- Amazon.co.jp ・本 (166ページ)
- / ISBN・EAN: 9784877288600
感想・レビュー・書評
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シリーズ最終巻。このあと著者は雑誌『SAPIO』(小学館)に舞台を移し、「新・ゴーマニズム宣言」と題して連載をつづけることになります。
浅羽通明との対談では、共産主義の到来を信じる従来の左翼に代わって、70年代以降近代合理主義に対する懐疑がひろまったという浅羽の意見が紹介されています。また社会学者の橋爪大三郎との対話では、近年になって人間の「知識」がうしなわれ「情報」に置き換わっているという問題が指摘されています。これらの意見を受けつつ、著者は価値相対主義の蔓延によって若者がオウム真理教のようなカルト宗教に染まる傾向が生じていると断じて、父性の復権をとなえます。
最後は、「ゴーマニズム宣言」を連載している雑誌『SPA!』(幻冬舎)の価値相対主義的な編集方針に対する著者の不信感が高まって、連載終了という結末を迎えることになるてんまつがえがかれています。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『ゴー宣』最終巻。
それは終結と新たなムーヴメントの始まりを暗示している。
終結、それは当初各方面の時事を扱ってきた『ゴー宣』が部落差別へとテーマを収束し、そしてオウム真理教との闘争の顛末である。
始まり、それは薬害エイズ問題との新たなる失望へのスタートに見え、哀しい。
最終的に『ゴー宣』はメディアの中の商業主義と反権威主義という理想との軋轢の中で自己矛盾による苦痛に耐え切れず自ら身を引く。
この潔さは果たして“勝利”なのか?
それは小林氏の『新ゴー宣』シリーズの隆盛を見れば一目瞭然だろう。