日々ごはん 10

著者 :
  • アノニマ・スタジオ
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本棚登録 : 200
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784877586638

作品紹介・あらすじ

若い友人たちの結婚にしあわせをわけてもらう、秋から冬への日々。はじめての仕事が、暮らしに小さな変化をもたらした冬から春への日々。毎日の出来事を深呼吸するように味わい描く、日記エッセイ第10弾。2006年9月〜2007年2月。「おまけレシピ」つき。

感想・レビュー・書評

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  • さいきんすこしペースが落ちてきました。
    高山なおみさんのエッセイ。
    そろそろとまろうかな。。と思えど、あとすこし、と思うと読んでしまいます。

    本からの抜粋。

    ヨガをやっていると、毎朝の気分や体調のことが、細かいところまで分かるような気がする。無理しなくても頑張ってやれる日とか、無理に頑張らなければできない日とか、それさえも億劫な日とか。今朝は、あんまり調子がいい方ではないみたい。

    パソコンをやりながらふと空を見上げると、まんべんなく鱗雲が広がっている。こんな爽やかな秋の日が、暮れていくのがもったいない。そうやって、今日も一日終わってゆくことが、最近、儚いような胸苦しいような気分になる。それは、早起きするようになったことと関係があるかもしれない。たくさん寝ていたころは、夢ばかりみていたから、現実の割合が少なかった。起きている時でも夢を引きずっていたから、なんとなしに宙ぶらりんな感じだった。現実は、ちっとも永遠なんかじゃなくて、儚い。ヨガを始めたことも、早寝早起きになったことも、私の脳みそに何か化学反応を起こしているのだろう。そして私は、本をあまり読まなくもなっている。現実を味わうのが忙しいからか?

    チアキって、あんまり喋らないんだけど、何か言う時には、すごく言葉を選んでいるんだなというのが分かる。低い声で、ボソボソ切れ切れに喋る。スイセイはそんなチアキをすぐ気に入ったらしく、ものすごい早いピッチで飲んで、どんどんご機嫌に酔っぱらっていった。

    帰ってから、「なんか、捨て猫がうちに迷い込んできたみたいな一週間じゃったのう。はよう風呂に入れてやらんと、みたいな。チアキってすごい口べたじゃけど、情がいっぱい詰まったような娘じゃったのう」などと、しみじみつぶやいていた。

    体を動かすのって、何かのスイッチを入れるような感じだな。川原さんは、何もやりたくない日が続いた時、ごはんも食べず、テレビも見ないで、どれくらい何もやらずに寝ていられるかという実験をやったことがあるらしい。「けっきょくね、体を動かさないと、どんどん具合が悪くなっていくことが分かった」と、この間言っていた。体って、動かしてやらないと、筋肉も内臓の機能も退化していくように出来ているっていうのを、実感で感じたそうだ。

    フィッシュマンズ全書
    「昔から静けさってのが自分の中にあって、日々感じる空気感みたいな感じの中に果てしない静けさってのがぜったいあるんだけど、そういうことをやりたい。だから、音はどんなにうるさくてもいいんだけど、その中に静かななにかが聞こえるっていうか、感じられるものですかね」
    「歌詞はいつもサラサラッと書くことにしてる。サラッと書いてあんまり見直したりしない。自分がすごく馬鹿でダサくて無力な、社会のクズみたいな気分で、とっても謙虚な気分で書くことにしてる。そうやって誰にも見つからないような歌詞を書くのが好き。もうどうだっていいようなこと、紙くずみたいなもん。それを何年もやるのがいい。この曲(BABYBLUE)もそう、もうずーっとおなじ感じです。」

    自然派志向みたいな風に私はよく思われているみたいだけど、私、パンクだし。そういう意味の自然が、「フィッシュマンズ」の音楽には混ざっていると思う。人間が到底つかまえられないもの。身をまかせるしかない、考えても仕方ないようなもの。

    私の好きな人って、こういうことが共通だ。どんな理由があっても、いばったり、権力をふりかざしたり、大声で怒鳴ったりする人が世の中でいちばん苦手。

    中には、大人でも平気なふりができない人がいる。器用そうになんでもすぐに覚え、いつも明るい顔をしている人のことよりも、じつはそっちの方が私は信頼できる。初対面の時、人のそういうところを見て、好きになったりしているような気がする。

    ちよじとヤーノ。
    ビールを飲みつつ、もう何しゃべったか忘れたくらいにとりとめなく、ぬるい風呂につかったような、あんかけな時間が過ぎてった。かれらとは、そういうイケイケじゃない、楽なあいだだ。

    映画 ブエノスアイレス
    やっぱりウォン・カーウァイはいいな。
    私はウィンのどうしようもないところが、切なくて、情けなくて、セクシーでたまらなく好きなので、ラストがどうもピンとこないけど。アパートの共同のキッチンで、ふたりが抱き合って踊るシーンがとにかく好き。あそこだけ何度でも見たいくらい。ウィンがひとりで泣くところとか、タクシーの中でファイの肩に頭をのせるところも、美しく、儚く、哀しく、とても情けない。お金もないし、汚いアパートだし、ノミはいるし。だから、あの退廃の中に浮かんでいる、カスみたいな幸せにしがみついてドロドロに落ちぶれたまま、ロマンチックに終わってほしかった。

    家守綺評
    登場するのは、庭の植物や、花、森、犬、たぬき、河童、人魚、幽霊、山寺の和尚、隣の奥さんなどなど。生きている人も死んでいる人も、植物も動物も、みんな主人公と同じ空気の中に暮らしていて、言葉だけではないやりとりをしながら、ひょうひょうと当たり前のように生きている様子がいい。これこそ超現実!っていう感じ。

  • 2015/09/12 再読

    スイセイさん登場。なかなかの文センスにびっくりするの巻。CMの仕事で中国に行ったりなんやかんやと忙しそうです。読んでいると、眠気を誘われます《退屈とか面白くないではなく》寝てしまいました(笑)

  • 130704*読了

    初の日々ごはん。
    いいなぁ。他人の日記であり、ごはん記録なのに、こんなにもおもしろいと思えるなんて。
    高山さんの日々(それもリアルタイムじゃなく過去から見る日々)にもぐりこんで、一緒に体験しているような気になる。
    毎日のごはんに、お腹が空いてくるのはもちろんのこと、やる気みなぎっている日だったり、何にもしたくない日だったり、気分の波をそのまま日記でも伝えてくれるところに、親近感を感じる。
    周りの人たちのあたたかさも、すてき。

  • 飾らないことばで語られる日々のこと。作者の誠実な人柄がよく分かる。

  • 自分にとっての一気に読んでしまうのがもったいない本の中の一冊。ゆっくり読んでいろんなことを考えたい本でもあります。いろんなことを考えたり見たり感じたりしながらゆっくり生きていきたくなる。文字だけの料理(セロリの葉と春菊のおひたしとか)どんな料理か想像するのも楽しみです。

  • 高山なおみさんの日記シリーズ。私はさかのぼって読んでいます。どの本もていねいに書かれているのだけれど、この本はなんだかとても好きです。

  • 音楽のつつましい願いと今日の漬け物読んで、みたいな。

  • 料理研究家高山なおみさんの日々を綴ったものです。一巻から読み進めてますが、ここにきて朝ごはんを食べるようで、なんだか安心(?)しました。
    相変わらず、日々ちょっとした想いや空気を、さらっと文章に織り込んでる辺り、秀逸です。

  • 高山なおみさんの文章は読んでいてほっこりします。旦那さんのスイセイさんの一言がすごくいい味だしていると思います。広島弁いいなぁって思っちゃいます。

  • 感想は8と同じ。
    全てがよい。高山さんの語り口調も、どんどん自分らしさが出てきている。

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著者プロフィール

1958 年静岡県生まれ。料理家、文筆家。レストランのシェフを経て、料理家になる。におい、味わい、手ざわり、色、音、日々五感を開いて食材との対話を重ね、生み出されるシンプルで力強い料理は、作ること、食べることの楽しさを素直に思い出させてくれる。また、料理と同じく、からだの実感に裏打ちされた文章への評価も高い。著書は、経験や体験に裏打ちされた料理書や料理エッセイのみならず紀行記や日記、絵本など多数。

「2023年 『帰ってきた日々ごはん13』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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