- Amazon.co.jp ・本 (541ページ)
- / ISBN・EAN: 9784877284503
感想・レビュー・書評
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在日同胞を慰めるために書かれた本なのかな、と思いました
日本人は徹底的に冷酷に、かつ弱々しく描かれています
その割に、行動理念の矛盾を刺すような問いを、同胞等から指摘されることが地味に散りばめられています
被害者意識からくる道理を押し通し、鉄や銅線の泥棒行為を正当化する様にはちょっと引きました
「日本人」と大きな主語を憎む割に、いざ「朝鮮人」と憎悪を向けられると怯む純粋には目を瞠りました
デカい主語で他所を叩くわりに、自分達の犯罪行為を総括をしない振る舞いもどうかと思いました
窃盗行為の挙げ句に日本警察に因縁をつける生き様には、一切の逞しさは感じませんでした
あれだけ反社会的行為を送りながら、長閑な余生を過ごす結末にはご都合主義を感じました
梁石日先生の筆力でありのままを書いたのか、それとも露悪的な脚色なのか、どういう思惑で執筆されたのか計りかねました
あと汚い話なのですが、糞尿の描写が多過ぎて読んでて気分が悪くなりました
どういう感想を持てばいいのか分からなかったです詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
昔読んだ本
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前半を読んでいたときに感じた、疾走感や、怒涛の勢いが、後半にどんどん削がれて、剥がされていくのがじつに素晴らしかった。
この作品には、やたらと鮮度と生々しさが感じられた。
それは綿密な調査、取材によるものではなく、自分の目で見て、耳で聞いたことを書いたからなのだと思う。
アパッチ部族のストーリーを描いた作品は他にはあるが、他のはあくまでも取材されたもの、又聞きしたものだという違いが、読めばハッキリとわかる。
どちらが好みだとかいう話ではなく。
こちらには凄まじい温度がある。
大阪砲兵工廠での仕事ぶりの、汗まで伝わってきそうな書き込みぶり。
大村収容所での、まるでドラマや映画といった映像を見ていて、目を覆いたくなるような、もう見ていられない、と思わせるほどの描写。
この本には一応救いがある。
義夫を待ち続けた初子の存在である。
だから読み終わって、少しほっとした。
しかし本を閉じて、救いがあったのはごくわずかな人だけであったことを思い出す。
大阪砲兵工廠でもたくさんの人が消え、そしてそれよりもっとたくさんの人が帰国していった。
そして最後の義夫のまくしたてた言葉。
もうわたしの想像できる範囲をゆうに超えたおそろしさに、背筋が震えた。 -
{(開高健「日本三文オペラ」)+(帚木逢生「三たびの海峡」)}÷2
≒「夜を賭けて」
第一部は「日本三文オペラ」に良く似てます。というより、アパッチ族の活躍は著者の梁石日(Yan
Sogiru)の実体験に基づく物であり、開高健は著者を取材して「日本三文オペラ」を書き上げたのだそうです。発表年度はこの本の方がずっと遅いのですが、本家はこちらという訳です。作品としての質の高さも差は無いレベルでしょう。だた、個人的には「三文オペラ」の躍動感やカラッとした放埓さのほうが好みです。
第二部はあまり知られていない朝鮮人迫害の実態が主題になります。日本に社会的に迫害され、収容所内では同じ朝鮮人にリンチを受け、八方ふさがりの暗く重いテーマです。その中でヒロインとなる女性が唯一の光であり、そういう意味で「三たびの海峡」を思い起こすのかもしれません。帚木さんほど端麗な語り口ではありませんが、やはり「過ぎる表現」を使うことなく物語が進みます。ただ、やや散漫さを感じさせます。
「日本三文オペラ」も「三たびの海峡」も私の大好きな作品です。どうしても後で読んだこの本を比較してしまい、やや辛口の感想になってしまいました。しかし「もし読了順が逆だったら?」と思わせる位に良い作品だと思います
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在日の人の底力を感じた
生きることは波乱の連続かもしれない -
p323
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開高健の日本三文オペラを読んだ後、アパッチ族にとても興味がわいて
その勢いで1日で読み切ってしまった。
どんな過酷な状況下においても人間の゛生きたい゛という思いは
鮮明で生き生きとして生臭い。
開高氏の作品よりも笑いどころが多く、こちらの作品も一人一人がとても
魅力的だ。
素晴らしい小説である。 -
終戦当時の在日コリアン達の凄まじい生活模様が描かれています。
今の僕からは想像できない生活にびっくりした。
臭い物には蓋する的な観点からなのか、あまりオープンにならない部分がよく見えた気がします。
それにしてもどん底の環境で明るく生きる登場人物達のエネルギーは凄い!