ヒトラー第二の書: 自身が刊行を禁じた「続・わが闘争」

  • 成甲書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784880861654

作品紹介・あらすじ

1945年4月、陥落したベルリン総統府の地下壕で押収された数百万点もの文書から、ひとりのアメリカ軍将校が厳重に封印された原稿を母国へ持ち帰った。その13年後、この極秘文書は、世界征服への青写真を記したアドルフ・ヒトラーの口述原稿であることが確認された。そして、ヒトラー自らが極秘扱いを命じたものであったことも…。ヒトラーがここまで露骨に、世界支配へ向けた自らの青写真を記した文書はほかにない。その狂気の野望を達成する手段として戦争が正当化される理由を叫び、構想実現のためには注意深く構築された同盟政策が必要であると説く。また、ロシアにドイツ国民の生活圏を獲得し、フランスを天敵とみなし、イギリスを友好国、イタリアを同盟国とするという持論を全面的に展開する。さらに驚くべきは、ホロコーストの恐怖を生み出す人種政策への狂熱的な衝動が早くも姿を見せていることだ。『わが闘争』の続編と位置づけられる本書は、世界に破壊的な影響をあたえたヒトラーの原点を示すものであり、やがて巨大化し、第二次世界大戦を引き起こすヒトラーの歪んだ信念が描かれている。

感想・レビュー・書評

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  • 読了した感想は、虚しいものであった。本書で展開されるヒトラーの国際関係の観察と今後取るべき方策、そしてアンチ・セミシズムを基軸とするゆがみきって、特に更に今日では全く似非科学と断定できる人種論と、壁の思い込みの都合の良い部分だけを「歴史の教訓」として浅薄に抽出して組み合わされた本書は、南チロル問題がドイツでイタリアへの敵意を生んでいた1920代後半のヨーロッパの国際状況を元にしている。従って、この時代のヨーロッパの国際、外交関係に一定程度予め通じた読者でなければかなり分かりづらい部分があるだろう。ヨーロッパ2何度か旅行した程度では耳にしないだろう地名や、故事、歴史的事例も頻出する。章ごとに末尾に【注】がおかれそれを補完してはいるが。

     また、「過去の同様の歴史から見ても同様である」という結論の持って行き方が極めて多く見受けられるが、某日本のSF超大作にあるように、「未来を見つめる者は過去の人間の営みにも一定程度目を向けざるを得ない。しかし、すべての未来への答えが過去の歴史にあるわけでもない」のであって、彼は過去のドイツの成功した部分、特にビスマルクと、最後は単に運の良さでかろうじて国内を荒廃させながら勝者となったフリードリヒ大王の事例を金科玉条としてふりかざすが、全ての答えが過去にあるわけではないという当たり前の柔軟さも持ち合わせていなかったように思われる。何らかの結論を出すに当たり、彼は証明されていないか、立場を逆に変えれば容易に解釈の変更ができる問題を前提としそれ字体の正しさを何らの客観的観測や学術的根拠について基づいて検証せず引用してそれを元に決断を断言として下す。これに反ユダヤ主義を基軸とし、スラヴ系民族への蔑視と偏見をまぶして論考を(口述筆記による本書を「論考」と呼んで差し支えがないのであれば、でえるが)進めるので偏見と妄言と幻想の上に砂上の楼閣を積み上げていくことを繰り返して、彼に敵対する陣営を彼のレトリックの及ぶ限りで罵倒し、東方への、「しかも最大限度の」拡張こそ唯一のドイツ民族復活の道と説きイタリアとイギリスへの、前者はかなったが軍事力の圧倒的な差によりむしろ足を引っ張られ、熱烈なアプローチを本書でも続けたイギリスには完全に敵対されて、イギリスへの分析は感染に誤りであったことを、まさに歴史に彼が証明することとなったのである。

    本書を読んで得られる知見は限りなく少ない。「わが闘争」を読んでいれば、批判的考証のために(まだその目的の為に読む方が大半だと信じたいが)本書まで読む必要はないかもしれない。しかし思い込みと、「強固な信念」(と本人は凝り固まるレベルで信じ込んでいるであろう)、誤った知識に基づいてのみつぎはぎされた本書を読んで得られるのはこれを信じ込む人が今日なお一定数いることに批判の目を緩めてはならないという、近代民主主義国家の一市民としての場合によっては困難な態度だけだろう。もちろんこれは重要だが、そう思わせてくれる上になおかつヒトラーやナチズム、第二次世界大戦、ホロコーストなどに詳細な考証を加えた書籍は多くあるのですそちらを読むことに時間を割いたほうが一般的な教養として往時の歴史の教訓を汲み取りたい方には相応しいかもしれない。個人的には彼のある意味感嘆に値するほど強固で、しかしそれが殆ど妄念によって形成されていた事を、「わが闘争」や彼やナチズム、ホロコースト研究本に加えて更に得られたので読んで損したとまでは言えない。不快な気持ちを抑えつつ読了した349ページであったとも言えるでしょう。

  • ヒトラーはイギリスの対ドイツ姿勢においてもまたユダヤ人の影があることを指摘している。世界ユダヤがイギリスにおいても決定的に影響力を持っていると考えていた。アングロサクソン主義がドイツに対する戦争熱を克服することは確実だが、それと同様に世界ユダヤがあらゆる手段に訴えて古い敵意を生かし続け、ヨーロッパ和平の実現を阻もうとすることもまた確実である。そうすることで彼らは、ヨーロッパ全土が動揺する混乱に乗じて、そのボルシェビズム的破壊性を発動しようというのである 。

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著者プロフィール

1889年オーストリア生まれ。1921年、国家社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)党首となる。1933年、首相となってからは独裁的権力を握り侵略政策を進め、第二次世界大戦を引き起こす。1945年、ドイツの敗北に伴い自殺。

「2004年 『続・わが闘争 生存圏と領土問題』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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