眠れるラプンツェル (幻冬舎文庫 や 4-2)

著者 :
  • 幻冬舎
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感想 : 105
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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784877285883

感想・レビュー・書評

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  • ラプンツェルとは…なるほど。

    外から見る専業主婦と実際なってみる専業主婦はまるで違うと思う。
    気楽さと後ろめたさと自由と束縛と…でもこれ、自分自身の物差しでしかないのだと思う。

    塔の鍵は、私が持っていたのだ。
    看守は私だったのだ。

    ほんと…そう。

  • 子どものいない主婦歴6年の汐美は28歳。グリーンヒルズにあるマンションの8階で、気ままに暮らしている。
    コマーシャル制作会社の代表である夫はめったに帰って来ない。「暇ですなぁ」そう呟いて、変わり映えのない日々を、ただ時間を消費するようにして過ごす。
    穏やかすぎる毎日。そんな折、ひょんなことから隣の部屋に住む中学1年の少年 ・ルフィオに惹かれ始めるようになる。

    20代の初め頃、山本文緒さんの小説にはまってけっこう読んで、この小説は本棚から見つけての再読だったのだけど、正直中身はあまり覚えていなかった。
    それなのに今、読み終えて数時間経つというのに、この小説に出てくる汐美とルフィオのことを考えてしまっている。幸せで在ればいいと、まるで実在する人間であるように。
    たまに小説を読むとこういうことがある。しばらくの間、物語の中の人たちに囚われてしまうことが。

    簡単に言うととても面白くて一気に読んだ。そして爽やかに切なくなった。
    強く願っても叶わないことも世の中にはあると、大人になるにつれて知っていく。でも願えば叶うことも確かにある。どちらを信じるか。今のこの思いを、変えずに未来を迎えることは可能なのか。

    暇、というのは時に人間を狂わせる。
    忙しすぎるのも心を殺すけれど、時間が有り余り、何もしたいことがなく、誰にも必要とされない日々に埋もれると、自分が何かを我慢したり何かを欲したりする感覚さえ、無自覚に抑制してしまうものなのかもしれない。
    この物語の主人公・汐美も、気ままに暮らしているつもりでその実淋しさが募っていたはずで、そんな時に出逢ってしまった15歳も年下の少年に必要とされた時、嬉しくて、それがいつしか心の支えになってしまったのも至極当然のことなのかもしれない。

    端から見ると汐美は贅沢なダメ人間にも見えるけれど、誰の心の中にも汐美はいるのだと思う。
    働かなくても夫が充分な額のお金を与えてくれる。仕事や人との関わり合いに生き甲斐を見出すなんて面倒だ。でも誰かに愛されたい。必要とされたい。

    同じマンションに住む人たちとのあれこれも、いかにも女性作家の着眼点で描かれていて、自分だったら面倒だな、と思ったりした。人と程良い距離感で上手く付き合う。そのバランスの難しさ。

    山本文緒さんに再はまりしそうかも。まだ読んだことのない小説も読みたい。
    マイペースなねこ“タビ”の存在もとても良かった。

  • ずっと家にいて、うたた寝して、ゲームして、映画見て、パスタを食べて、またうとうと…
    何てうらやましい生活!お金だって毎月もらえるし。
    と初めは思っていたけど、主人公が息が詰まりそうになって、気がおかしくなっていく途中で、外で目的をもって働いたり勉強したりしてた方が楽しいだ、ということに気がついた。
    私も最近家にこもることが多くなってたから、その気持ちはとてもよく分かる。やっぱり動いて頭使った方が健康にも良いしね!

  • 昔読んでおもしろかった記憶があり、再読。
    主人公の旦那ってこんな奴だったっけ。嫌い。
    主人公をはじめ、登場人物達が病んでる。
    タイトルはロマンチックな感じだが、内容は結構ヘビー。主人公とルフィオの結婚に期待したい。

  • 山本さん大好き〜(^O^)

    ルフィオもダニーも大好き!!
    年齢なんか関係ない。現実から逃げて、見て見ぬ振りしながら三人と一匹で過ごした時間は無駄じゃない。

    私もぐうたらするの止められないから、みんなの気持ちが分かり過ぎる位わかる。もしかして、私も病気?

    終わり方も、そんなに遠くない未来に繋がる可能性を秘めたラスト。
    ルフィオの言葉、信じてるからね!

  • ふとした偶然から隣の家の少年と交流するようになり、何もなく暇だけどそれなりに満足していた毎日が、少しずつ歪んでいく。
    おかしいのは自分か周りか…。
    全体的に見れば、すごいドロドロした話です。
    でも優しい文章にほのぼのした場面もあり、その歪みとのギャップに惹き込まれます。
    ドロドロなんだけど、主人公・汐美ちゃんと少年・ルフィオが可愛くて和む。
    年齢なんて関係ないと思ってるルフィオと、中身子供っぽくてもやっぱり大人な汐美ちゃんの気持ちのすれ違いが切なかったです。

  • 自宅の本棚で見つけて、これ読んだっけ?と再読。
    ルフィオが出てきた時点で、あ!読んだことあるわ。となりました(笑)

    昼ドラ的なドロドロになりかねないストーリーですが
    文章が美しいので世界観も美しい。
    特に汐美とルフィオのセックスのシーンは下品な描写がなく
    でも二人の体温や空気感が伝わってくるようなシーンになっていて
    とても感動しました。

    目を覚ましたルフィオはどんな反応したのだろう…。
    その後の二人を見てみたいですね。

  • 気だるく、アンニュイな空気感が好きで、たまに読みたくなります。
    意外とシビアな内容ですが、タイトルもあいまって、どことなく現実感のないほわほわとしたお話です。

  • 昨日も暇だった。明日もたぶん暇だろう。結婚6年目、専業主婦。子どもはいない。退屈でない暮らしなど、考えただけでゾッとする。多忙な夫は今夜も家に帰らない。この緩やかな生活に、猫と隣家の息子が飛び込んできてから、何かが崩れ始めた。封印したはずの衝動。少年との、二人だけの秘密。嘘は次第に周囲を巻き込んで―。マンション住まいの主婦の平凡な生活が一変する様を、ドラマティックに描いた傑作恋愛長編小説。

  • 静かにでも確実に狂っていってしまう予感が、いつもしていたのかもしれない.

    自由すぎるのも酷なことだと思う.結婚してるのに、ここまで夫の存在が薄い小説は、はじめましてだった.

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著者プロフィール

1987年に『プレミアム・プールの日々』で少女小説家としてデビュー。1992年「パイナップルの彼方」を皮切りに一般の小説へと方向性をシフト。1999年『恋愛中毒』で第20回吉川英治文学新人賞受賞。2001年『プラナリア』で第24回直木賞を受賞。

「2023年 『私たちの金曜日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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