探偵三影潤全集 1 白の巻

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  • 出版芸術社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784882932635

感想・レビュー・書評

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  • 三影潤全集!面白かった〜。ハードボイルドなんだけど、どこか仁木悦子さんの温かみのある人柄を感じさせる…素敵。

    『冷えきった街』
    長編もの。見取り図の出てくるハードボイルド!!これは切ない結末。どう転んでも辛かったけど、こうなるしかなかったのかもしれないね。少年少女への三影潤の対応が優しくて、余計に辛い。視点が暖かいんだよ。ハードボイルド、結局あんまりわからないんだけど、仁木さんのは好きだなあと思う。前に読んだのは短編だったけど、長編もいいなあ。

    『白い時間』
    短編。三影探偵はスキーが大好きなのね。「ヤッケ」という言葉に時代を感じる。というか、おばあちゃんが使ってた言葉で懐かしい…。
    短編とは思えない登場人物の多さ!そして犯人は前作と違って(?)ドクズ!!

    『白い部屋』
    短編。ベッド・ディティクティブもの。拳銃で撃たれて入院とか、殴られたりとか、三影さん結構荒事に巻き込まれるね…。ハードボイルド探偵といえば肉体的な災難よ、と言わんばかり。激しい…。
    ちょっとした悪事をしてしまう同室患者の告白への探偵と元刑事のアドバイス、現実的で優しくて好き。


    三作とも息子や恋人を心配する人たちの心の優しさ、身内が犯罪を犯していたらどうしようという不安、こういうのにとても共感できるというか。殺しはどんな事情があっても許せない、そういう三影探偵のスタンスも好きなんだけど。仁木さんのバランス感覚すごいと思う。

  • 『日本のクリスティー』と呼ばれた仁木悦子の手による、ハードボイルな作風の三影潤シリーズ。そのなかでも唯一の長編である「冷え切った街」と、「白い時間」「白い部屋」のふたつの短編が収録された作品集。
     行方不明のドラ息子探しからはじまる「白い時間」、安楽椅子探偵チックな「白い部屋」も良いが、やはり白眉は「冷え切った街」だろう。
     幾重にも折り重なった複雑な人間模様が、私立探偵・三影潤の地道な調査を通じて少しずつ解きほぐされ読者の前に明示されていき、そして……
     クールなようでいて、その実人間味にあふれた三影がまた魅力的で、だからこそ、明かされる真実が深く重く突き刺さる名作だ。

  • 『冷えきった街』

    『白い時間』

    『白い部屋』

  • 高校時代、夢中になって文庫本で読みました。いまでも、その文庫本は手元にありますが、さすがにカバーも色あせ、中の頁も茶色く変色・・・。
    本書は、仁木悦子没後25年にして、作品がハード本で再度出版された嬉しい企画。

    仁木兄妹凸凹コンビに続く、この三影潤シリーズも魅力的な作品。
    本書には、「冷えきった街」「白い時間」「白い部屋」などが所収されています。

  • 探偵・三影潤が活躍するシリーズ。携帯電話が無かったり、登場人物の言葉使いとか、とりまく街や文化の描写などから、そこはかとなく漂う昭和っぽさがイイ感じでした。「冷え切った街」は読み応えもあり面白かったです。これは舞台が冬のものを集めた「白」の巻で、他に「青」編「赤」編もあるみたいなので、そちらも読んでみたい。

  • 「冷えきった街」「白い時間」「白い部屋」収録。
    やはり長編である「冷えきった街」が印象深かったです。事件と家庭内のいざこざ、そして過去に起こったことの数々。さばさばと描かれているけれど、しっかりと重苦しい感じがしました。そしてこの真相。重たくって、タイトルの意味もずーんと響きました。
    「あの言葉」、彼にとってはさぞかし苦しかったんだろうなあ。同情を禁じえません。

  • 桐影秘密探偵社を友人の桐崎秀哉とともに経営している私立探偵・三影潤が携わった事件を集めた全集です。
    長編「冷えきった街」、短編「白い時間」「白い部屋」の3編収録。

    これはまた、仁木兄妹シリーズとはガラリと変わって、ハードボイルドタッチです。
    全編三影目線の一人称。
    料金交渉もきっちりとやってのけ、依頼者や調査対象者とは一定の距離を置き、こつこつと調査を進める三影。
    かなり趣の違うシリーズでした。

    長編の「冷えきった街」は当主の妻が3人目ということでかなり複雑な家庭環境と、11年前の2人目の妻の変死事件も絡み、やるせないラストとともに非常に読み応えがありました。

    「白い時間」は短いながらも登場人物が多く、少々混乱しながら読みました。
    が、短編だからこその鋭い着眼点からの解決が小気味よかったです。

    「白い部屋」は入院中の三影が同室の患者から聞いた事件を解き明かす、安楽椅子探偵モノ。
    実際に携わった事件ではなかったからか、話が早く、ノリも比較的軽かったような。
    真相に至るロジックが一番好みでした。

    初出が昭和40年代半ばから50年代半ばということで、さすがに自家用車や電話はかなり普及していたようで、三影の移動も車になっていました。
    そのためますます古さは感じられませんでした。
    というか、なんだか久しぶりにきちんとした私立探偵さんが謎を解く物語を読んだ気がします。
    本当に正統派。堪能しました。

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著者プロフィール

1928 - 1986。小説家。ミステリーや童話を手がけ、1957年に長編デビュー作『猫は知っていた』で江戸川乱歩賞を受賞。明快で爽やかな作風で、「日本のクリスティー」と称された。1981年には「赤い猫」で日本推理作家協会賞を受賞。無類の猫好きとして知られる。

「2023年 『不思議の国の猫たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

仁木悦子の作品

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