劇画漂流 上巻

  • 青林工藝舎
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784883792733

感想・レビュー・書評

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  • 劇画について淡々と書かれている、これも面白いマンガ。劇画は手塚治虫にとって鬼門だったけれど、みんな尊敬してたんですね。

  • 映画『TATSUMI』を観て購入。
    長編作品だけに、映画では描かれていないエピソードがたくさんあって、むしろそちらの方が読み応えあったw。

  • 1950年代後半、“劇画宣言”を提唱した辰巳ヨシヒロによる半自伝劇画。なぜ“誕生”ではなく“漂流”なのか、が本作の妙味でもある。



    手塚治虫に憧れた少年ヒロシは、ストーリー漫画の薫陶を受け、十代から貸本マンガを手掛けるようになる。戦後の占領下で規制されていた娯楽の解放、『新寶島』以降の赤本ブームにより少女もの、時代活劇、文学物などジャンルは飛躍的に増えていたが、まだ当時はマンガは児童向けや生活もの(『轟先生』『サザエさん』等の新聞連載)が主流とされていた。


    その一方、赤本ブーム後の貸本業界における読者層は、労働者階級の若者たちが中心だったこと、映画とストーリー漫画文化の影響を受けた若い世代の漫画家たちは、ユーモアや画一的なヒーロー像に依らない“より新しい実験的なマンガ”、“同世代のための・大人向けのマンガ”を追求するようになる。


    大阪で貸本漫画を描いていた辰巳ヨシヒロが中心となり、石川フミヤス、K・元美津、桜井昌一、山森ススム、佐藤まさあきで「劇画工房」を発足し、更にさいとう・たかを、松本正彦を加え、『影』(日の丸文庫)、『街』(セントラル文庫)、『摩天楼』(兎月書房)など劇画雑誌を次々にヒットさせ、貸本ブームは最盛期を迎える。


    しかし、『少年サンデー』『少年マガジン』といった週刊少年コミック誌の登場やTVの大衆化によって、若者文化の中心的だった貸本のシェアは徐々に衰退。劇画工房自体も辰巳、さいとう、松本の脱退を機に分裂。1960年代後半は青年コミック誌も多く発刊され、学生運動隆盛においては「右手にジャーナル、左手にマガジン」とマンガは若者文化により深くコミットした存在となった。そして1960年代、学生運動の終わりとともに、貸本出版と旧来の貸本業も姿を消した。



    現在では劇画とマンガとの垣根は曖昧なモノとして忘れられつつある(マンガ全体の中の劇画なのか、マンガと劇画は別物なのか問題)(今日ではさいとう先生や池上遼一先生のような「写実的でドラマティックな画風」と解されがち)。そうした手法に至るまでのマンガ家たちの熱情や試行錯誤、映画やハードボイルド文学といった海外文化からの影響や時代背景、マンガと出版業界と読者との関係など、めまぐるしく移り変わった半世紀を詳らかにしてくれた功績には一マンガLoverとして感謝してもし尽くせない程だ。


    本作は、1995年から2006年にかけて「まんだらけ」カタログ誌に掲載されていたが、打切により1960年代以降の状況について多くは触れられぬまま終わっている。それがさながら主人公が青春のすべてを捧げた“貸本時代”と符合して、さらに感慨深い。またこの作品を世に送り出した青林工藝舎、手塚治虫文化賞大賞(2009年)を捧げる名采配を見せた選考委員にも拍手を送りたい。

  • すみません。体質的に劇画を受けつけませんが、著者が劇画界を牽引していらしたことには敬意を払いたいと思います。

  • 関西の脱手塚を図った劇画の流れと貸本事情を知ることが出来る貴重な漫画である。藤子不二雄Aの「まんが道」やNHKドラマ「ゲゲゲの女房」等とリンクする部分もあるので面白い。あの有名漫画家が劇画の流れのここにいたのか!など驚く発見も多く、昔の漫画なんて…と思わず読んでみてほしい。

  • 第13回手塚治虫文化賞受賞

  • 手塚の対比としてよく語られる白土三平。
    それ以前の劇画の勃興を語る貴重な証言。

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著者プロフィール

1935年大阪生まれ。漫画家。中学で手塚治虫に傾倒。高校2年時の作品「こどもじま」でデビュー。54年、大阪日の丸文庫に持ち込んだ「怪盗紳士」が採用となり、以後、主に日の丸文庫で活躍。従来のマンガに比べリアルな表現を追求、57年暮れ、その手法を「劇画」と名付ける。60年代後半にはメジャー雑誌を巻き込んだ「劇画ブーム」が起こるが、一方で本来の意味を失った「劇画」に幻滅。社会の底辺を描いた短編連作を手がけるようになる。これらの作品は発表当時こそ大きな反響はなかったものの、近年は国内外で評価され、仏アングレーム国際BDフェスティバル遺産賞、米ウィル・アイズナー賞、日本の手塚治虫文化賞大賞など受賞歴多数。主な著書は『劇画大学』『劇画漂流』など。

「2014年 『再び大阪が まんが大国に甦る日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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