作品紹介・あらすじ
人類ははるか一万年前、ベーリング陸橋を越え、アジアから北米へ渡った。イロコイ族の血をひく女性が未来の世代へ贈る、一万年間語り継がれたモンゴロイドの大いなる旅路。
感想・レビュー・書評
絞り込み
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根源を記憶すること。忘れたら、思い出すこと。折に触れて想い起こすこと。
憶えるなら、考査を乗り切るためよりも歴史を受け継ぐために。次に続けるために。
ここで考えたくなるのは、自由とは、なんだろうか?
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「口承」なんて伝言ゲームのような不確かな情報と思ってました…ナメててスミマセン。五感を伴った祖先の体験を潜在意識下へ埋め込む心理処置をするとか、民族的財産として幼少期から思考訓練するとか…イロコイ族の精神レベルは現代をも凌駕するものでした。
「歴史に学ぶ」とは言うが、我々の学びとは所詮知識だけで、知恵が圧倒的に不足していると痛感。様々な示唆に富んだ本でした。
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我らの中にじゅうぶん知恵のある者がいないときは、多くの者が心を一つにすれば、確かな道を見いだせるかもしれない。
彼らは、これまで身につけた節度ある話し合いの仕方を守り、磨いていく民になろうと決めた。子どもたちの子どもたちの子どもたちが。より大きな理解の恩恵を受けられるように。
若さゆえの好奇心こそ、明日の子どもたちへの本当の贈り物である。
ここで言う力とは、人生の始まりと終わりにいる者たちを、共にたずさえていく力のことである。
彼らは水に近づき、意外な発見をした。というのも、この轟く水に近づいて、ありあまる豊かさに手を伸ばすと、それはかつでだれも知らない水だったから。この水は苦い味がして、下にも、口にも、胃袋にも不快だったのである。
知恵は学ぶことの中にのみある。そして大きな学びの中には、必ずより大きな生存の可能性が含まれている。
優しさと愛情を持って、我らの子どもたちに長い眠りの飲み物を与えることにしよう、と。それは量を増やすと、眠りをこの世で一番長い眠りにする効き目のある飲み物であった。(毒殺の婉曲な表現)
この賢くて思いやり深い女は、自分の中に明日の可能性が宿ったことに気づき、その約束を理解しようと努めた。(妊娠の婉曲な表現)
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ずーっとFebeのベストランキングに上がっていながら、「私には関係ない」と思ってスルーしていた本。
ふと、思い立って聴いてみたら…
超面白い!
ネイティヴアメリカンのイロコイ族は、1万年前は、日本と満州のあたりで暮らしていたといわれるモンゴロイドの一族。
活動と津波に住み慣れた海辺の町を追われ、悩みに悩んだ末、そのまま北上して、ベーリング海を渡ってアラスカに。
ロッキー山脈を南下して、厳しい山なみを越えてアメリカ中西部のサバンナ地帯を横切り、最終的に五大湖のあたりに定住するまでの1万年の歴史。
これを、ずーっと口承で伝えて来た民族の生きざまです。
と書くと、ふーん、という感じですが、
途中で知り合った民族のところに嫁に行った女性たちが、
「女性なのに、男性と対等に話しすぎる。子どもにもそういう教育をするので困る」
という理由で、嫌がられるエピソードのあたりから、
面白くなってきました。
戦わずして、勝つ。
1万年の旅路の中、途中でさまざまな民とすれ違い交流しますが、「変化を好まない民」「権威にこだわる民」「他の民族をこき使うことに何も感じない民」
…などなど、衰退していく民族の様子が、今話題になっている企業の姿とダブってしまうのも面白い。
後半、これが永住の地と定めた五大湖で、敵対してくる「諍いを好む民族」をギャフンといわせるやり方も、痛快!
・学びを愛し、知恵を大切にする民。
・変化を厭わない民
・7代前の過去の歴史を記録し、7代先の未来を見通す力を持つ民
・戦いは極力避ける平和の民
・多数決では決めない。子どもから大人まで、徹底的に話し合って決める民
・それぞれの持つ能力を尊重する民。冒険を求めるものは偵察に、慎重なものは民を守る役目を担う。
・情報を重んずる民。意見が分かれた時は、両方を選び、お互いに情報を密にして、どちらに転んでも民が生き残るようにリスクヘッジする。
・男女の区別はせず、それぞれが得意なことを担う民。
そして、イロコイ族は今の生き残った人たちも、常にリーダーは女性で、男性は闘うものとして女性をサポートする。
話し合いで全てを決めていくという考え方は、合衆国憲法にも反映されているそうですよ。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/イロコイ連邦
私たちのDNAの中に、イロコイ族と共通のものが流れていて、今の世の中の変化を敏感に感じとれた者だけが偶然この塾に集まって来たのでは?と感じています。
原点思考の強い方には特におすすめ。
そうでない方も、困難に直面したときにさまざまな知恵で乗り切った、我々の祖先のお話しに、何かヒントがあるかもしれませんね。
まあ、とにかく長いです(20時間)
淡々とした口承詞ならではの語り口は、寝る前に聞くのにぴったりかも(笑)
壮大な夢がみられそうです。
そして、いつか私もイロコイ族に会いにいってみたい!
そんな夢をみました。
さ、あれかし。
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驚き!驚き!の連続、目をみはる思いで読みすすめました!
アメリカ大陸に住むインディアンの人々は、アジア大陸からアメリカ大陸へとわたったモンゴロイドの子孫だという説があるそうです。
津波で多くの住む場所や命を失った人々が、より安全な土地を求めて、続けた一万年の旅路。
この方たちは、日本人とも、きっと、もともとの祖先を同じにしているに違いないし、読み進めていく中で、途中で分岐していく仲間が、もしかすると私の祖先じゃないのかな、などと、とても興味を持ち、とても共感しました。
口承伝で語り継がれた「生き続けていく知恵」。
書物として、個人が残したものではなく、直接、口承で子孫から子孫へと、伝えられてきた、本物の「生きるための知恵」。
それを持っているイロコイの人々だからこそ、アメリカの中で、今なお、独立した国家を保ち続けることができるのでしょう。
放射能などの理由で地球から人類が滅亡することになっても、イロコイの部族の中からは、生き残ってくれる人類がいるんじゃないかな、と大いに希望を感じました。
生き続けるための知恵の基本は、〈古の知恵〉と〈新しい目の知恵〉の両方を大切にすること。
〈学び〉の姿勢を持ち続け、得た〈学び〉を仲間と共有する。
子どもたちの子どもたちの子どもたちのことまで考えた、暮らしをする、知恵を伝える。
命を続けさせてくれる生き物、環境に対しての畏敬の念をもつ。
小学生の頃は、探検、冒険ものにハマっていましたが、小5ごろに読んでいたら、どんな人間になれてたことだろう!と思いますが(^ε^)、大人になってからでも、遅くはない!
出会えて良かった本〜!
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一気に読みました!あるネイティブアメリカンの一族の来歴を記したものなのですが、その長さがすごい。推定一万年以上。これも、はっきりと伝え始めてからの年数で、その前の飛び飛びの古いエピソードもあって、最古のものはアフリカで樹上生活をしていると思われるものです。
ネイティブアメリカンの神話集だと思って手に取ったのですが、違いました。神は一度も出てきません。何か分からないものがあったら、徹底的に考察し、学ぼうとする態度を持つ人々だったからです。どうして、そこまで学びと伝承に執着したかというと、一族がどんな状況に会ったとしても過去から学ぶことによって生き延びることが出来ると確信していたからです。そして本当にそのとおりで、アジアの東側からベーリング海を渡り、北米大陸を横切り定住するまで旅の間、過去からの智慧は一族を助けます。
物語としてとてもおもしろく出来ているのは、楽しくワクワクするものならみんなが耳を傾け、話の中の智慧も広く心を打つからです。話の脚色は真実を伝える手助けとして認められてたんですね。でも、出来事全ては嘘ではなく真実だったと私は思います。読むと分かるのですが、本当にまじめな人たちだったから。
神も精霊も信じていなくても、宇宙と生命全てに畏敬の念を持ち調和して生きることが可能だということを知ることが出来て感動です。
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audiobookで語り部から聴いている気分で。アトランティスと繋がったときは鳥肌がたった。生涯繰り返し聴きたい。
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2019I215 388.53/U
配架場所:C2
ポーラ・アンダーウッドの作品