日本SF全集 2 1972~1977

  • 出版芸術社
3.46
  • (1)
  • (6)
  • (4)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 63
感想 : 11
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (453ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784882933472
#SF

作品紹介・あらすじ

1972年に田中光二、1974年に山田正紀-。大型新人の登場が相次ぐ一方、『日本沈没』が国民的ベストセラーに!陣容を整えた国産SF界が名実ともに黄金期を迎える。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • [p. 251 以降]

    読了。梶尾真治さんは、自分がリアルタイムで初めて読んだのが『サラマンダー殲滅』なので、そのイメージがとても強い。自身の経験によって、作者や作品に対する見方はかなり変わってしまうものなのだななどと、巻末の座談会に目を通しながら、あらためて感じ入ったりした。

    --

    [pp. 165-250]

    山尾悠子「遠近法」。すごいなぁ。ほんとすごいなぁ。大好きだなぁ。草稿として語られている物語も当然のことながら、そこから離脱するかのような語り手の語りがまたすごい。物語があり、「彼」があり、語り手があり、そこに存在する円環の外から、わたしたちは「腸詰宇宙」を眺め、夢想する。わたしたちこそ、その終わりとともに終わらせられるのではないかとまた考えながら。

    --

    [p. 164 まで]

    横田順彌「真夜中の訪問者」。それが人であれば、かなりベタな状況かとも思うのだけれども、それが横断歩道になった途端、しかも視覚的にもまさしく横断歩道であり、だとすれば親子関係って何よとか、いや、その解決法はどうなのよとか、それこそ主人公ではないけれども「あ、そう」の繰り返しになるというか。ナンセンス極まりなくて、でもなんだかほっこりもしていて、こういう話はどうしても好きだ。

    かんべむさし「言語破壊官」。ある程度は期待どおりに進んでいく話とも言えるのかもしれないけれども、それをはっきりと「言葉」にされて眼前に示されると、その表現の力強いこと。主人公が通っていく「言葉」のなかに、それでもこの変貌には規則性があると感じさせられてからの、さらにエンディングまで続く状況が。ものすごく引き込まれた。

  • 石川英輔さんの本を一番最初に読んだのが、おそらく1978年から79年で、「ポンコツタイムマシン騒動記」。そのあとがきに、石川英輔さんの宇宙船の作品が紹介されていた。「おい、ハチ公!」で始まる「ポンコツ宇宙船始末記」。この作品をいつかは読みたいと思いをはせて、以来氏の作品を追い続けた。40数年後、やっと出会いが果たせた。
    いつも通っている図書館にそれはあった。
    昔読んだポンコツシリーズや、その後に続く大江戸シリーズ、株式会社シリーズにはクオリティでは及ばないながら、あの頃の思いが蘇ってきた。年月をしみじみ感じる感動の読了感。

  • <閲覧スタッフより>
    【SF文学諸作品】
    国内外のSF小説黎明期から現代まで、定番を中心に様々な作品を集めました。中には映画化されたものもあります!お気に入りの一冊を探してみてください。

    --------------------------------------
    所在記号:913.68||ニホ||2
    資料番号:10205205
    --------------------------------------

  • 田中光二「メトセラの谷間」
    山田正紀「かまどの火」
    横田順彌「真夜中の訪問者」
    川又千秋「指の冬」
    かんべむさし「言語破壊者」
    堀晃「アンドロメダ占星術」
    荒巻義雄「柔らかい時計」
    山尾悠子「遠近法」
    鈴木いずみ「アイは死を越えない」
    石川英輔「ポンコツ宇宙船始末記」
    高斎正「ニュルブルクリングに陽は落ちて」
    河野典生「機関車、草原に」
    野田昌宏「レモン月夜の宇宙船」
    鏡明「楽園の蛇」
    梶尾真治「美亜へ贈る真珠」

    全集1同様、これまで読む機会のなかった作家の作品を読めて良かった。
    以下、未読だった作品に適当にコメント。


    田中光二「メトセラの谷間」
    幻の谷に秘密の村。日本的なものとSFの組み合わせとしてはわかりやすい一本。

    山田正紀「かまどの火」
    やっぱすげーや山田正紀。仏教物理学、ブラックホール、事象の地平線。なんだかよくわからなくてもすごい。

    横田順彌「真夜中の訪問者」
    横断歩道SF。

    川又千秋「指の冬」
    既読感を覚えてなんだと思ったら「幻詩狩り」の元になったもののよう。短編だけでも十分面白い。

    かんべむさし「言語破壊者」
    実験小説の類。一度は読んでおくべき作品?

    堀晃「アンドロメダ占星術」
    正統派ハードSFといった趣。

    荒巻義雄「柔らかい時計」
    火星を舞台に、ダリがテーマとなったホント独特な作品。ぐにゃぐにゃ。タイトルもいい。収録作のなかで一、二を争うレベル。

    山尾悠子「遠近法」
    今回、一番拾いものをしたと思えた作品。山尾悠子の名前は最近目にした記憶はあるけれど作品は読んだことがなかった。これを読んで一気に注目することに。円筒状で回廊が取り巻く「腸詰宇宙」のイメージを文章で伝える力がとても凄い。

    鈴木いずみ「アイは死を越えない」
    夫と妻の寿命をめぐるあれこれ。

    石川英輔「ポンコツ宇宙船始末記」
    夢のある下町SF(笑)
    テリー・ビッスンっぽい。

    高斎正「ニュルブルクリングに陽は落ちて」
    男の美学。いかんせん、自分は車の格好良さがわからない。

    野田昌宏「レモン月夜の宇宙船」
    SF読みのための物語。

    鏡明「楽園の蛇」
    オーパーツである指輪のモチーフから予想される展開にいくのかいかないのか考えてたらやっぱりいった。

    梶尾真治「美亜へ贈る真珠」
    非常にクオリティの高かった伴名練の「美亜羽へ贈る拳銃」の元ネタタイトルという理由で、前々から読みたかった一遍。
    時間SFであり、すてきなお話。最後の場面が印象深い。

  • 心から楽しみにしていたアンソロジー

     タイトルそのままやまっすぐな「メトセラの谷間(田中光二)」はとても美しい作品。ただし、そのぶん、インパクトはない。

     設定がワクワクするブラックホールワールドの「かまどの火(山田正紀)」は、仏教用語が読み手を混乱させてしまうのが惜しい。もう少しわかりやすくならないかなぁ。

     息抜きのスラップスティック作品「真夜中の訪問者(横田順弥)」はこんなものかな。

     伊藤計劃風の「指の冬(川又千秋)」は先進的、前衛的だと思うが、後半の展開に息切れが目立って残念。神となった彼に妻が必要か?

     いきなりハードにはじまる「言語破壊官(かんべむさし)」だが、やはり後半はいつものパターン。おもしろさはあるけどね。

     大好きな作家さんの「アンドロメダ占星術(堀晃)」は、はじめて期待外れ。最初から乗れず、持ち直すことができなかった。

     火星にDVDとして送られているという「柔らかい時計(荒巻義雄)」には興味津々だったんだが、私の好みではなかったなぁ。

     そして、もっとも興味があった作家さんの「遠近法(山尾悠子)」。とてもファンタジックな作品。ただし、難解で情景が見えなかった。他の作品をぜひともトライしたい。

     異色作家の「アイは死を越えない(鈴木いづみ)」は、あまりSF色がない。イマイチかな。

     次の「ポンコツ宇宙船始末記(石川英輔)」はスラップスティックというか、不真面目な感じ。おもしろくない。

     人類絶滅の「ニュルブルクリングに陽は落ちて(高斎正)」は、なんとも切ない。オイルが焼ける臭いがする不思議な物語。

     次の「機関車、草原に(河野典生)」、「レモン月夜の宇宙船(野田昌宏)」、「楽園の蛇(鏡明)」はどれも乗らずにパス。

     ラストは既読「美亜へ贈る真珠(梶尾真治)」。この全集は6巻あるそうだ。コンプリートしたいな。

  • 2010.3.10.初、帯付
    2012.11.13.アマゾン

  • このあたりが、SFブームの到来なのだそうですが、実は、わたしこの時代の人のSFって、わりとスッポリ抜けてます。
    山田 正紀と川又 千秋ぐらいかな、同時代に読んだのは。

    山田 正紀は「神獣聖戦」、川又 千秋は「幻詩狩り」、「反在士の鏡」あたりを読んだ記憶が。
    「反在士の鏡」以外は、小難しかったような……。
    あと、野田さんを読んだのは、最近だし。

    一番面白かったのは、「冬の指」と「ニュブルクリングに陽は落ちて」の2つかな。
    エマノンの梶尾 真治もいろいろ読みたいです。

    「冬の指」は、今回初めて読んで、やっと、「幻詩狩り」の意味がわかった気がした。

  • 1F書庫

  • まさに私の青春時代、SF時代の真っ只中。筒井さんの日本SFベスト集成と重なる時代。

  • おもしろかったよーう(と、早川さん風に)。1はさすがに古くさくて気持ちがのらなかったが(それに筒井康隆であれを選ぶっていうのがどうにも…)この2はたいそう良かった。

    一番の衝撃は山尾悠子の「遠近法」が実に圧倒的なイメージの喚起力を持つ作品であったこと。これまで「幻想」と名が付くものを読んでいいと思ったことがなかった。名作と呼ばれるものを読んでみてもピンと来ず、退屈だと思うことさえあった。だから、自ら「幻想小説かファンタジーの書き手」と名乗る山尾悠子も、非常に熱狂的なファンのいる伝説的な存在だとは知っていたけれど、避けて通ってきたのだった。しかしまあこんなすごいものだったとは!世界そのものである無限に続く塔、その中を巡る太陽と月、全くゆるみのない文体で紡がれる物語にノックアウトされた。読み終わってもずっと闇を降下するウロボロスの蛇のイメージから離れられない。すごい!

    他のもみんながみんなではないけれど、楽しめるものが多かった。小説としての完成度とか説得力とか二の次三の次、とにかくアイデアとセンスの勝負という感じなんだけど、それはそれとしておもしろく読めた。これは第3巻が楽しみになったなあ。

全11件中 1 - 10件を表示

田中光二の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×