密告

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制作 : 白井 成雄 
  • 作品社 (2000年9月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784878933608

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密告の感想・レビュー・書評

  • 伝記作家の男は、文書館でヴィシー政権下の密告等の書類を探していたところ、自分の親族がアウシュビッツに追いやられるきっかけとなった密告の手紙を発見してしまう。その手紙は、親族が営む店の向かいの花屋、当時から今にいたるお得意さんの女性が書いたものだった。作家は、彼女を追いつめ、密告の手紙を書いた理由を、執拗に問いつめるが……。

    戦争をめぐる、善と悪の複雑な関係。過去を「知る」ことの難しさ。
    では、「戦後生まれのあなたには、戦争中のことは分かるまい。なぜ過去は過去のものとしてそっとしておけないのか?」という、先人たちの言葉に従えば良いのか?「そっとしておく」ことで、表面上は平穏が維持されているように見えるが、当事者(特に花屋の女性)は、本当に幸せに暮らしていたといえるのか?という問題。考えさせられる。鏡を見ないというメタファーなど。

    小説だが、実際に作家自身が自分の一族とかかわりある密告の文書を見つけたという事実があるとのことで、どこまでが小説で、どこからが事実なのかが判然としない。ミステリーを読んでいるような思いがする。

    そして、読み終えて、対独協力者への制裁、しばしば写真で見るのは、若い女性の姿ばかりだが、男性の対独協力者はどうなったのだろう?そのジェンダーによる相違はどのようなものだったのか?

  • 救いやハッピーエンドなどない。全ては己の中でこの事実に終止符をつけるしかない。

    ナチスの時代にユダヤ人を密告したとあるフランス女性の手紙を偶然発見した主人公。
    その密告されたユダヤ人は自分の親族だった。
    そして密告したフランス女性は…。

    というのが物語の筋書きです。
    この密告の手紙は著者が実際に見つけた事実の話である。
    その事実とフィクションを織り混ぜたこの小説は少し空想がかっていて、読んでいる途中に執拗で陰険だと感じてしまった。
    真の意味で何も解決されない。
    そして誰も救われない。

    この物語の主人公はフィクションでありながらも著者の変わりを務めている。
    だからかフィクションでも主人公の感情=著者でそのままの感情をぶつけているように感じる。
    これが…凄く陰湿であって読んでいて公私混同過ぎないか?と疑問に感じる部分もあった。
    人は復讐に燃えたり自分が被害者だと自分自身を正当化しようとすると、こんなに醜い者に成り下がるのかと見せつけれられた。
    もちろん終盤ではその心に気付き反省する主人公(=著者)であるが…。
    凄く彼の感情と著者の感情が被るので憎しみも心の解放も二重になる。

    この物語は…先ほども述べたように登場人物は皆「誰も救われない。」
    ユダヤ人やフランス人など関係なく…全ての人が戦争の被害者であり、誰が悪いのかだと責め立てる決定的な要因は見つけにくい。
    誰か1人を悪だと決めつけて皆で責め立てれば楽になる。…そんな結末をこの物語ではしなかった。
    ある意味正しい導き方の物語であり、そして粗捜しをしても決して誰も救われないのだと訴えていること。
    それが読んで伝わってきた印象です。

  • ある日偶然、著者は、
    自分の親戚一家をアウシュヴィッツに送り込んだ
    「密告」の手紙を発見した。
    それを書いたのは、近所の人のよい老婦人だった…。
    真実を追い求め世界で高い評価を得ている伝記作家が、
    ノンフィクションとしては書けない事実にぶつかってしまった。
    そして、初めて小説として書き上げたのが本書である。
    舞台は、パリ15区の一角。
    1軒の商店と1軒のビストロ、
    そして教会と1台のバスの中だけ。
    彼の追及は、占領下パリの「亡霊」を呼び起こし、
    平安に暮らす人々の過去の傷口をえぐりだしてゆく…。
    誰も書けなかった、ナチ占領下のパリの闇。
    『朗読者』とともに各国で話題騒然のモデル小説。

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