脱獄王 白鳥由栄の証言 (幻冬舎アウトロー文庫 O 34-1)

著者 :
  • 幻冬舎
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784877287528

作品紹介・あらすじ

強盗殺人の罪で投獄された後、四度の脱獄を繰り返した男・白鳥由栄。巧妙かつ大胆なその手口と、最長二年間に及ぶ逃亡生活などを本人の証言を基に克明に記録した衝撃のノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 青森、秋田、網走、札幌、四つの刑務所の脱獄はフィクションかと思うほど。
    2年間に及ぶ山中での逃亡生活。
    そんなこと人間がひとりでできるものなんです
    ただただ驚くし、脱獄の理由や、インタビューによる白鳥由栄自身のリアルな思いが、脱獄という極悪なイメージとは違い、なぜ?という気持ちでいっぱいに。
    窃盗や強盗殺人をしてしまったのはなぜか。
    犯罪への反省や思いを述べているところはあまりなく、生い立ちの経緯、獄中生活と脱獄、逃亡生活、自分の家族への思いばかりで、被害者家族の気持ちを思うと何一つ許せないけれど、最後まで命を全うした生き様と本人と関係者への取材による言葉たちに圧倒されました。

  • 日本脱獄史上その名を誇る、強盗殺人犯・白鳥由栄の生涯。白鳥は神業的な発想と手口で網走刑務所をはじめとした4度の脱獄に成功した。そのどれもが、刑務所の不当な処遇、非情な看守への抵抗によることが動機となったが、最後は理解ある所長、看守たちに恵まれ、府中刑務所から仮釈放となり、娑婆に出て病院のベッドで70才の生涯を閉じた。
    本書は、脱獄の奇想天外な鮮やかな手口と、白鳥の人間的な魅力に迫り、なぜ脱獄をしなければならなかったか、というテーマと追いつめられた犯罪者の心理を存命中の白鳥本人へのルポを交え、克明に描き出している。ずっと以前、この白鳥をモデルとした吉村昭『破獄』を読んだが、小説よりも、本書のようなノンフィクションの方が読み応えがあることを感じる。

  • 4度刑務所から脱獄した白鳥由栄の足取りをまとめたもの。ゴールデンカムイの登場キャラの元ネタの人だったかなと思い読んでみた。裏付けをしっかり取った内容と思われ、当時の新聞や刑務所の情報を芯にして、白鳥や刑務官の証言が足りない情報を埋めていく。逃げた側とそれを阻止しようとした側の話がどちらも載っているわけで、これは面白くならないわけがない。
    全編を通して、筆者が白鳥を訪ねたとき、白鳥はきっと嬉しかったんだろうなと思った。だからこんな喋っちゃったんだろうね。

  • 何回も脱獄した白鳥氏に迫ったドキュメントだが、作家の「書くからにはすごい人でないと」といった気持が逸ったものになっている気がする。

  • 以下に、強盗殺人犯、白鳥由栄のルポについての感想を書きますが、犯罪者の人権については個人としては考え中で、山口県光市、千葉県の英語教師殺害の裁判の被告の犯行理由などの証言には、うんざりしており、以下の文章が犯罪者を肯定するものではないと思ってもらえればと思います。

    「脱獄王 白鳥由栄の証言」
    著 斎藤充功
    幻冬舎アウトロー文庫

    夭逝した美人シンガーソングライターbiceの次に取り上げるのが、生涯4回脱獄した強盗殺人犯、白鳥由栄のルポタージュというのが、バラバラな感じなんだが、まあ、色々な事に興味あるんです。
    ルポタージュ、つまりは、小説とかではない、実在した脱獄を4回成功させた男、白鳥由栄。作者の斎藤充功が粘り強い調査で、出所後の白鳥を探しだし、白鳥の証言と、刑務所の所長や看守などの証言を基に、白鳥の人生の軌跡を記したルポタージュだ。

    この本を手に取ったきっかけは、俺が好きな作家の見沢知廉(この人も殺人で服役した後、作家になった)が解説を書いていた所が大きいが、「脱獄?どんなだろう?」と、不謹慎にもその手口とかを知りたかった(別に犯罪を犯す予定などはありません)。

    確かに脱獄について語られる箇所は、読んでいてスリリングだ。その手口をざっと説明すると、

    汚物を便捨て場に棄てに行った際に、看守の目を誤魔化して、針金を拾い、改造して、鍵を作って脱走。

    拾ったブリキ片を拾った釘で加工して、ノコギリにし、天窓の枠を少しずつ、3ヶ月懸けて外して脱走。

    食事の際の味噌汁を看守の目を盗み、視察口の鉄枠にかけて、鉄枠を錆びさせて外す。

    書いていて大分はしょったから、なんだか簡単に思えるかもしれないが、読んでいて、「マジかよ」と、白鳥の大胆さと、忍耐強さと目の付け所に感心してしまった。

    4回もの脱獄を成功させた白鳥は、体も常人とはケタ外れで、肩、手足、腰、脚部の関節を自由に脱臼できたり、60キロの米俵を両手に一俵ずつ持てたりとパワーも柔軟性も兼ね備ているのだ。

    で、白鳥の脱獄の哲学も面白い。

    「人が作った物は、必ず壊せる」
    「世話になった看守が当番の時は、実行しない」
    うーん、なんかプロフェッショナルな感じすらしてくる。

    しかし、俺は本を読み進めるうちにじんわり来たのは、強盗殺人犯の白鳥が改心していく様だった。

    白鳥は、死刑、無期懲役などの刑を受けながらも、最終的には、模範囚として出獄した。彼が模範囚になったのは、最後に服役した刑務所の所長が、脱獄を繰り返す白鳥に対し、手枷、足枷を外して、独房に閉じ込めるだけではなく、労働もさせ、と特別扱いしなかった事が彼を更生させたのだ。

    また、受刑者を慰問する団体から小鳥をプレゼントされ、白鳥は喜び、その小鳥を大事に育てていたがある日、「いくら大事に飼っていても、カゴの鳥は所詮、カゴの鳥で自由がない。自分も鉄格子の独房に入れられたカゴの鳥で、毎日、小鳥を見ているとやりきれなくなる。せめて、小鳥だけでも自分の心ん託して自由な大空に逃がしてやりたい」。鳥を逃がす事を許され、運動場から鳥を放った際、白鳥は小鳥が見えなくなるまで、その場を離れず、目を真っ赤にしていたという。

    新人の看守に
    「担当さん、俺たち懲役は情にモロイんだ。懲役は、懲役を理解してくれる看守になら、厳しくされても親しみを持つんだ。担当さんも、懲役に信頼される看守になりなさるんだな」
    と、アドバイス。

    白鳥の人間性になんだかやりきれなくなる。白鳥の証言を読んでいても、語り口調が、頭の回転は早いけどぶっきらぼうで口下手な下町の職人さんみたいで親しみが湧いてくる。白鳥は、若き日にバクチにはまり、身を崩し犯罪を犯した。しかし、刑務所関係者、刑事などを含め、皆が口を揃えて、「律儀な男だ」と証言している。人間って、ホント、どう転ぶかわからない。

    白鳥は、服役後は、真面目に肉体労働に従事し、71才で生涯を閉じる。

    服役後、近所に住んでいた女の子が当時の白鳥をこう語っている。
    「当時、わたしは五歳でしたから、あまり覚えていないんですが、白鳥さんのことをおじさん、おじさんといって慕っていたことは覚えているんです。お菓子やお人形をよく買ってくれて、お小遣いももらったことがあるんです。やさしいおじさんという印象なんですが、一度、お金で遊んでいるところを見られ、そのときは、お金を大事にしない子供はおじさん嫌いだと怒ったんです。その時はビックリしましたが、白鳥さんは物をすごく大切にする人だという印象が、今でも残っているんですね。ところが、自分の子供みたいに可愛がってくれた白鳥さんが、なにもいわないでアパートを出ていってしまって・・・。それ以来二十数年、再会の機会はありませんでした」

    白鳥は死後、遺骨の引き取り手がなく無縁仏になる所だったが、この取材がきっかけで、成人した女の子が「昔、白鳥さんにはいろいろとお世話になりまして・・・。」「遺骨の引取手がなければ是非、私共のお墓に白鳥さんを埋葬させて下さい」と寺に申し入れ、白鳥の遺骨を引き取ったという。

    白鳥がただのやさしいおじさんだけでは、なかった事を承知での、この行動。「立派」とか、そんな事は、言いたくない。ただ、白鳥と女の子の心の通い合う様がちょっとキた。
    子供の頃に読んだ「ああ無情」を思い出した。

    人間、生まれ変わる事なんてないかもしれないが、白鳥由栄は、生まれ変わったら、真っ当に生きて欲しいな、と偉そうかもしれんが、そう思った。

  • 図書館から借りました

     ノンフィクション。
     「白鳥由栄(しらとり よしえ)」という男の物語。

     人を殺して掴まった、豆腐屋と蔵破りをしていた男、白鳥。
     彼は何度も脱獄する。
     刑務所の中のことや、逃げたときの心情など。
     緻密な計画を立ててことをする白鳥は記憶力もよく、何十年も前のことを、記者(著者)に語る。
     

     テレビで取り上げられることもあるから、知っている人も多いだろう。
     四回の脱獄。
     逃亡生活の、なんともたくましい。山の中で、ほぼ自給自足。それも、北海道の山の中で、冬を越してのける。
     掴まるときは、ほとんど自分から。

  • 100805(m 101024)

  • 出版社/著者からの内容紹介
    強盗殺人の罪で投獄された後、四度の脱獄を繰り返した男・白鳥由栄。巧妙かつ大胆なその手口と、最長二年間に及ぶ逃亡生活などを本人の証言を基に克明に記録した衝撃のノンフィクション。


  • かなり昔の人ですけど、とても有名な脱獄王の白鳥由栄の証言を基にした脱獄記録です。
    刑務所の日常から脱獄の方法、逃亡生活まで詳しく描かれています。脱獄日記みたいです。
    今とは時代が違うことを差し引いても、彼の大胆かつ巧妙な手口はまさにエンタメ!

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著者プロフィール

斎藤充功(さいとう・みちのり) 1941年東京市生まれ。ノンフィクション作家。東北大学工学部中退。陸軍中野学校に関連する著者が8冊。共著を含めて50冊のノンフィクションを刊行。近著に『陸軍中野学校全史』(論創社)。現在も現役で取材現場を飛び回っている。

「2023年 『日本の脱獄王 白鳥由栄の生涯』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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