- Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
- / ISBN・EAN: 9784879843395
作品紹介・あらすじ
エミリ・ブロンテ『嵐が丘』が蔵する謎を手がかりに、この小説の核心に迫る。
『嵐が丘』の読者は数多の謎に遭遇する。謎を解くためにテクストから証拠を拾い上げてゆくと、また新たな謎が出現し、これまで見えなかった作品の一断面が、鮮やかに浮かび上がってくる……
好評を博した旧版『「嵐が丘」の謎を解く』(創元社、2001)に3つの新章を加え、全面的に改稿した増補決定版。
感想・レビュー・書評
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廣野先生の『嵐が丘』を扱った論文を集めた本。さまざまな読み方があり、謎に明らかな答えは見つからず、それでももっと掘りたくなる『嵐が丘』の底知れなさを知ることができる。『嵐が丘』を読んでとても面白かったのだけれど、その面白さを言葉にできないもどかしさがあったのだが、この本を読んで、自分にとっての面白さの一部は、第一世代と第二世代の類似と違い、キリスト教の罪の感覚とそれを超えた異教的な天国の希求、みたいなところだったのだろうと感じた。後半論じられる「ヒースクリフ=エミリー・ブロンテ」説には胸が塞がったが、だからこそ現世では幸せになれない二人を生み出せたのだと深く納得するところもあったのだった。
廣野先生は「100分de名著」に講師として出演しているし『批評理論入門』の著者だし『ミドルマーチ』の翻訳中だし、これからもお世話になる予感。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『嵐が丘』を読み終えて、私は私なりの解釈をくだした。そう、本作は解釈をしたくなる物語なのだ。
廣野先生の謎解きを読み、本作が一筋縄ではいかない、豊穣な内容をもった作品であることを改めて認識した。
挿絵として、Fritz Eichenbergが使われているのが想像をさらにかき立てる。バルテュスの挿絵も強烈だったが、本作は画家のイマジネーションをかき立てる側面も強い。
伝説、再話を生み出す土壌としての本作の指摘も興味深い。