星へ行く船シリーズ5そして、星へ行く船

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  • 出版芸術社
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784882934950

感想・レビュー・書評

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  • シリーズ最終巻

    あゆみちゃんに感じたイライラは彼女の超能力のせいとわかっても、それをなかなか受け入れられない彼女に歯がゆさを感じてしまう

    最終的に自分自身を受け入れて新しい旅立ちへ向かう少し切ないラスト

    水沢事務所の人達の暖かさに涙

    祈りが届いて早く火星に戻ってみんなに会えるといいね

    太一郎さんはあゆみにメロメロね

    αだよりは読んでるこっちが恥ずかしくなってしまった笑

    初めて読んだシリーズだけどとても面白かった!

    中高生の頃に読みたかったなぁ

  • 前作に引き続いて…。

    銀河連邦にたった一人のESP能力を
    活かして、初めて接触した他宇宙の
    知的生命体と、善意ある意思疎通をしてくれ。

    そんな依頼を受けた、森村あゆみ。

    彼女の能力は…?
    彼女の出した回答は?

    そして、太一郎との恋の行方は?

    話の大筋は、コバルト版と変わりません。
    でも、このお話も加筆改稿されて良くなりました。

    どんな能力をあゆみが持っていて、
    どうなるのか。

    そこをネタバレしたくないので
    ちょっとこのメモ書くの、苦しいのですが。

    初版を読んだ時は、正直

    そんな悲劇的な能力じゃないし
    たぶん依頼もうまくいくのに
    何をこんなにあゆみは困ってるんだろう…。

    何巻も引っ張って、シリーズ完結にしては
    地味だし、あまり面白くないなあ…なんて
    思ったものでした。

    でも、このお話は異能SFがメインじゃなくて
    SFであるけれど、初版のあとがきで新井さんが
    おっしゃっているとおり、あゆみちゃんの
    成長譚なんだとしたら…。

    多分に心理描写に重きをおいた
    内面を描く小説になったのは自然なことで。

    今回の決定版で、何故あゆみの能力が
    彼女を追い詰めるものだったのか、とか

    親しい人と一緒に生きることも必要だけれど
    そこから切り離された部分で、自分を磨く
    責任が、個人には誰しもあって、それを
    成長と呼ぶんだ、とか…。

    色んな事がスッキリ腑に落ちる形で
    再認識できたので…。

    あゆみの巻き込まれた事態に対して
    そりゃあ大変なことだ!と共感できるように
    整理された小説になってます。

    これ、実は、あゆみに来た依頼の特性が

    『やってみなけりゃどうなるかわからない。』

    『結果の予測がまるきりつかないが
    最善を尽くすしかない。』

    『後戻りできず、自分で考えて引き受けるしかない。』

    『一生続く。』

    というもので…これ、依頼と人生が置き換わっても
    全然違和感ない辺り、さすがコバルトから始まった
    シリーズだと思うんですよ。
    (厳密には高1コースの連載でしたっけね。)

    ひとりの女の子が、自分の人生を
    愛する人や家族と一緒に構築して
    共存はするけど、責任は自分で負うお話。

    おとなになるってこういうことよ。
    というお話なのですね。

    但し、あゆみちゃんはほんとにいい子なので
    ちゃんと幸福で、希望のあるラストなのは
    読後感が最高に良いです。

    太一郎さんとの新婚生活も読めるし
    なんとなくなし崩しに、なんだかわからない
    ラストだった彼らのロマンスも、ちゃんと
    プロポーズされて、

    (同時収録の番外編では式挙げて…
    新婚生活して…。

    うん。

    納得のラストでした。
    彼らの関係が、どことなくうやむやだった
    尻切れトンボ感がなくなって大満足。

    およめさんがゆめ、とは言いませんが
    少し前までの、良いお家の娘さんが
    奥様になった時の結婚観ってこうだったなと
    ほのぼのと読めました。

    すきなひとに、朝のお茶、淹れてあげる幸福。

    そんな感じ。

    コバルトの方では

    『星から来た船』(上・中・下)
    と番外編の本があるのですが

    いつか本当に太一郎さんとあゆみちゃんが
    彼らの子供を連れて地球や火星に里帰りする
    なんてお話は出るでしょうか。

    なんとなくそのまま宇宙で暮らしていて
    火星や地球なんて知らない、孫の世代とかが
    遊びに帰ってきそうな気もするし

    あゆみちゃんの両親に、二人ならちゃんと
    子供を見せに帰りそうな気もするし…。

    別にそこらへんはかっちりと書かれなくても
    今回の決定版で、ちゃんと『星へ行く船』
    シリーズは完結したんだって、納得がいきました。

  • "あたしがここにきたがっていた。何でだか判らないけど、そう、確かに、あたしはここに来たくてしょうがなかったんだ。ここへ来てーーそして、ピンクの空と、ちいさなおひさまを見て……。
    ……そうか……そうだ。
    あたしはそっと両手をまわして、自分で自分の体を抱いてあげた。ゆっくりと、優しく、ありったけの思いをこめて。
    田舎で見た、満点の星。やっぱり、あれがすべての始まりだったんだ。あそこで見た星が、あたしの運命だったんだ。
    シノークの砂漠で。家に帰ろうと思った。帰って、あったかい部屋で、窓の外に降っている雨を見ながら、紅茶いれて、ショパンのピアノ曲なんか聴きたいと思った。でもーーあの時あたしは、帰らなかったんだ。"[p.275]

  • おそらくファーストコンタクトに分類されるSFで、相手となる異星人が登場しない希有な作品なんではないだろうか。ほぼあゆみちゃんの心理的葛藤だけで1冊書ききってしまうあたりが新井素子だなぁ。
    今回のシリーズには各巻に短編が1つ追加されていますが、この巻のバタカップ編が最高じゃないだろうか。
    あと、ここまでやったからには「星から来た船」も、同じ装幀で出して欲しいな。

著者プロフィール

1977年「わたしの中の・・・・・・」が奇想天外新人賞佳作に入賞し、デビュー。以後『いつか猫になる日まで』『結婚物語』『ひとめあなたに・・・』『おしまいの日』などを発表。1999年に発表した『チグリスとユーフラテス』が第20回日本SF大賞を受賞。

「2022年 『絶対猫から動かない 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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