという感覚だった。 -
考えさせられました
トラウマに縛られたとしても、それでも歩かねばなりません -
子供の頃の虐待の記憶は、その後どんなに手当てをしても決してなかったことにはできないのだと、心に楔を打ち込まれたような作品でした。親として子供を育てていくことの責任、難しさ、覚悟を突き付けられたような…。もう少し早く読んでいたら、と後悔しながら、また、どんな悲しい結末になるのか息を詰めて読みました。素晴らしい!
-
児童養護施設で育った3人の子どもの、若き日と大人になったからの物語。
天童さんはこの作品ではじめて読んだのだけれど、
メッセージの重みと深さが圧倒的で物語の中に完全に引きずり込まれた。
「生きているだけで、いいんだよ。」って何度も何度も語りかけてくるんです。
本当に時間をかけて、言葉を選び物語を練り、魂を込めて書かれたと思われる至高の作品。もはや職人業である。 -
上巻では分からなかった真実がついに明らかになる。
嘘に嘘を重ねていったから、余計に苦しくなってしまったのかな…って思うことはあるけど、嘘で隠さなきゃいけないぐらいの過去だった。
最後はみんな、過去の因縁から少しは逃れることが出来たのかな。
そうであって欲しい。
このあとも、残された二人の人生は苦しいものになると思うけど、きっと乗り越えていける強さ、自分を受け入れる強さを身につけたと思う。
最後に、母親から優希に当てた手紙で
「お父さんの過去に辛いことがあったかもしれないけど、それはあなたには関係のないこと。あなたは絶対に悪くない。あなたの魂は美しい」
って言葉には、私も少し救われた気がした。
虐待の連鎖を断ち切るのって、正にこれだと思う。
いくら自分が子供のときに辛い目にあったとしても、同じことを子供にしていい資格なんて誰も持ってないんだから。
重く、辛い内容だったけど、これは完全はフィクションではない。
現実にこういうことが起こっていると認識するべきだということを、教えてくれた。 -
この本は、泣けます。是非、読んでください。
-
心が揺さぶられた。
嗚咽しながらボロボロ泣きました。
フィクションだと分かっていても、読了後は静かに目を閉じるしかなかった。
それぐらい衝動的で悲しい真実に彩られた心理物語。
物語の構成と伏線の伏線も見事で騙されました。
そして最後の伏線も悲しい真実があった。
でも悲しいだけで終わらせない、子に対する母親の愛情が見えた伏線で心が打たれた。
抉るような心に傷を抱えた登場人物たちが、今を生きる心の苦しさと葛藤そして迷いが理解出来る。
性的虐待、育児放棄、イジメ、身体的劣等感、心の病など、様々な問題を生々しくこの物語で描いているが、
登場人物たちと同じく子供に受けた心の傷は、大人になっても簡単には消えはしない。
普通の人と同じように生きようと、もがけばもがくほど現実に苦しむ。
今、この瞬間にも、それらに悩み葛藤しながら生きている人達がいることを思い浮かべてしまう。
だからこそ物語の3人には、最後幸せになって欲しかった。
笙一郎の結末が悲しすぎて泣いてしまう。
普通に生きたいだけなのに、心の闇や現実問題がそうさせない。
生きてても良いんだよ。と、私も3人に語りかけたかった。
ルフィンとジラフとモウルの名前も、悲しい現実だが下巻で名前の意味を理解できた。
煙草の火の押し潰された痕が無数にあるから、キリン=ジラフ(英語名)だとわかった時に胸が苦しくなった。
どんな結末でさえ、優希と梁平、笙一郎の、3人の絆と生きた証が残る物語だった。
今まで読んだ本で同著者の「悼む人」と同じくらい一番心が揺さぶられた物語でした。
様々な感情が取り巻くが、読めて素直に良かったと思える物語です。
下巻の個人的なメモ↓
イフェメラの日記P113
「ときどきこの世界って、親が大人とはかぎらないってことを、忘れるみたいね。子どものままでも、親になれるんだから。
親ってだけで、子どものすべてをまかせるのは、子どもに子どもを押しつけてる場合もあるのよ。
子育ては競争じゃないって伝えるところが、どうしてないの。
支える道も作らずには、未熟な親を責めるのは、間接的に子どもを叩いているのと同じかもしれないのに。」
P292の施設長が笙一郎に語る、介護の考え方が新鮮で救いがある。
P443優希
「つらさばかりを感じながらも、どうにか生きてこれたのは、いつか、ほめてもらえる日のあることを信じ、それに憧れ、求めていたためだと思う。」
P490優希(梁平の回想)
「生きていても、いいんだよ。
おまえは…生きていても、いいんだ。
本当に、生きていても、いいんだよ。」