歌わせたい男たち

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著者 : 永井愛
  • 而立書房 (2008年3月25日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784880593470

歌わせたい男たちの感想・レビュー・書評

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  • さっくり読めた。

    「君が代」問題を扱っている。もう少し詳しく述べると、教職員が式典の際に「君が代」を歌わなかったり、斉唱の際に起立しない場合、罰せられるという問題を扱っている。が、それほど堅苦しいものでもない。

    いま教育現場で起きているのもきっとこんな感じなんだろうなあと思わせられる。ほとんどの教師はそのことについて考えたこともないのだが、反対の人もやはりいて、そのときに初めて問題に直面するというか。そしてきっと多数派になびくのだろう。

    イギリスでこの戯曲を上演しようとしたところ、これは理解できないというか、イギリス人には親しみがもてない(信じられない)テーマだから別のものにしようといわれたそうだ。

    さもありなん。

    国旗・国歌に関しては、強制するようなものではないと思うし。歌う人が歌わない人に「歌え!」というのはよくあるけれど、歌わない人が歌っている人に「歌うな!」というのはあまり知らない。その時点で、パワーバランスがはっきりしているのだから、異端分子弾圧みたいなことを必死にやらなくても、とりあえずは「安泰」なのではないか。

    なにをヒステリックになることがあるのだろう。
    というか、自分の信条をおさえてまで歌を歌うような人に先生であって欲しくはないなあ。まあ、ロマンチックにすぎる考えかも知れないけれど。

  • シャンソンが効果的に使われていた。演劇の脚本でこんなに面白く読めた本は初めてだ。

  • とある都立高校の卒業式を舞台にした職員たちの国歌斉唱をめぐる攻防を描いた喜劇。
    そうか、考えずにいたいなら考えずにすむ(立場を明らかにせずにすむ)自由を守らなきゃいけないのか。

    「ルポ 良心と義務」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4004313627で少し出てきた永井愛とその舞台が面白そうだったので読んでみた。
    戯曲には苦手意識があったので腰が引けていたけれど、読み始めたらあっという間に入り込めた。
    セリフと動きだけしかない形式は案外行間を読みやすいものなのかもしれない。

    登場人物は
    国歌とか深く考えたことのない元シャンソン歌手の音楽講師(ピアノ伴奏要員)、
    とにかく滞りなく式を終わらせたい管理職全開の校長、
    愛国心をきちんと教えたい熱心な若手英語教師、
    どうでもよさげな養護教諭、
    教育者として良心の自由を守りたい社会科教師。

    国旗国歌と学校現場といったらそりゃ思想信条の自由でしょう、と私はすぐに思ってしまうけれど、そこで食ってる人にとったらそんな抽象的なだけの問題じゃない。
    社会教師は信念を持って不起立をつらぬくけれど、四六時中国歌のことを考えて闘いたいわけじゃなくて、本当は猫の話なんかをしていたい。
    校長は都のお達しが来るまでは強制しようなんて考えていなかった。ただ、処分されるのは(多分するのも)嫌で、長いものには巻かれたい。
    音楽講師は、知らなければ「よくわかんないしわざわざ抗わなくても」と選ばないという選択を無批判にできたけれど、知ってしまったら考えざるを得ない。ただ音楽で食っていきたいだけなのに揺るがされ選ばされる理不尽にさらされる。

    職員たちの行動を決めるのは思想だけじゃない。明確にはかかれないけれどそれぞれの立場や経験、世代や地位も関係している。
    安定した地位の教師は首にならないから自由に動ける/教師は減俸などの処分があるからうかつには動けない。
    講師は処分の対象にならないから自由に動ける/一年契約の講師は来年の職を考えるとうかつには動けない。
    独身者は身軽だから動ける、独身者は自分で自分を養わなければならないから動けない、家族もちは家族を養わなければならないから、下っ端は、責任者は……
    無難にすごすための「やらない理由」はいくらでも見つけられる。
    でも、都の強制の中でみんなが雁字搦めにされているのもまた事実。

    立たないのが正しいという書き方じゃないのが良い。
    主張に服を着せたようなキャラクターではなく、みんなちゃんと人間。
    社会教師にはもっとうまく立ち回れよと思ってしまうが、じゃあどうすればいいのかはわからない。
    コミカルにかかれているけれど問題自体は現実だから、すっきり解決する方法なんてない。


    社会に対する怒りとか、少なくとも怒りたくなるような状態を笑って見せるのが風刺なんだと思ってた。
    この話は笑える。笑えてしまうことが笑えない。笑ってしまうほどおかしい(滑稽な)場面のおかしさ(異常さ)が悲しくてほとんど泣きそうだ。
    喜劇になってしまう現実が悲劇。

    「良心と義務」にあった、今はもう、この劇が普通のことになってしまって笑いどころがわからないのかもしれないという話を思い出しながら読んだ。
    これが悲劇でも喜劇でもなくなってしまうのは怖すぎる。

    舞台をみたかったなぁ。もっと早く知りたかった。

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