- Amazon.co.jp ・本 (122ページ)
- / ISBN・EAN: 9784877284886
作品紹介・あらすじ
「俺、天国って南の国のことだと思うんだ」旅行に出かけてばかりだった恋人は、こう言い残して死んでしまった。突然の出来事に戸惑う私は、ただ、もう一度彼に逢いたい、と色とりどりの花々が咲き甘い香りの漂う、彼のいるはずの「天国」を探し求める。世界で一番大切な人を想う、切なく純粋な気持ちをヴィヴィッドに描く、ある夏の一日の物語。
感想・レビュー・書評
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食べたものが身体の一部になるように、誰かと共にした時間は人生の一部になる。終わった恋も。哲学的なテーマを繊細なラブストーリーにできるのが著者のすごいところだと思う。
初めて読んだ時は私は地方に住む女子高生だったのですが、最近(上京して10年も経過してから)ギョエンが新宿御苑だ!!と気づいて衝撃をうけたので再読。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
もしも私が大切な人を失ったら、きっと同じようになるだろうと共感できた。最後に入口から出るところが良かった。
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私が初めてこれを読んだのは遠距離恋愛をしていた頃でした。
"逢えなくても、逢いたいと思い続けることができる限り大丈夫だ" という言葉にとても強く励まされたのを覚えています。久しぶりに読んでみると以前よりももっと言葉が染み込んできた気がします。それは、苦しいくらいに。
普通の小説なら、真夏にコートを着ているなんておかしい人じゃないか。と感じていたかもしれないけど、狗飼さんの言葉から感じたのは、ただひたすらに愛する人を想う気持ちでした。狗飼さんは、なんて丁寧に言葉を紡ぐ人なんだろう。
強い人は自分と向き合える。私も彼女のように逃げることなく自分と向き合えたらと思いました。これは私にとってとても大切な本で、これから先もずっと大切なままなんだろうと、読み直してからまた思いました。 -
恋人を失った喪失感。淡々と進んでいく文章からそのつらさがこぼれ落ちてくる。
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この作品のメインの部分を抜き出すと
<blockquote>人は二度死ぬという。一度目は自己の死。
そして二度目は人に忘れ去られるという死。忘却という死。
うん、そうだ。わたしも、そう思っている。ずっと、そう思っている。
人は死ぬと忘れられる。忘れられると人は死ぬ。わたしは、そう思っている。
だから、わたしは生きていたい。生きて、そばにいたいと思う。
どれほど好きだったとしても、そばにいなければ、もう会えなければ、忘れてゆく。
人間なんて曖昧でデタラメな生き物だ。
そのくせ、忘れることだけは、精密にできている。
時間が経てば、しだいに、忘れてしまうのだ。
どんなに忘れたくないと思っていても。
死ぬことでだれかの記憶に残ろうなんて、愚かで滑稽だ。
傲慢で自惚れだ。
だから、わたしたちは、生きるしかないのだ。
忘れられたくないのなら、生きるしかないのだ。</blockquote>
という部分になるのだと思う。
…かなり甘ったるくて、女の子の好きな文章だと
冷静に読める自分もいるんだけど…
<span style="font-size:large;"><strong>私は甘ったるくて、
女の子な文章が大好きです!</strong></span>(笑)
実際、あんなに好きだった彼の顔や声、匂いとか…
そんなものがどんどん私の中で遠くなっている実感があるから。
どんなに頑張って毎日引っ張りだして思い出そうとしてみても、
私の脳はそのデータを不要としているらしい。
どんどん風化されていく。
ただ、彼のことを忘れるのは『許し』だという気持ちもあるので、
私はその風化を、ぼんやり優しく眺めていようと思う。 -
死んでしまった恋人の軌跡を、
ある日一日かけて辿る主人公。
もう一度会いたい。もう一度彼の温度を感じたい。
そんな主人公の想いが切なく迫ってくる。 -
死んでしまった恋人に、会いに行くお話。<BR>
真夏の8月に、彼のカーキ色のコートを着て。<BR><BR>
狗飼恭子さんの小説には、全てではないけれどいつも部分的に共感する。<BR>
「逢えなくても、逢いたいと思い続けることができる限り大丈夫」 -
なんだか、無性に、好き
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狗飼さんのお話で一番好きな本。<BR>
『人は二度死ぬという。一度目は自己の死。そして二度目は人に忘れ去られるという死。忘却という死。それならば私は、忘れないでいよう。できるかぎり、できるだけでいい。私の中で生きればいい。私は彼を胸に抱いたまま生きよう。そのままで、他の誰かを愛そう。ただ、私は。ほんの短い間ではあったけれど、二人の重なった軌跡を、大切にしよう。それが私のできるすべて。あなたは永遠に私の恋人ではないだろうけれど、私は、永遠にあなたの恋人。』 -
未だに読み返す小説。
自分で立ち上がる女の子の姿、狗飼作品で最初に感動した話。