皆川博子コレクション (1)

著者 :
制作 : 日下三蔵 
  • 出版芸術社
4.12
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本棚登録 : 135
感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (445ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784882934400

感想・レビュー・書評

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  • 全5巻かぁ、、、

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    「本年度、第16回日本ミステリー文学大賞受賞の著者幻の作品を集めたコレクション【全5巻】刊行開始!
    幻の未刊行作を含め、収録作全て文庫未収録作のみを集めた比類なき豪華傑作選、第1巻。
    巻末には、著者自身の言葉も掲載。
    ☆「皆川博子コレクション」は隔月刊行を予定しております。」
    出版芸術社のサイトに、桜庭一樹の推薦文が載ってます。。。
    http://www.spng.jp/sab_mystery2/minagawa_cl1.html

    目次
    PART1(長篇)
    ライダーは闇に消えた
    PART2(文庫未収録)
    地獄の猟犬
    私のいとしい鷹
    夜の深い淵
    孤独より生まれ
    ラプラスの悪魔
    ガラスの柩
    PART3(単行本未収録)
    火の宴
    花婚式
    湖畔
    サッフォの髪は火と燃えて

    ハイウェイ
    仲間

  • モーターバイクのメカニズムをここまで学ばれたとは、というのがまず驚きで、その知悉ぶりを大いに活かしたトリックを意欲的かつ的確に織り込んでいるから、例えその行為が成功する蓋然性が低かろうとも、この時代特有のおおらかな背景も含め、充分リアリティのあるミステリーとして楽しむことができる。
    個人的には、メッサーシュミットまで犠牲にするか…というのが、2つ目の驚きポイント。

    特にこの頃に書かれた作品によく見られる傾向かもしれないが、氏のミステリーはラストシーンにこれまた昭和テイスト溢れる豊かな情緒がある。
    そして、"普通"の仮面を付けて日常生活を送る人間の内に潜む屈折と闇を抉り出し、白日の下に晒す技術はピカイチ。
    一瞬にして平凡が反転し狂気に変貌する様は、読者にとってまさしく恐怖ですらある。

    「寺が地獄だから、俗世の俺に救いを求めた」

  • まず木原未沙紀女史の装画の美しさに魅了される。
    果たして中身も、美しくも恐ろしい伏魔殿、めくるめく皆川博子ワールド。
    表題作「ライダーは闇に消えた」張り巡らされたエゴとエゴの蜘蛛の糸は、若気の至りでは済まされない。絡め取られたのは誰だったのか。
    「地獄の猟犬」この・・・絶妙にテツとバードが同性愛におわせてるのが・・・皆川先生の筆の妙だよなあ・・・。だからこそヒロインが不毛で・・・地獄だ・・・。
    「私のいとしい鷹」かなしくも孤独な美しい男を取り合う二人の女ってのは皆川文学ではこの頃からあったテーマだったんだな・・・。
    「夜の深い淵」出た!!皆川文学定番の憎み合う姉弟だ!!
    「孤独より生まれ」ただの不倫ものをこのミステリにまで落とし込むのが皆川節だよなあ・・・。
    「ラプラスの悪魔」好きな女が中で燃えてるかもしれない火事場で自慰に耽る男って構図が強すぎて震えた。でもそういうの、皆川先生好きよね・・・。
    「ガラスの柩」血が繋がろうが繋がるまいが、女達の憎しみは連鎖し続ける。
    「火の宴」険悪不仲な夫婦の板挟みになる下男の発露。まあ当然のように地獄ですよね。
    「花婚式」収録作で一番好きかも分からん。この世の残酷のミルフィーユみたいで。
    「湖畔」皆川先生お得意の男女の性差による温度差もの。
    「サッフォの髪は火と燃えて」これもかなり好きだ・・・。皆川先生ファンとしては、上鶴さんの歌集読みたすぎでしょ・・・。先生作品の芸術家気質の女性は、いつもどこか闇を抱えてる。
    「蛙」幼気な子どもにちょっかい出す悪漢も・・・先生が書くと一風変わった感じになるんだよな・・・何故だ・・・。
    「ハイウェイ」皆川先生の手に掛かれば陳腐な昼ドラ展開もこうも狂い女の情念を迸らせた掌編と化す。
    「仲間」これをラストに持ってくるのに日下三蔵氏編集の妙を感じる・・・。

  • 入り込めなかった。

  • <収録作品>
    ライダーは闇に消えた
    地獄の猟犬
    私のいとしい鷹
    夜の深い淵
    孤独より生まれ
    ラプラスの悪魔
    ガラスの柩
    火の宴
    花婚式
    湖畔
    サッフォの髪は火と燃えて

    ハイウェイ
    仲間

    著者後記
    編者解説

  • 短編集。わかっていたけど、読んだ後に鬱々となる作品が多かった。読んでる時はどうなるのかハラハラするんですが、最後がどれもちょっと重い。

  • 70~80年代に書かれ、その後埋もれていた中短編を集めた作品集。

    表題作を始め、若者たちの投げやりで衝動的、破滅的な日々が重くのし掛かってくるものが多い。特に会話が印象的で、彼らの退廃的な姿が目に浮かび、まるで古いテレビドラマや映画を見ているような棒読みで早口にまくしたてる声が聞こえてくるようだった。

    作者との出会いは、学生時代に読んだ『トマトゲーム』(文庫本)で、自分と年回りの近い登場人物の刹那的な生き方に衝撃を受けたことを覚えている。その後は、妖しい魅力をたたえたミステリーなどを経て、『死の泉』でその力量に度肝を抜かれ、とりこになった。
    そして今回、絶版等になっていた作品を、豪華なコレクションシリーズとして読めるようになったのはありがたい。初期の魅力が満載のこのシリーズ、5巻まであるのかな。まとめて読むには精神的な負担が大きすぎるので、間隔を開けて月に1冊くらいのペースで読んでいきたい。

  • 今年で御歳84歳になる皆川さんの70~80年代の中・短編集。最近の作品もパワフル且つ妖艶でもあり独特の世界観に引きつけられますが、この頃の作品も、小品ながらも完成度の高さがあり素晴らしいですね。そしてこれだけの数を書ける創造の泉を持つ、スゴイです。

  • 絶版で長らく日の目を見ることがなかった初期の中短編が多数収録されていてうれしい。皆川作品に通底するテンポのよい会話や人間心理の不可解さ、渦巻く情念、行間から立ちのぼる妖気、凄みが、この頃からすでに萌芽していたのだと気づかされる。

  • 文庫未収録の中短編。70〜80年代の作品。「花婚式」「サッフォの髪は火と燃えて」が好き。


    「ライダーは闇に消えた」バイク仲間。
    「地獄の猟犬」バンド仲間。
    「私のいとしい鷹」鳥を飼う盲目の恋人。
    「夜の深い淵」姉と弟。幼い日の洪水。
    「孤独より生まれ」犬の訓練士。
    「ラプラスの悪魔」山荘の火事。写真集。
    「ガラスの柩」継母と姉妹。
    「火の宴」ガラス職人。
    「花婚式」寺の家族。池。
    「湖畔」イスラエル旅行。車のトランク。
    「サッフォの髪は火と燃えて」燃え上がる車。歌人と編集者。
    「蛙」通電。
    「ハイウェイ」空港への。
    「仲間」

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著者プロフィール

皆川博子(みながわ・ひろこ)
1930年旧朝鮮京城市生まれ。東京女子大学英文科中退。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁 旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞を、『恋紅』で第95回直木賞を、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞を、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞を、『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―』で第12回本格ミステリ大賞を受賞。2013年にはその功績を認められ、第16回日本ミステリー文学大賞に輝き、2015年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。

「2023年 『天涯図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

皆川博子の作品

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