医者、用水路を拓く―アフガンの大地から世界の虚構に挑む

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著者 : 中村哲
  • 石風社 (2007年12月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784883441556

医者、用水路を拓く―アフガンの大地から世界の虚構に挑むの感想・レビュー・書評

  • 涙を抑えながら読むのが大変でした。
    6億円の巨費と膨大な人力(人数・時間)をかけた用水路が危機に瀕したとき、著者を呼ぶ息子の声。「おとうさん」。
    たった2週間の看とりで、息子を喪った父がどんな思いでそれを聞いたのか・・・。

  • 読んでよかった。
    土木の、魅力や喜び。国際協力というものの光と影、技術移転における"現地化"の重要性、伝統技術の英知...。
    組織論として、人と人で仕事をしているのだということ、信念と目標をかかげ、あるいは時には自ら手を動かすことの重要性、、大切な物事が本当に詰まっている!
    とくに、土木技術や組織経営にういても色々試しており、その軌跡は現地化の術としても参考になる。

    とりわけ深く感嘆するのは、水理を、現地のことから学び、現地の自然条件をも的確にとらえ、さらには時々、九州の河川施設から山田堰の斜め堰や、水制といった工夫の意義をよみとり、解釈し、実現していること。
    木下良作さんさえ思い出す、まさに河川の臨床医。現地のひとびとに熱狂的に喜ばれるというのも納得がいくし、どこか誇らしい。

    なお、前段は国際社会によるアフガニスタンへの経済制裁や空爆に対する反感を記したもので、やや長いが、それを仕事へのバネにしているのには好感。

  • HUMICでの請求記号「517.13/N 37」

  • おもしろかったです!
    最初に水が流れたところでは感動して泣きました!

    アフガンで診療所のボランティアをやっていた医者が用水路を建設するというお話です。
    時期はちょうど911テロ事件のちょっと前からで、ずっと前から現地で活動していた人の目から見た対テロ戦争や国際支援団体のことが書いてあるのもおもしろかったです。
    言葉がストレートで、現地で長く働いている人の言葉なのでとても説得力があります。
    技術的な話がなかなか多くてよくわからないところもありましたが、とても勉強になりました。

  • ペシャワール会が井戸を作ったことは知っていたが、まさか水路まで作っていたとは……。現地で働く中村の言葉から、アフガン復興の実態がよく分かる。

  • アフガニスタンの内情を伝える良書。
    著者の情熱と行動(&判断)の早さは、
    勇気だけでなく、あらゆる人に「行動の大切さ」を
    教えてくれる。

  • 少し古い話になってしまう.
    中村哲氏は元々は医者.

    しかしアフガンの難民を救うためには,そして以前の様な古き良きアフガンを復活させるためには医療行為よりもむしろ水の確保が重要であると考える.

    日本も当時,自衛隊派遣をするしないでかなりもめた時期であった.
    そんな中,いくら政治家が机上の空論で何かを唱えたとしても,何よりも著者の様な現場の人間の意見は重く,説得力にあふれている.

  • 現場で苦労している当事者の言葉は説得力を持つ。
    先日テレビで放映された番組をきっかけに、アフガニスタンで医療活動と現地復興に取組むペシャワール会の活動を記録したこの本を読んでみました。
    これは代表・中村哲氏による手記をまとめたものです。

    当初、医療支援として「ハンセン病」の撲滅に取組み、その後医療全般への活動へ
    展開、その後は地域の衛生環境向上のため井戸の掘削による水資源の確保を目指しますが、地下水の減少を機に用水路工事に取り組んだという経緯です。
    中村医師の職業は医師であり、土木事業については知識も経験も無い中で、福岡にある用水路を作った先人達の技術を参考にしながら考え、応用できる土木技術を習得していきます。とにかくアフガニスタンの人達の役に立ちたいという熱意と、逆鏡に負けない強靭な精神力で現地人と日本人スタッフをまとめ、現地の用水路建設に努力する様子が伺える手記になっています。
    彼は医療という末端の支援活動からスタートしたのですが、結局それだけでは現地の問題は解決しないとの認識から、徐々に生活・衛生環境改善という「源流改善」にシフトしてさせていき、大多数の人を救うには用水路建設しかないとの信念を貫いて活動する姿にはとても感動します。
    実際、1人の人間が出来ることは限られていますので、いかに人を動かしていくかが事業推進のポイントになっています。彼が多くの人を動かすことができるのは、現地の言葉で話し、長年少しずつ積み重ねた現地人との信頼関係にあります。上から目線の支援ではなく、現地の人の立場に立って、現地人と一緒に長年取組んできたことが成果となって現れてきたのでしょう。用水路は作ってしまえば終わりというものではなく、メンテナンスが大変であること。今後も工事は続いていくことを考えると、この手記で語った部分は単なる通過点なのかもしれません。
    今後のペシャワール会の活動には注目していきたいと思います。この本を読んでいくと、自分も何らかの支援をしてあげたいという気持ちになるくらい読み応えのある本です。
    この本を一冊買うことでも多少なりとも支援になるのではないでしょうか。

  •  アフガニスタンの歴史は文字通り戦乱の歴史である。紀元前6世紀にはペルシャ帝国に組み込まれ、紀元前4世紀にはアレクサンドロス大王に支配された。19世紀には「グレートゲームの舞台」と称されていた。それは血塗られた抵抗の歴史といってもいいだろう。今も尚アフガニスタンの農民は銃を扱っている。

    http://d.hatena.ne.jp/sessendo/20100409/p4

  • タイトルにあるとおり、医師である中村哲先生が、アフガニスタンで用水路を造るという壮大なプロジェクトです。中村先生のすごいところは、資金集めから現地スタッフの指揮まで全部やってしまうところです。
    単にお金を出すだけではない、本当の援助の壮絶な現実が書かれています。中村先生は今もプロジェクトを続けています。アフガン情勢がどんどん悪くなっていく中、ニュースを覚えている人もいると思いますが、現地の日本人スタッフが亡くなったこともあり、本当に大変なおもいをされていると思います。
    ボリュームのある本ですが、ぜひ読んでほしい一冊です。

  • 多くの言葉は必要ない。まずは手にとって読むべき本だ。

    読み進む途中で何度か涙がこみ上げた。決して安っぽい感傷とかではないと思う。もっと根源的な何かが響いたのだと思う。

    世の中の出来事に対して思考停止してはならない。そしてちっぽけな自分の生をどのように生きるかをこの本は問いかけている。

  • 本当の事がかいてあるとすると、マスコミ報道と現地の状況がここまでずれているのかと暗澹たる思いになります。
    何を持って判断すればよいのかと思います。

    もっとも、この本自体は2/3は用水路の技術的な話なので、河川関係の土木関係者が読んでも大いに参考になると思います。
    逆に、国際支援系の人が読んでも、技術的なところは読み飛ばして、現地の人との交渉だとか、ないないづくしでどう事業をすすめるのかといった視点で読むと参考になると思います。

  • 21/11/21 85 すごい人がいます

  • 「報道されてきた『アフガン復興』の明るい印象と裏腹に、私たちは黙々と声なき人々と苦楽を共にしてきた。『復興支援』が武力介入とセットで行なわれる偽善と弊害は、繰り返し述べてきた通りである。決して外国人に善意が欠落していたのではない。どこから何を見ようとしたか、誰の立場で善意がつくされたかである。国際社会、国際平和、国際貢献、国際協力、国際交流、国際化、国際テロ―私たちも大方のアフガン人も、もう『国際』という言葉に、アフガン戦争(一九七九−八九)の結末以来、うんざりしていた。」(本書あとがきより)

    本書は、アフガニスタンにおいてハンセン病対策の医療支援を出発点とし、井戸掘削及び灌漑事業など幅広い支援を繰り広げてきた中村哲医師とPMS(ペシャワール医療サービス)の記録である。

    国際貢献が語られるにあたっては、まず現地住民のニーズを無視した援助が問題とされてきた。その解決策として、住民と話し合い地元の意思を尊重して事業を進めていくべきだということはある種「常識」となった感があるが、実行せよといわれても容易にできることではない。本書はその「実行」を丹念に記述した良書であり、「人を助ける」とはどういうことなのかを深く考えさせてくれた。日本人がいくらアフガニスタンで支援活動を繰り広げても、未来永劫日本人が居続けられるわけではない。主役はアフガン人であり、彼らのための支援であるべきだ。文中においては他のNGOの身勝手振りを批判する行がしばしば見られるが、どこまで事実かどうかは別にして、いかに援助団体とかいった類のものが玉石混交であるかがわかる。

    事実的な面に目を向ければ、水際的ともいえる医療支援(もちろん筆者は医療活動の必要性も強調しているが)よりも綺麗な水と安定した食糧供給がどれだけ重要かということが繰り返して述べられる。この二つは、現代日本においては空気と同じくらいその存在が希薄化しているものであり、重要性を認識するのは難しいかもしれない。また、先進技術がいかに無力かということも強調されている。用水路を拓くにあたっては、完成後の補修可能性まで含めて考えなければならないわけだが、この点において日本の最新土木技術などまったく頼りにならないことが分かる(コンクリートで固めても定期的な高レベルの補修が必要となるため)。医療支援に関しても同様で、高価な薬品と最新の医療設備を駆使して提供される医療サービスに熟達した医師は、アフガニスタンにおいては無力である。常に大事なことは、「所与の環境でどうするか」という原則である。

    本書の大半は灌漑のための用水路建設事業の経過記述に当てられているが、師のいう「素人集団」が試行錯誤の末に台地に緑を取り戻すまでの過程は感動的ですらある。日本の古き先人達の知恵に頼り、自然に逆らわずに建設されたこの用水路がアフガンの台地を潤し続けることを願ってやまない。

    また筆者は、地に根ざした支援活動を行なう上で二つのことを強調している。現地住民を信用し、相互信頼関係を気づき挙げること、支援者側の価値観を押し付けず現地の政治構造を尊重してことにあたることの二点である。至極当たり前の2点であろうが、この2点を徹底していない多数の主体のためにアフガニスタンは現在も「国際社会」に振り回されているのだろう。

    私は高校一年のときに9.11テロをニュースで目の当たりにし、その数ヵ月後に中村医師の講演を聴いたことがある。日本の世論が反テロ・反タリバン一色で、アフガニスタンの人々のことなどまったく報じられない中、硬直化した私の視点を180度逆の視点から叩いてくれたことをはっきりと覚えている。大学に入り多様な視点を客観視するということに対してだいぶ慣れてきたため、本書を読了した時には驚きよりも共感を覚えた。

    パワーショベルを操縦する小柄な中村医師を見たとき、尊敬の念を抱かずにはいられなかった。彼は用水路を拓く今も医者なのだ、アフガニスタンという国を助ける医者なのだと感じた。

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医者、用水路を拓く―アフガンの大地から世界の虚構に挑むの作品紹介

白衣を脱ぎメスを重機のレバーに代え大地の医者となる。「百の診療所より一本の用水路を!」パキスタン・アフガニスタンで一九八四年から診療を続ける医者が、戦乱と大旱魃の中、一五〇〇本の井戸を掘り、一三キロの用水路を拓く。「国際社会」という虚構に惑わされず、真に世界の実相を読み解くために記された渾身の報告。

医者、用水路を拓く―アフガンの大地から世界の虚構に挑むはこんな本です

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