十牛図-禅の悟りにいたる十のプロセス-

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著者 : 山田無文
  • 禅文化研究所 (1982年7月16日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (180ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784881820155

十牛図-禅の悟りにいたる十のプロセス-の感想・レビュー・書評

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    山田無文の十牛図

  • <牛がいなくなり、探して見つけた。しかし、そこからも遥かに続く長い旅路があった。>

    十牛図。十頭の牛の図ではなく、牛を主題とした十枚の絵である。
    禅の悟りに至る道筋を物語のように示したもので、宋代の禅僧、廓庵(かくあん)が描いたものである。それぞれの絵には詩が添えられている。
    本書はその十牛図を、親しみやすい法話で知られた山田無文(1900-1980)が解説したもの。チベット探検で知られる河口慧海に師事し、後に花園大学長、妙心寺派管長などを務めた人物である。

    茶道は禅とつながりが深い。茶席でよく荘られる軸は、禅僧が書いた禅語である。
    先日行ったお茶会の十個一組の数茶碗の1つ1つに十牛図が描かれていて、ほほーと思った。でもそういえば十牛図って聞いたことあるけど、具体的に各図がどんなのか、知らないよ?と思って借りてみた本。

    十図はそれぞれ、
    第一 尋牛
    第二 見跡
    第三 見牛
    第四 得牛
    第五 牧牛
    第六 騎牛帰家
    第七 忘牛存人
    第八 人牛倶忘
    第九 返本還源
    第十 入鄽垂手
    と題されている。

    牛を探すということは、すなわち仏法を求める願心を起こすこと(尋牛)だという。人にはそれぞれ、仏性がある。あるはずなのに煩悩のために見えなくなっている。見失った仏性を求めて旅に出る。足跡を見つけてこちらの方向かなと思う(見跡)。そして牛を見つけ出し(見牛)、捕まえて(得牛)飼い慣らしていく(牧牛)。さぁ、家に帰ろう(騎牛帰家)。
    このあたりまではまぁなんとなくわかる。が、問題はそこから先である。
    牛を見つけて、飼い慣らして、家に帰ったからもういい、ではないのである。
    悟りは開いた。だが、その悟りに縛られてはいけない、ということらしいのだ。俺は悟りを開いた偉い坊主だ、とふんぞり返ることのないように、せっかく得た悟りを手放さなければならない(忘牛存人)。さらには、悟って悟りを忘れた人という主体すらいてはならない(人牛倶忘)。ここで絵からは人も牛も消え、ただ丸い円があるのみである。これを一円相というらしい。
    さてこうして無になった存在は、すなわち世界と一体化している。天地と我とが一体であるならば、花は紅、柳は緑、あるものをあるものとしてその姿を見よというのが、第九図の「返本還源」。
    最後の図が「入鄽垂手」。第一図から苦労して牛を探し求めてきた童子が布袋様となる。そして街で、皆と笑いながら交わり、仏性を広めていく。天地宇宙の真理を手にしたからと言ってお高くとまらず、自分は馬鹿になって、回りの皆を笑顔に変えていく。悟りを開く目的はこのようでなければならない。

    かいつまんで言うと、こういうことだろうか・・・?
    尋牛(牛を探す)→見跡(痕跡を見つける)→見牛(牛を見つける)→得牛(牛を捕える)→牧牛(牛を飼い慣らす)→騎牛帰家(牛に乗って家に帰る)→忘牛存人(苦労して手にした牛を手放す)→人牛倶忘(そして自分も無になる)→返本還源(あるがままを受け入れる)→入鄽垂手(街に出て、手をさしのべる)。

    禅は難しい・・・。
    でも何となく、広々とした心持ちがして、広大無辺な宇宙に通じていく道が朧に見えるようでもある。

    本書は、著者が若き禅僧たちに講じたものであるので、必ずしも一般市民向けとは言えないようだ。が、親しみやすく闊達なお坊さんが呵々と笑っている、そんな感じもして、さほど読みにくくは感じなかった(わかったかどうかは別だけれど)。

  • 十牛図も、当時53歳の無文老師の言葉も平易だ。禅宗の先賢は「教外別伝」とか「不立文字」とか難しいこと言う割に、懇切丁寧な解説も残してくれていて、その実かなり優しい。
    廓庵禅師もまた然り、本来一々を実体験で知るべきことで、むしろここまで書くのは野暮だと思う。饒舌の老婆心、ありがたい話だ。
    山田無文禅師の提唱は、初見でありながら既視感があり、記憶が呼び起こされているような気がしてくる。こんなところにも、主体性が重んじられる家風を感じる。
    きっと入鄽垂手を地でいく人だったのではないかと思う。

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