グリコ・森永事件: 最重要参考人M

  • 幻冬舎
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784877283919

感想・レビュー・書評

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  • 大谷さんが宮崎学氏を本書の執筆当時にグリ森事件の犯人と思っているのは盛り上げるためのチキンだろうけど、それを踏まえても十分に楽しく読了することができた。

  • 事件の容疑者として有力視された宮崎氏と読売の記者による事件の謎に迫る。宮崎氏があまりにも犯人像に近く、警察が宮崎氏の捜査にかなり手を取られたことは間違いない?宮崎氏の周辺の人物が怪しいという主張もそうかな?と思ってしまうぐらい、説得力がある。警察が何故、失敗したのかも今の時期、警察の不祥事が世の中を騒がしている時期だけに面白く読めました。

  • 「グリコ・森永事件 最重要参考人M」
    著 大谷昭宏・宮崎学
    幻冬舎

    1985年、日本を震撼させたグリコ・森永事件。当時7才だった俺も、ニュース報道を不気味に感じ、ビビりながら、お菓子を喰ったもんだ。

    この本は、当時、読売新聞の大阪本社で記者として事件を追いかけた大谷昭宏と、指名手配となったキツネ目の男として、犯人と疑われ、取り調べを受けた宮崎学が互いの目線で事件を掘り下げていく。

    この事件、俺は幼かったから不気味な印象以外、細かい所は知らなかったが、この本により、事件の成り行き、細かい点を知ることができ、なおかつ、不条理な、不可解な点が、不謹慎ながら、おもろいと思ってしまった。

    この事件のはじまりは、1985年3月18日江崎グリコの社長、江崎勝久宅に犯人が日曜午後9時過ぎに三人組の男が押し入り、江崎社長の母、妻、長女を縛り上げる。そして犯人は、長男と次女と江崎社長が入浴していた浴室に押し入り、江崎社長のみを連れ去った。
    その後犯人グループは、江崎社長の身の代金として、現金10億円と金100キロを要求。
    誘拐事件から3日後、監禁されていた江崎社長が自力で脱出、保護される。これで解決したかに思えた事件は、ここから更に混迷を深めていく。
    その後犯人グループは、江崎社長宅に現金を要求する脅迫状を送る。が、約束した場所には現れず。
    約束の日の2日後グリコ本社敷地内の建物とそこから3キロ離れたグリコ栄養食品が放火される。
    犯人は、その後も現金を要求する脅迫状をグリコに送るも指定した場所には現れず。

    5月になると犯人グループは、大手新聞4社に「グリコの せい品に せいさんソーダ いれた」「グリコを たべて はか場え いこう」という挑戦状を送る。グリコの食品が全国の店頭から消えた。
    6月2日、犯人は、三億円も身代金を積んだ車を大阪府摂津市の某焼肉屋の前に停めるように要求。警察も途中で、エンストを起こすように細工した車を用意するも、現場に現れたのは、犯人の替え玉であった。現場に現れた男性は、この日、交際していた女性といる所を犯人に襲撃され、女性を人質に取られたため、女性を解放することを条件でこの受取人を引き受けたという。ちなみに女性はその後、解放された。

    その後、犯人は丸大、森永、ハウス食品、不二家、駿河屋に脅迫状を送り、現金を要求している。いずれも犯人は現金は受け取れず、警察は犯人を逮捕できずに事件は終わった。(ちなみに宮崎学と似ているといわれたキツネ目の男は、丸大の時に犯人が現金の受け取り場所と指定してきた国鉄の車両内と、ハウス食品のときに受け取り場所に指定した大津サービスエリアで目撃されている)。

    事件の細かい情報や大谷、宮崎のこの事件に対する、疑問、分析、解釈が面白い。

    この犯人たちの目的は、身代金ではなかったのではないか、と指摘している。身代金だけの目的なら、最初に江崎社長を誘拐せずに、江崎社長の子供を誘拐したのではないのか、と。

    江崎社長は自力で脱出したが、あれだけ鮮やかな手口で誘拐した犯人グループが、そんなへまをやらかすのか?

    江崎社長が脱出した後、兵庫県警の事情聴取を受けるのだが、受ける直前で当時グリコの大幹部であった社員がかけこんできて、社長との面会を要求、兵庫県警はそれを受け入れ、二人を個室で面会させている。事情聴取直前まで、興奮状態で猛烈な勢いで饒舌だった江崎社長は、大幹部と面会後、一転して、事情聴取にはしゃべらなくなったという。江崎社長が誘拐されている間に犯人グループとグリコの間で何らかの取引があったのではなかろうか?

    犯人は、脅迫状の中で「よしのくん」、「たかとりくん」等、一般の人には知られてない警察幹部の名前を出したり、犯人が乗り捨てた車から発見された警察の無線を傍受していた無線機、逃走ルートに一般の警察官は知らない極秘情報である無線の不感地帯を選び、車を追尾させないなど、犯人グループの中に、警察内部の者、OBがいたのではないのか?

    犯人の遺留品は六百点もあった。

    うーん、謎だらけで頭がこんがらがってくるけど、おもろい。

    で、この本の中に大谷と宮崎の対談も納めらているが、大谷は未だに宮崎を犯人と疑い、それを素直に宮崎にぶつける。それをまるで他人事のように答える宮崎、二人のやり取りがおもしろい。

    宮崎学は、おもしろい。キツネ目の男に似ている、事件の舞台になったいずれの場所にも精通しているという点で疑いをかけられたんだろうが、それ以外にも宮崎の経歴も疑われる要素が十分ある。宮崎の半生は、「突破者」(宮崎の人生と戦後の裏の歴史を知れて、おもろいよ)に詳しく書いてあるが、ヤクザの息子に生まれ、暴力革命を目指していた時代の共産党でゲバ棒を振ったり、労使紛争に関わったり、企業恐喝で逮捕されたことあったり、とそれはそれは、アウトローな反体制な人生。なぜ宮崎学が犯人ではないのか?あまりにも揃いすぎているのに。

    まあ、事件は時効を迎え、永遠の謎になったが、今後も高村薫の「レディ・ジョーカー」みたいに小説のモデルになったり、ルポが書かれたりと、「グリコ・森永事件」は、いつまでも語られる事件なんだろうな。

  • ジャーナリスト大谷昭宏vs最重要参考人Mとして警察にマークされた宮崎学。対決本。鋭く、単刀直入に質問する大谷昭宏が気持ち良い。事件を知らなくても読めます。これだけ怪しいのにアリバイがあるのか。すごい偶然てあるんですね。もうびっくりですよ!

  • 「キツネ目の男」と疑われた宮崎学と、彼を犯人と確信する元記者大谷昭宏の対談や事件の考察。その構図だけで面白い。警察の腐敗やヤクザ、被差別部落の関係など話が広がってわけのわからないところもあるが。

  • 368.6/Oo

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著者プロフィール

写真家。1949年長野県生まれ。精密機械会社勤務を経て、1972年、プロ写真家として独立。自然と人間をテーマに、社会的視点にたった「自然界の報道写真家」として活動中。1990年「フクロウ」で第9回土門拳賞、1995年「死」で日本写真協会賞年度賞、「アニマル黙示録」で講談社出版文化賞受賞。2013年IZU PHOTO MUSEUMにて「宮崎学 自然の鉛筆」展を開催。2016年パリ・カルティエ現代美術財団に招かれ、グループ展に参加。著書に『アニマルアイズ・動物の目で環境を見る』(全5巻)『カラスのお宅拝見!』『となりのツキノワグマ』『イマドキの野生動物』他多数。

「2021年 『【新装版】森の探偵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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