仁木兄妹の探偵簿: 雄太郎・悦子の全事件 (1)

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  • 出版芸術社
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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784882931287

感想・レビュー・書評

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  • 「猫は知っていた」などの長編に登場する、仁木雄太郎、悦子の兄妹が活躍する短篇集、2巻のうち第1巻。 雄太郎は植物学専攻、悦子は音大の師範科に通う、共に大学生で、海外赴任のために不在中の管理を任された知人の邸宅に住んでいる。

    収録作品は、灰色の手袋/黄色い花/弾丸は飛び出した/赤い痕/暗い日曜日/初秋の死/赤い真珠/ただ一つの物語/犯人当て 横丁の名探偵。

    兄妹が独身時代の事件が5編、それぞれに結婚した後の事件が3編と、兄妹は登場しない犯人当ての小編。 独身時代の作品では兄妹の掛け合いが楽しい。 結婚後は悦子が持ち前の好奇心で事件に巻き込まれる。 年齢的には最も早い「みどりの香炉」だけは入っていないが、「私の大好きな探偵 仁木兄妹の事件簿」で読める。

  • 2017年5月18日購入。

  • 殺人事件を扱った本なのに、心が温かくなるのは何故でしょう。

    巻末に、江戸川乱歩氏の短文、作品の掲載ごとに著者の近況を伝えてくれる心遣い、当時の作家と読者が深い所でつながっている様子が感じられて、涙腺が緩みました。

  • 時代感が心地よく読めた。長編より好きかも。派手さはないけれど集中して読みやすい短編ミステリでした。少女期の兄とのコンビもいいが、母になってからのパワフルなおかあさんっぷりもほほえましい。

  • かなり昔の……ミステリ黎明期の作品……なんでしょうか。
    なんていうか、一編一編が短い。ちょっと物足りないです。殺人を題材にしていながらどろどろすることなく淡々と……というのが味みたいですが、ひたすら「遺体を発見して冷静に分析」というのが違和感あります。少しは取り乱すとかそういうのもないので、単に「トリックの謎解き集」になってしまっている感が。
    兄妹探偵ということですが、この一冊に関しては兄が空気すぎるし。謎解きだけ顔を出す、みたいな。妹のほうはそれでも若干の心理描写はあるんですけども。

    とはいえ話自体は決して嫌いではないので、このシリーズの長編ってのを読んでみたいとは思いました。

  • 初読の仁木悦子作品。著者紹介で知ったのですが、この方は一般公募になってから最初の江戸川乱歩賞を受賞されたそうです。1928年生まれ、1986年没。50歳台で亡くなられるとは…。
    長編も書かれてますが、初読なのでとりあえずは短編集から。刊行は平成8年ですが、収録作品は昭和32年~47年の雑誌掲載分。


    音楽大学の学生の仁木悦子は、植物学科の学生の兄・雄太郎と下宿先を転々としつつも暮らしていた。現在住んでいるのは大富豪の邸宅。外遊中、温室にあるサボテンの世話を条件に下宿しているのだが、いわゆる「植物マニア」の兄にしてみれば願ったり叶ったりの条件である。
    そんな生活の中、悦子は間違えて返された洗濯物を戻しにクリーニング屋へ向かった。しかしそこにあったのは「本日休業」の張り紙、カギのかかったその店の奥には従業員のおばさんが縛られて殺害されていた。 盗まれた80万円、無くなったカギ、捨てられていた血塗れの手袋、そして兄が会ったという見知らぬ店員…。果たして犯人は?―― 『灰色の手袋』
    ほか『黄色い花』『弾丸は飛び出した』『赤い痕』『暗い日曜日』『初秋の死』『赤い真珠』『ただ一つの物語』『(犯人当て)横丁の名探偵』以上9編の短編集。

    9編のうち5作は悦子・雄太郎兄妹が主役です。『初秋の死』『赤い真珠』『ただ一つ~』は悦子のみが結婚し子連れでの登場…兄の話題は出てくるのですが、ご本人の登場がないのが少々寂しい…。この兄妹は本当に仲がよさそうで、読んでてほのぼのしてくるのです。チビでちょっと太りぎみで好奇心旺盛な妹・悦子と、のっぽでひょろっとして植物のこととなると夢中になって動こうともしない兄・雄太郎。でも事件となると妙に鋭いところを見せるお兄ちゃんに、事件の話を聞かせて興味を湧かせてとことこ後についてく妹。なんだかかわいくて、いいコンビだと思いません?
    ストーリー展開・文体ともに気負いがなくって、気楽に読めるところが好印象。基本トリック・構成も、現在でも通用しそうなものが多々見受けられます(もちろん「ちょっと待て!」的なのもあったりするのはご愛嬌ってことで)。特に『黄色い花』などは、兄のお得意分野・植物が犯行を解き明かすのに関連していて上手い!と思うのですよ。
    ただ…『弾丸は飛び出した』はちょっと…あまりにも強引すぎたんではナイかと…(汗)。ご本人が入院中に書かれたという事情もあるし、仕方がないのかなぁ…。

  • 「猫は知っていた(江戸川乱歩賞受賞作品」以来、ヤセでノッポの大学理学部(植物学専攻)の学生・雄太郎と、太めでチビの音大生(ピアノ専攻)・悦子の魅力的な凸凹コンビが活躍する兄妹探偵シリーズ。本書は、その凸凹兄妹コンビが活躍する初期の事件簿=短編8本が集められています。

    <兄の巻> では、「灰色の手袋」「黄色い花」「弾丸は飛び出した」「赤い痕」「暗い日曜日」「初秋の死」「赤い真珠」「ただ一つの物語」の他、単行本未掲載の犯人当て「横丁の名探偵」も巻末に収録されています。

  • 『灰色の手袋』
    悦子のトッパーコートを間違えて持って帰ってきた雄太郎。クリーニング屋に取りに行った悦子の発見した従業員のトヨノの遺体。盗まれた80万円。壊れた洗濯機を取りに来た電気屋。翌日怪我をした主人の秘密。左手にはめられた灰色の手袋。

    『黄色い花』
    2人の甥、姪とすむ男・数川。誰も信用できない数川。離れに閉じこもり暮す。殺害された数川。雄太郎が気が付いた黄色い花に隠された秘密。

    『弾丸は飛び出した』
    歯医者にもぐりこみテレビを鑑賞する悦子。テレビでギャングが銃を撃った瞬間、倒れた老人。現場に居合わせた郁子、従兄弟の町子と友人次郎の関係。壁にかけられたポスターの女性に撃たれたような被害者チェスマン。床下に隠された秘密。銃撃される次郎。人形に撃たれた町子の秘密。

    『赤い痕』
    兄妹のばあやに招かれてやってきた長野での事件。絞殺された老婆。赤い紐。逮捕された容疑者。洗濯竿に巻き付けられたという赤い紐。しかし竿に紐の痕はなく。過去の一家殺害事件と容疑者、被害者の関係。

    『暗い日曜日』
    悦子が発見した舘岡教授の遺体。教授の隠し子。教授の手帳に残された『紫式部』のことばの秘密。雄太郎の言葉から蜂ノ巣薬局、南山堂を訪れる悦子。南山堂の主人の告白。被害者の「薬が・・」という言葉に隠された秘密。

    『初秋の死』
    子供たちと友人の家を訪れた悦子。そこで発見した友人・黒松徹、由紀子夫妻の心中死体。黒松の母親と由紀子の兄・柏井の存在。柏井の元に届けられた由紀子からの夫の浮気を疑う手紙。国立公園の記念切手に隠された秘密。

    『赤い真珠』
    悦子の近所に住む為永家の夫人の感電死。風呂場での事故。現場に残された赤い玉。そしてお隣の稲城が経営するアパートでの毒殺事件。現場に巻かれた赤い玉。悦子の息子が目撃したおもちゃの首飾りのネコババ。パチンコに隠された秘密。

    『ただ一つの物語』
    悦子の友人・木崎七重が悦子の娘・鈴子に残した世界でただ一つの童話。鈴子のぬいぐるみを主人公にした『クマの子べーちゃん』。木崎家にお泊りしたぬいぐるみの「べーちゃん」に隠された秘密。木崎七重の持つ宝石を狙う彼女の従姉妹、弟。『クマの子べーちゃん』を狙う女の正体。

     2010年8月16日読了

  • 仁木悦子さんはミステリ界ではいわずとしれた存在ですが、未読だったので、今回初トライ。
    でもちょっと失敗だったのは、私が読んだ本は、今までいろんな短編集にばらばらに入っていたシリーズ短編を完全収録したものなんです。
    肝心のデビュー作『猫は知っていた』は長編だから、−雄太郎・悦子の全事件−といいながら入ってないんですよねー。
    なんといいましょうか、ミステリですが素朴というか素直というか、理屈っぽ過ぎず猟奇もない、帯のとおり「爽やかな」作風です。
    何分発表当時、私生まれてませんので「?」な単語が出てきたり、テレビのある歯医者にお客が寄ってくるなど時代を感じさせるものがありました。
    そういった廃れた文化の部分はそれとして、残っていく作家、だと思います。というか残って欲しいな。
    なんとなく、残るか否かは、現在の大学生あたりで、日常の謎系ミステリなんかが好きで、過去の作家まで読む人がいるかいないかにかかっているような気がするので。

    解説 / 新保 博久
    装画 / 安野 光雅「さんた・まっち・ふぃおーれ」より
    装幀 / 森下 年昭
    初出 / 『宝石』昭和32年7月、昭和33年3月、4月、7月、昭和37年12月、『推理界』昭和44年11月『小説サンデー毎日』昭和46年5月、12月、講談社『現代推理小説大系1』月報 昭和47年5月

  •  校正ミスが多いにもかかわらず、とても読みやすく感じる。

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著者プロフィール

1928 - 1986。小説家。ミステリーや童話を手がけ、1957年に長編デビュー作『猫は知っていた』で江戸川乱歩賞を受賞。明快で爽やかな作風で、「日本のクリスティー」と称された。1981年には「赤い猫」で日本推理作家協会賞を受賞。無類の猫好きとして知られる。

「2023年 『不思議の国の猫たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

仁木悦子の作品

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