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- Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
- / ISBN・EAN: 9784882022022
感想・レビュー・書評
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タイトルの「雨の中の蜜蜂」は詩的な響きをもっているが、ラストシーンで描かれるのは、激しい雨に打たれて地面にたたきつけられ、ついには濁流に呑まれる、ちっぽけな生き物の姿。その蜜蜂のように、うちのめされたプライドと人生の失望にむち打たれるようにして、悲劇に向かって引き寄せられていく村人たちの、わずか2日間の物語だ。しかし、この小さな人々の小さな物語は、手にとったら棚に戻せなくなるような文章の力に満ちている。気位の高い妻におびえながら惹かれ続ける夫の、グラスを口に運ぶさま、人生が自分に用意したしうちを呪う妻の押し殺した叫び、そうした描写が、静かだが激しい緊迫感をもって重ねられている。小品ながら、いい出会い方をした本であった。
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