- Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
- / ISBN・EAN: 9784880861661
作品紹介・あらすじ
あなたを取り巻くこの世界の欺瞞、誰も語らない真実を、彼だけが叫んでいる。本書は9・11同時多発テロ以前から一貫している著者の言説の核心であり、現代社会の権力構造の真実を見抜いた発言集である。
感想・レビュー・書評
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秘密と嘘と民主主義
(和書)2013年02月05日 23:02
2004 成甲書房 ノーム チョムスキー, Noam Chomsky, 田中 美佳子
団結とか連帯とか行動することが大切だと教えられた。僕は柄谷行人さんのファンであり現実を変革する運動のようなものが必要だと教えられてはいるが、自分自身が人と連帯し団結するという行動をとることがなかなか良くわからなかった。
この本はそういったものごとによる変革の可能性についての考慮が全てでなされている。そういった姿勢と人間の連帯の可能性が見事に示されていると言っていいと思う。
そして自分自身が行動してみるべきでそこからすべてが始まるのだ。そういったものを考える上でチョムスキーさんは信用していいと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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チョムスキーと言えば学生時代国語音声学を専攻したはしくれとしてもよく目にした名前であり、その活動姿勢にも刺激を受けている。
絶句するような過激発言もあるにはあるが、訴えようとしている本質は極めて重要な内容であり、リスクをとり批判覚悟でこれらを繰り出すのはすごいことだ。
<blockquote>P064 女性の場合、インタラクティブ技術は便利なホームショッピングの手段を提供する。(中略)こうして女性はインタラクティブ技術によって解放されるというわけだ。男性にとっての例はアメリカンフットボールだ。(中略)視聴者が次のプレーはパス、ラン、あるいはバンとだと思う。それをコンピュータに入力すると、投票内容が記録される。(中略)これが男性向けインタラクティブ技術だ。それは利用者にこう語りかけるだろう。今あなたは本当に世界に参加しているのだ。健康保険制度の将来をどうするかなどといったことは忘れなさい。あなたは今大変重要なことをやっている真最中なのだから、と。このインタラクティブ技術の筋書きからは、スポーツ観戦が人々を受け身にし、ばらばらにし、従順な傍観者−物事に疑問を抱かず、容易にコントロールされ、与えられた規律をひたすら守るひとびと−にするという計算づくの麻痺効果が見て取れる。
P105 失業者には働く意欲があるのに、経済の仕組みが破たんしているため、仕事にありつけないでいる。
この国には資本があふれている。企業には金がありすぎて、どうしていいかわからないくらいだ。耳から札束がはみ出しているような状態なのだ。資金の不足というものは存在しない。今は「不況のどん底」などではない。そうした言葉は単なるデマにすぎない。
(中略)
1970年は貧困層への攻撃が開始された年だ。
−(「個人責任および就労機会調停法」という)法案の名前はなかなか傑作ですね。
(中略)
それはなかなか賢明な方法だ。中流の人々の注意を、富裕層から逸らしておく必要があるからだ。「フォーチュン」や「ビジネスウィーク」が「目のくらむような」「途方もない」と称えた企業の増益の実態を知られてはならない。軍事体制がハイテク業界に大量の資金を投入し、経済界を潤している事実に気がつかせてはならない。中流層の注意を、生活保護を受けながらキャデラックを乗り回し、子供を産み続ける黒人の母親といった、まやかしのイメージにむけておくのだ。
P117 米国は、犯罪が政治的問題とされている数少ない国のひとつである。ひょっとするとそのような国は米国だけかもしれない。世界のほとんどの地域では、犯罪は社会的問題としてとらえられている。(中略)
米国ではなぜ犯罪がこのように世間の耳目を集めているのだろうか。私の考えでは、その原因は犯罪そのものではなく、社会を統制しようとする動きにある。なぜなら現在、米国を第三世界の社会に近づけようとする努力が執拗に続けられている。それはごく一部の人々が巨万の富を蓄え、その他大勢には生活の安全さえ保障されないという社会だ。
(中略)まず第一に彼らが社会の不公平に気づき、それを変えようとするようなことがあってはならない。彼らの注意を現実から反らせる最良の方法は、彼らがお互いに憎みあい、恐れを抱くように仕向けることだ。
(中略)
企業犯罪が見て見ぬふりをされているのは、麻薬の分野に限ったことではない。(中略)これはなにも驚くにはあたらない。金も力もたっぷり持った人々が、起訴されるなどというへまをするはずがないのだから。
P120 刑務所と学校との話は確かに関係がある。刑務所も都市部の貧しい区域の学校も、教育しても仕方のない余剰人口を対象にしている、なぜなら彼らがこの社会ですることは何もないからだ。しかしここは文明国だから、暗殺部隊を派遣してそうした人々を銃殺するわけにはいかない。だから刑務所に押し込めておくというわけだ。
刑務所に詰め込まれているのは、ほとんどが薬物関連の犯罪、それもたいていは微罪で逮捕された人々だ。銀行員や化学薬品工業の重役が服役するという話は、あまり聞いたことがない。(中略)現在刑務所の建設は、経済のかなりの部分を下支えしているのだ。(中略)例えばメリルリンチは、刑務所建設債なるものの発行を引き受けている。
国防総省から研究開発費を吸い上げることによって成長を続けてきたハイテク産業では、刑務所の運営にスーパーコンピュータや独自の監視技術などを導入する案が検討されている。
(中略)オーウェル風でもなんでも、好きなように呼べばよい。呼び名はなんにしろ、実体は単なる国家資本主義なのだ。中央政府が産業に助成金を与えて発達を促し、大多数の市民を犠牲にして少数の人間のために短期の利益を上げようとするシステムは、当然、このような発達を遂げるものだ。
P230 私は長年平和活動に携わっているが、その間、ある程度エリート層に属する聴衆に対する講演と、それほど恵まれていない人々との会合やディスカッションでは、大きな違いがあることに気がついた。
(中略)こうした場所では、参加者は決して「私は何をするべきでしょうか」と尋ねたりしない。(中略)彼らはぼんやり座って魔法の答えが空から降って来るのを待ったりしない。なぜならそんなことは起こらないからだ。一方エリートの聴衆を相手に話をするときは、いつも「解決方法を教えてください」と頼まれる。
P239 だから私は、今何が起きているかをできるだわかりやすく説明する。真実は美しいものではないし、現実に基づいて予測した未来は暗い。
重要なのは―この点をはっきりさせることが私の務めだ―暗い未来は不可避ではないということだ。未来は変えることができる。しかし少なくとも現状を理解しなければ、それを変えることはできない。私たちは今まで数多くの成功を成し遂げてきた。そうした成功の一つ一つが、私たちを新しい頂点へと導いていく。私たちは今まで数多くの失敗を重ねてきた。しかし、いまだかつて「社会は簡単に変えることができる」などといった者は誰もいないのだ。
P244 権威の正当性を証明する責任は、常に権威者の側にある。(中略)こうした管理を行う祭は、きめ細かな気配りと内省が必要だ。そして、どのような権威でもそれを行使するにあたっては、正当な理由づけをする義務があるという自覚を持たなければならない。権威には自動的に正当性がついて回るわけではないのだから。</blockquote> -
4-88086-166-9 250p 2004・7・15 初版1刷
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「米国人の消費の多くは、人びとが本当に欲しいと思ったり必要とするものとは関係なく、(大企業の膨大な宣伝活動によって、企業の利益の為に)人工的に作り出されている」()内たつみ挿入。
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