〈徹底討論〉グロ-バリゼ-ション賛成/反対

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  • Amazon.co.jp ・本 (157ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784878935213

作品紹介・あらすじ

いま世界は、WTO・多国籍企業などが推進する「グローバリゼーション」と、国際的NGOによる「反グローバリゼーション」の世界的市民運動とのせめぎあいに揺れ動いている。では、グローバリゼーションとは何か?なぜ必要なのか?または何が問題なのか?本書は、このグローバリゼーションの是非・功罪について、推進派/反対派の代表的論者が直接対決し、その定義から争点までを徹底討論したものである。この一冊に、グローバリゼーションを考えるためのすべての論点が収められている。

感想・レビュー・書評

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  • 世界経済の中における社会運動の役割は重要。組織なくしては、抗議は起こったりしない。
    社会的次元で起きていることは、階級関係と権力関係の結果。
    NGOの役割が大きくなり、1999年12月のシアトルにおける反WTOのデモ以降に注目されるようになった。
    サッチャーが、オルタナティブはない、といった。すなわちオルタナティブなんていくつでも存在するのだ。

  • グローバリゼーションに関する賛成派、反対派のそれぞれ第一人者による一対一の論戦を収録。話があちこちに飛んでいるが、それぞれの主張を理解するうえで有用。

  • 安田読みました。

  • はっきりいって2人の論者の主張はかみ合っていない。スーザン氏の論理に対してマーティン氏が論点をずらして交わしているというしかなかった。おそらく考えられる理由として、マーティン氏は心のどこかでスーザン氏の反論の正当性を認めていながら、それでもグローバリゼーションが良いであることを強調せざるを得なかったことがあげられよう。つまり、今進行しているグローバリゼーション(本にのっとって限定すれば新自由主義的グローバリゼーション)がマーティン氏のような人間に莫大な利益をもたらしているから、その影の部分に目をつぶってでも現状のままを擁護することが第一義となっている、ということである。ならば、いったい何がこのような支配構造―言い換えれば、現行のグローバリゼーションを動かす中心となっている者がそうでない者を従わせている構造―を成り立たせているのだろうか?今回のレポートではこのことを中心に論じてみたい。
    この支配構造を理解するためにまず必要なことが、誰が利益を得、誰が不利益を得ていて、誰が誰を支配しているのかといったことを明確にすることである。本書に沿って考えれば、利益を得ている者は多国籍企業や(低価格を追求する)消費者ということができよう。WTOやIMFが利益を得ている者としなかった理由は、それらの組織の単位が国家名目の、実際には多国籍企業が牛耳っていると考えるからだ。つまり、結局は多国籍企業がこれらの組織をうまく利用して利益を獲得していると考えるからである。
    一方で不利益を被っているのが労働者や貧困状態にある者、とくに多国籍企業のために悪条件のもとで働かされている途上国の労働者と考えられる。つまり、「多国籍企業や消費者」が「労働者や貧困状態にある者」を支配しているということである。
    構造における主人公がわかったところで、さっそくこの支配構造を支えているものに目を移してみたいと思う。ここで面白い例をひとつ挙げてみたい。ドイツの例であるが、ドイツの産業構造において労働組合が強い力をもっていることはよく知られている。それがドイツ国内の失業率の増加を促す一因にもなっている。いっけん矛盾する話であるかのように見えるが、やや単純化している部分もあるが基本的に実際起こっていることは次のようである。労働組合が強力であるがゆえに多国籍企業はドイツ国内に工場を持とうとしない。なぜならば多国籍企業が儲けでよく使われる手が労働搾取であるからだ。低賃金で長時間働かせることによって多国籍企業は巨大な儲けを手に入れるのであるが、労働組合はこれに抵抗するためのものでもある。労働組合の強いドイツでは多国籍企業は簡単に儲かることができない。一方で、ドイツ以外のEU圏ではそれが簡単にできる。低賃金、少なくともドイツ国内よりも低い賃金でも労働者が集まってくる。従って多国籍企業はそのような国―たとえばポーランドやハンガリー、チェコといった東欧諸国―に工場拠点を移すようになる。これがドイツ国内の失業率増大を促進させている一因でもあるが、翻せば労働組合の力の弱いところ、あるいはその力を弱体化させることによって多国籍企業は莫大な儲けを手に入れることができるのだ。言い換えれば、労働者の抵抗運動が弱まれば弱まるほど多国籍企業の行動がたやすくなくということである。
    では、ここでの問題とは何なのか?私はこのような多国籍企業にある莫大な経済力がそれが政策決定において絶大な権力となっていること、しかもその力が大きいがゆえにそれを牽制できるものはないし、牽制させないような仕組みを作り出すことに問題があると思う。一言で言えば、多国籍企業は歯止めの利かない権力をふるまい、その権力のもとが強大な経済力である、ということだ。そして今ここで述べたことがこのレポートのはじめで提起した問題(新自由主義的グローバリゼーションにおいて支配構造を成り立たせているものとはなにか?)への答えでもある。

    ところで、このように暴走する多国籍企業を止めることはもはやできなくなっているのだろうか?答えを先に言えば「ノー」であろう。ATTACやその他の反対論者の団結力によって、多国籍企業はもはやそれらの市民団体を無視することができなくなっている。牽引といえるほどの牽引ではないが、シアトルでの出来事やその後の市民団体の動き等を考えてみれば、少しずつではあるものの多国籍企業に対抗する「カウンターパートナー」ができ始めている。これらの「カウンターパートナー」を支援することによって、多国籍企業の暴走をちょっとずつ止めていくことができるようになるだろう。面白いことに、それを可能にしているのも、グローバリゼーションが進行している現代だからだ。

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