- Amazon.co.jp ・本 (380ページ)
- / ISBN・EAN: 9784881358771
感想・レビュー・書評
-
人間の社会性の深掘り。
同じ集落内での殺人はタブーとされるのに他の部族の虐殺が奨励されるのはなぜなのか、このような複雑な社会性を人間だけが編み出してきたメカニズムが考察されている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
一昨年ツイッターで大評判となった「ツイッターノミクス」、これを書く上でとても影響を受けた本のひとつと著者のタラハント氏がその作中でも述べているのが本書、「徳の起源 他人を思いやる遺伝子」だ。
細胞の利他主義に始まり、サルやチンパンジー、イルカなど様々な動物の生態からその利他主義的に見える行動を分析してその謎を解き明かす。また、北米やオーストラリアの先住民や未開の部族などの他者や部族間の交流なども分析し人間の本質に迫る。この辺りの描写がまた「へぇ!」、「ほう!」と面白い。
基本的にはやはり人間は利己的なのだ。ただし、人間の心の中には、よい人という評判をとり、社会的協力関係を築きたいとの本能がある。本書でもパットナムの「哲学する民主主義」を引用して北イタリアが歴史的に商業的コミュニテイがあったから発達し、南イタリアは専制君主やゴッドファーザーの存在が人々のコミュニケーションを阻害したため産業の発達が遅れたとしている。
つまり人間は置かれた環境によって、コミュニケーションを行いお互いの信頼関係を形成しお互いに利益を得ることも出来るし、コミュニケーションが無く信頼関係を築くことができす利益を享受できない場合もある。これはそれぞれの人間関係だけではなく、人間関係の集合である組織にも言えることだ。
組織内のコミュニケーションを活性化し信頼関係を強固なものにし、さらに組織外へと信頼関係の触手を伸ばし、信頼の輪を広げる、そうして、様々な個人や組織が信頼で結ばれる、そうすれば日本ももっと活性化し経済も上向きになるのではないか。