日本SF全集 3 1978~1984

  • 出版芸術社
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  • Amazon.co.jp ・本 (477ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784882933489

作品紹介・あらすじ

「奇想天外」「SF宝石」「SFアドベンチャー」……。
専門誌が群雄割拠するなか、スペース・オペラに、
ヒロイック・ファンタジーにと新たな世界を開拓した15人の第3世代作家の
SFベスト短篇15編!!

感想・レビュー・書評

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  • 紹介していただいたお勧めのお話を検索したら、こちらに収録されていたので借りてみた。
    日本のSFで1978年から1984年に発表された短編を集めたもの。私が中高生の時に読んでた作家たちだ!
    それぞれに「著者の言葉」があり思い出を語っているのもいいですね。


    『新井素子「あたしの中の…」』
    大事故で記憶を失ったあたし。ええ?一週間で29回も大事故に合って助かってるの?しかも死んだ人たちの意識が全部あたしの中に入ってきてる!?
    ==うわあ懐かしい!!中高生の頃新井素子好きでほぼ読んでた!自分が大人になり小説での語り口がちょっともどかしくなり離れていたのですが、今読んでもやっぱり面白い!!未だに新井素子が新刊で出続けるのがよく分かるわ、楽しい。

    『夢枕獏「蒼い旅籠で」』
    宇宙の滅びの前に、既往をなくした神と悪魔と人間の魂が出会うお話。
    …と言われて読んでも難しかった。
    ==以前「コバルト文庫」というものがありまして、今で言う「青い鳥文庫」「角川少年文庫」みたいなもんでしょうか。こちらで夢枕獏を知りましたが、SF、幽霊譚、山岳物、伝奇譚など幅広く、中高生が読むにはなかなか大人な表現もありました。こういう物を通って大人の本へと繋がって行きます。

    『神林長平「言葉遣い師」』
    言葉には魔力があるとして、言葉を発すること、文字を書き記すことを禁じられた未来社会。人々はテレパシーで話し、感応スプールの映像内で意識を共有させる。この、人が共感することは禁じられている世界で、言葉を使う人間が現れた。

    『谷甲州「火星鉄道十九マーシャン・レイロード」』
    宇宙戦争勃発間近の火星付近でのお話なんですが、科学的数字的なところは理解できずでした。宇宙マッチョマンの任務達成話。

    『高千穂遙「そして誰もしなくなった」』
    ダーティペア物です。これも懐かしいな。宇宙の犯罪取締組織に所属するケイとユリは、問題解決はするがあまりにも破壊的な被害を出すために「ダーティペア」と呼ばれる。
    今回の任務は、ギャンブルに嵌ってしまった有能好青年調査員を取り戻すことだった。

    『栗本薫「時の封土」』
    グイン・サーガの外伝。栗本薫は読んでいたけれど、グイン・サーガは読んでいなかった。
    豹頭の戦士グインと吟遊詩人のマリウスは、旅の途中で時の止まった城に入り込んでしまう。
    自分勝手な城の人たちが時間の呪い受け、永遠に終わらない時に閉じ込められる。グインたちは時の呪いを止める伝説の旅人なのか。
    呪いの内容はおぞましいはずなんだが、絵面としては美しいような気がする。時の大河が押し寄せてくる場面は圧倒的です。

    『田中芳樹「流星航路」』
    銀英伝は読んでませんでした、知ったときには刊行されすぎていて追いつけなかったかもしれない。

    小惑星の飛び交う航路の客船兼貨物船に新たに派遣された若いエリート航宙士。彼の動きはどうも変だ。宇宙船の事故(人的)を通して、人の執念、嫉妬、慕情、ロマンチシズムが流れる。

    『武貴士「われても末に」』
    ずっと閉じられた古い門から出てきた少女との淡い、しかし真剣な恋。隔たれてもまた会うという気持ち。時間を超えての邂逅、人が受け継ぐもの。
    ==娘と…というのはちょっと複雑(-_-;)

    『森下一仁「若草の星」』
    爆発すると大暴れして破壊行動に出るシンは、懲罰として辺境の星に置き去りにされる。
    その星で接触してきたナメクジのような生物は、シンの心を読み取り、亡くなった恋人の姿に返信するようになる。
    ==SF的に悪い方向に向かう要素はたくさんあったのに、人間が自分の間違いを知り自分で自分を変える時を書いたお話だった。好きなことをして、宇宙を駆け回り、大切な人を失い、好き勝手に振る舞い、最後にたどり着いたのが自分の気持ちの中だったというのが意外だが良かった。

    『岬兄悟「夜明けのない朝」』
    思ったものが現実に現れる。繰り返すうちに死んだ恋人を蘇らせた。SFというのか心理ホラーというか。

    『水見稜「オーガニック・スープ」』
    SFなんだけど、SFだと限定し難いような、色々なものが詰まって完成されたお話。
    混沌の中から生命が生まれて進化して現代に続いている。そんな歴史が再構築される壮大さ、どこかで間違えたようなおぞましさ。そこに家族関係だとか終末感だとか。なんかすごいな。

    『日浦功「ウラシマ」』
    ある日突然うちの庭に現れた日本語を話すティラノサウルス。私は家の主人としてレックスと友だちになった。レックスの時代、恐竜は高度な知性を持っていた。レックスはある時、助けた亀に連れられて♪竜宮城に来てみれば♪タイヤヒラメの…というわけで、戻ってみたら自分が居た世界とはもう何億年も後のこの世界だったのだそうだ。

    『野阿梓「花狩人」』
    これまた色々な要素が詰まっている…。
    テレパシー能力を持つ一族、宇宙犯罪取締り、商売のために狩られる人間植物、懲罰として別の肉体を与え罰を遂行するシステムなどSF要素から、一部の繁栄のために犠牲になる存在や、自由を勝ち取る暴力活動だとか、人間が存在すると起こり得る問題が勃発する。絵面としては美しいような気もするんだが。

    『菊地秀行「ノクターン・ルーム」』
    ホテルで缶詰になりノクターンを作曲する作曲家。なぜここにいる?夜想曲とはなにを思うのだろう?

    『大原まり子「銀河ネットワークで歌を歌ったクジラ」』
    辺境の星にやってくるサーカス一団が連れてきたのは宇宙を泳ぐクジラだった。かつて地球にいたころに改造されたクジラは、宇宙中を旅して、その大きな体にあらゆるサンプルを溜め込んでいる。ただのガラクタのようなそれらは、持っていた人たちが美しいと思ったもの、留めておきたい物だった。そしてクジラが一番覚えていたのは恋愛案件だった。
    ==
    実はこのお話をおすすめされ、図書館で探したらこちらに収録されていたのでした。
    これはまた。人生に感じる厳しさやよそよそしさ、父親への反発や、違うものへの興味、おバカなことをしながらも成長してゆくという田舎の思春期物語のようである。そこに宇宙を泳ぎ愛を記憶するクジラというなんともおおらかなイメージが覆ってくる。

  • [pp. 51 以降]

    読了。自分にとって身近な印象の作家の名前が多い。多すぎて、ひとつひとつ触れられない…… なかでも、座談会でも触れられていたけど、大原まり子さんの作品はもっと読みたかったなぁと思う。

    --

    [p. 50 まで]

    新井素子「あたしの中の……」。本作が集英社文庫コバルトシリーズで掲載されたのが 1981 年。自分の初見はたぶんそのコバルト文庫だと思う。自分もだけれども、周囲も、当時ものすごく新井さんの文体に影響を受けていた。その頃の記憶もあるし、本作の内容的なものもあるのだろうけど、ずっと年上の親戚の思春期の頃の話を聞かされているような妙な心もちが、読んでいるあいだじゅうあった。エンディングは荒唐無稽で、ちょっと笑ってしまう。

  • 約500ページ 15作品

     最近は書いてない作家さんの昔の作品が読めてよかったけど、全体的には『SFの浸透と拡散』って割にはイマイチかなぁ。まだ残り3巻あるから、楽しみにしておこう。

  • <閲覧スタッフより>
    【SF文学諸作品】
    国内外のSF小説黎明期から現代まで、定番を中心に様々な作品を集めました。中には映画化されたものもあります!お気に入りの一冊を探してみてください。

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    所在記号:913.68||ニホ||3
    資料番号:10223087
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  • やっと出た第3集。第2集は思いがけず良かった。今回はラインナップを見て予想していたとおり、すごく面白いというわけではなかったが、まずまず楽しんで読んだ。巻頭作は新井素子さんで、これを書いたとき高校生だったんだなあ。才能がキラキラしている感じだ。

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著者プロフィール

1977年「わたしの中の・・・・・・」が奇想天外新人賞佳作に入賞し、デビュー。以後『いつか猫になる日まで』『結婚物語』『ひとめあなたに・・・』『おしまいの日』などを発表。1999年に発表した『チグリスとユーフラテス』が第20回日本SF大賞を受賞。

「2022年 『絶対猫から動かない 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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