さびしい宝石

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制作 : Patrick Modiano  白井 成雄 
  • 作品社 (2004年3月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (178ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784878935947

さびしい宝石の感想・レビュー・書評

  • とても寂しい
    人は沢山いるのに,ひとりのような気がする

  • 1941年。パリの訪ね人
    にも通じるが、
    一人の人間が残す、消せない痕跡。余韻。
    それを追う者が、感じる確かな存在、
    虚無感、、
    見つけられないのに、自分自身が確かな証拠として、そこに存在してしまっていること…

    どこまでもそれを追求し続ける、モディアノ。

  • 深い孤独感と喪失感に包まれた作品。

  • ミニマリズムのエステティック。孤独。「永遠のくりかえし」を描く。悲壮感と喪失感。2014ノーベル文学賞:パトリック・モディアノ。



    パリという都市に住むから孤独になる。いや、孤独な生き方しか知らない人間だから、都市でしか生きられない。そんな孤独な女性、いや、女性というには未熟な、テレーズの、アイデンティティを求める物語。



     教育の失敗のお手本。そんな本。


     子供時代に、孤独ゆえにちゃんと子供ができなかったから、体は成人しても、大人になれない人間。

     しかし、そういう人間は同じような人間を再生産してしまう。そんな永遠のくりかえし。

     

  • 謎が多い。
    住所不定無職に限りなく近い浮浪生活でありながら、若く魅力的なパリジェンヌらしき主人公は何者なのか。主人公が偶然見かけて後をつける死んだはずの母親、彼女の正体も謎だ。善意の登場人物も、「どうして」や「あなたなは何者」という読む側の問いには答えてくれない。謎解きが魅力の物語ではない。というのは、最後までそれらの謎は謎のまま放って置かれる。だが、その放って置かれ感が、なんともいい余韻として残る。名文体であると思う。

    パトリック・モディアノは2014年11月にノーベル文学賞の受賞者として知られるまで、わが国ではほとんど読まれていなかったのではなかろうか。今俄かに日本語訳でこの『さびしい宝石』を読んだ私のような読者にとっては、謎が謎のまま漂うような物語として読むことができる、それだけでも高い芸術性を備えた文体だと思う。事実、矢継ぎ早にモディアノ作品を読み漁っている私は、謎の物語として読み、感銘を受けた。

    しかし、巻末の訳者解説を読み、たまたま自称「無類のパリWalker」である自分がパリの街をうろついていて見聞きした雑学を駆使すると全く違う物語の構図が見えてくる。その構図は、1区から20区までの地理だとか地下鉄路線図や、ドイツ占領時代の歴史のあらましなどが一通りは頭に入っているフランスの読書人層から見たらこう見えるはず、というものかもしれない。また、それはノーベル賞の選評が「記憶の芸術」と称賛した『1941年。パリの尋ね人』と対を成す一冊であることも見えてくる。人々の記憶から消えつつある占領下のユダヤ人の悲劇と作家自身の出自とを、事実に基づく完全なノンフィクションという小説としては異端的手法で綴った『1941年』に対し、完全なる虚構の物語という正統的小説の手法でもって、いうなればユダヤ人とは真反対の立場の人々の身の上に起こった悲劇と、後の何十年も消えることのない傷とを描いているのだ。

    欧州写真美術館はマレ地区にある。私は後で調べてみるまでそこを「欧州戦争写真美術館」というものだと勘違いしていた。高級でも有名でもない普通のパリの街らしいそのあたりをうろついていて、「なんとかフォトグラフィエなになに」と記されたその美術館を偶然見かけ入ってみた。著名な戦場カメラマンたちが撮った戦争の記録写真ばかりが展示されていた。フランス語が全く不得手な私は、その展示が常設のものなのか一定期間だけの企画展示なのかは判らなかった。ただ、画像の示す意味や衝撃はすぐに伝わった。しかも、どの写真も「ああこれは」とどこかで一度は見たことのある「記憶にある一枚」ばかりだ。

    ハンガリーで撮られた一枚では、逆さづりの遺体を群衆がなおも鞭打っている。大勢が歓声を挙げている。
    1944年にパリで写された一枚では、頭を丸刈りに刈られた若い母親が赤ん坊を抱きながら歩いている。群衆がそれを取り囲んで口々に罵声を浴びせている。ロバート・キャパがパリ解放直後に撮ったあまりにも有名な一枚だ。キャパの写真はいつも「人間」を捕えている。私は、時にはやらせもやったり、女が好きで女にももてて、男優を目指したりというあまりに人間臭いこの写真家が好きだ。彼の写真を見ると、いつもこの男のヒューマンな叫びが聞こえる気がしてしまう。その時も、
    「敵を愛してはいけないのか。この赤子に罪はあるのか」
    そんなキャパの声を確かに聴いた。

    ニシム・ド・カモンド美術館は、8区の高級住宅街にある。パリには貴族や大富豪の邸宅とコレクションが一般に公開されているような小さな美術館があちこちにある。ここもその一つだ。元邸宅だから、富豪たちが日常暮らしていた居間や寝室や厨房なんかも覗けてしまうのも魅力で、ここではずらりと並んだ銅鍋の赤銅色が見事だった。ただ、ここの元のオーナーはユダヤ人の銀行家だ... 続きを読む

  • 全く個人的な感想で、単なる覚え書きである。いつものモディアノ調なのだが、主人公が19歳の女性というのが、勝手がちがった。着なれない洋服を着込んだようで居心地が悪い。読者が若い女性なら溶け込めるのかもしれない。長い間本を読んできていながら、いまだに主人公に感情移入して読んでしまう未熟な読者の方に問題があるのであって、作家の責任ではない。もしかしたら、パトリック・モディアノには必要以上に感情移入させられるのかもしれない。

  • (2014.11.14読了)(2014.11.13借入)
    【ノーベル文学賞】2014年
    地元の図書館には、昨年のノーベル文学賞受賞者のアリス・マンローの作品は、一冊しかありませんでした。ところが、今年のパトリック・モディアノの作品は、三冊もありました。この本がその三冊目です。とりあえず三冊読めば、いいかなと思います。
    「暗いブティック通り」は、記憶を失った自分の過去を探す話でしたが、この本は、自分を叔父さんに預けて、いなくなってしまった母親探しの話です。
    主人公は、19歳のテレーズという女性。題名は、母親が、テレーズを「かわいい宝石」と呼んでいたということから採られています。日本語の題名は本の内容に合わせて少し変えてあります。
    母親がいなくなったのは、12年前ということなので、7歳のときということでしょう。
    地下鉄の駅で、ママンによく似た人を見かけた場面から物語は始まります。
    ママンをつけて行き、行きつけの店とか、住んでるところとか、何と名乗っているかとか、少しずつ分かってきますが、ママンに直接、自分の母親であることを確認することはしません。
    アルバイトをしながらの独り暮らし。不安な心は、図書館で知り合った男性(モロー=バドマエフ)や介抱してくれた女性(薬局の女性)に委ねられますが、解消されそうもありません。
    現代の都市生活の不安が、じょうずに描かれた作品といえるかもしれません。
    訳者あとがきには、
    「本作品の主人公、十九歳のテレーズの不安定な心理は、モディアノが「青春期の不安は普遍的なものである」と語っているように、多くの若い人々の心理にも広く通じるものとなり、ひいては「人間的情愛」が欠落した現代社会の多くの人々の、もろくもあやうい心のありようともこだましあうのではないかと思われる。」(167頁)
    と書いてあります。

    ●駅(74頁)
    駅の近くに住むと、人生は百八十度変わるから。誰でも渡り鳥のような気分になってしまう。
    駅のまわりは未来に開かれている。

    ☆関連図書(既読)
    「暗いブティック通り」パトリック・モディアノ著・平岡篤頼訳、講談社、1979.11.09
    「1941年。パリの尋ね人」パトリック・モディアノ著・白井成雄訳、作品社、1998.07.30
    (2014年11月20日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    なにがほしいのか、わからない。なぜ生きるのか、わからない。孤独でこわがりの、19才のテレーズ―。ある日、死んだはずのママンとそっくりの女性を見かける。気まぐれで、うわべを飾りたて、神経質だったママン…。テレーズは、ママンのほんとうの人生を探すことで、自分を見つけようとする。でも、ママンが話していた経歴は、みんな嘘だった。探すほどにわからなくなる真実、深くなる謎。たったひとつの手がかりは、ママンが残していったビスケット缶の中のセピア色の写真と手帳…。

  • ネットでニュース見てたら、モディアノがノーベル文学賞だって。
    そのまま、ネットで図書館に何冊もまとめて予約した。
    一般には知られていない作家みたいで、翌日にはもうドドドッと届いた。
    何冊も借りて帰って、読んでみる。
    おもしろいの?これ?
    なんか、どれも、似たような話。
    ユダヤ系みたい。父親との関係で悩んでる人なの?
    どれも、最後まで読み通せない。

    でも、『さびしい宝石』だけは、内容が簡単でイッキに読めた。
    文体が可愛い。
    パリの風景が思い浮かぶ。

    でもなー、そんなにたいそうな作家なのかなー?

  • "Petite Bijou"という言葉が、文中では「かわいい宝石」、タイトルでは「かなしい宝石」と訳されています。
    ママン=母親が「わたし」をそう呼んでいました。

    19歳の「わたし」(テレーズ)は、幼い頃モロッコで亡くなったはずのママンそっくりの女性を街でみかけました。そのあとを追わずにはいられません。

    「わたし」の手元にあるママンの手がかりは古い写真、手帳、そして断片的な孤独の記憶だけ。
    今でも孤独に苛なまれます。

    人々との接触の折にふれ、テレーズが語る回想とともに孤独を生んだ背景が明かに。

    ラジオ番組の翻訳をする青年の気軽な誘いや、薬局の女性の気づかいに、テレーズは心を開くか迷います。
    過去の体験から彼女は失望を恐れて未来に期待しません。

      この人になら・・・・・・

    誰かに期待したくなることがあっても当然です。

    "Petite Bijou"

    宝石が輝くにはさしこむ光が必要です。
    まだ輝きを知らないこの宝石は光を得られるのでしょうか。

  • 中学生くらいの時に読んでドはまりしてそれから何度となく読み返してます。親の愛情を受けることができなかった少女が母親の影を探してパリをさまよう話。
    「どんな未来だってあるんだ」と言い聞かせながら、最後に自分の来た道を振りかえろうとするテレーズに差し伸べられる優しさが暗い物語にほのかな光を与えています。
    個人的には毒親との関係に悩む人に力いっぱいおすすめしたい。特に母親との。新しい道を歩もうとするテレーズの姿に何かしらぐっとくるものが……私には、あったなあ。

  • パリ、メトロ1番線沿線の景色がありありと目に浮かぶ。

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さびしい宝石の作品紹介

なにがほしいのか、わからない。なぜ生きるのか、わからない。孤独でこわがりの、19才のテレーズ-。ある日、死んだはずのママンとそっくりの女性を見かける。気まぐれで、うわべを飾りたて、神経質だったママン…。テレーズは、ママンのほんとうの人生を探すことで、自分を見つけようとする。でも、ママンが話していた経歴は、みんな嘘だった。探すほどにわからなくなる真実、深くなる謎。たったひとつの手がかりは、ママンが残していったビスケット缶の中のセピア色の写真と手帳…。

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