TATSUMI

  • 青林工藝舎
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784883793440

感想・レビュー・書評

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  • (2023-02-09)

  •  辰巳ヨシヒロの作品集『TATSUMI』(青林工藝舎/840円)を購入。

     辰巳は「日本のオルタナティブ・コミックの第一人者」として、国内よりもむしろ海外で評価が高い。
     昨年には、彼の作品がシンガポールでアニメ映画化された(監督はエリック・クーという人)。その映画『TATSUMI』は、自伝作品『劇画漂流』を中心としたストーリーで、代表的短編5編の内容も盛り込まれたものなのだという。
     映画『TATSUMI』は昨年のカンヌ映画祭の〈ある視点〉部門に選出され、アカデミー賞外国語映画賞のシンガポール代表作品にもなった。

     本書は、その映画公開に合わせて企画された作品集。映画『TATSUMI』の原作5編を含む短編8編が収められている。いずれも、1970年代初頭に描かれた辰巳の代表作である。
     
     場末の映画館のスクリーンに辰巳作品のワンシーンが映し出される……というイメージの装丁が、じつに素晴らしい。

     1970年代の辰巳作品を集めた本というと、小学館文庫に『コップの中の太陽』『鳥葬』の2冊があり、本書の版元青林工藝舎からも、『大発見』『大発掘』の2冊が刊行されている。

     しかし、小学館文庫版はすでに入手困難だし、本書の収録作8編のうち7編を含む『大発見』(全13編)は古書で高値を呼んでいる。

     つまり本書は、『大発見』を入手しやすくした普及版ともいうべきものになっているのだ。
     珠玉の名編「グッドバイ」を含む8編は、どれも暗くてじめじめしていて貧乏臭いのだが、しかし傑作揃いである。近年、「下層労働者の心情を初めてリアルに描写したマンガ家」として再評価されている辰巳だが、その真骨頂ともいうべき作品群なのだ。

     『劇画漂流』で久々のヒットを飛ばすまで、日本では「忘れられたマンガ家」と化していた(マニアはともかく、一般マンガファンにとっては)辰巳ヨシヒロ。その作品世界への入門編として好適な一冊だ。

  • ガロ収録分以外初読
    あと劇画漂流映画化なのね

  • 昭和大衆史の見捨てられた部分がみっちり!映画化が更に楽しみになった!

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著者プロフィール

1935年大阪生まれ。漫画家。中学で手塚治虫に傾倒。高校2年時の作品「こどもじま」でデビュー。54年、大阪日の丸文庫に持ち込んだ「怪盗紳士」が採用となり、以後、主に日の丸文庫で活躍。従来のマンガに比べリアルな表現を追求、57年暮れ、その手法を「劇画」と名付ける。60年代後半にはメジャー雑誌を巻き込んだ「劇画ブーム」が起こるが、一方で本来の意味を失った「劇画」に幻滅。社会の底辺を描いた短編連作を手がけるようになる。これらの作品は発表当時こそ大きな反響はなかったものの、近年は国内外で評価され、仏アングレーム国際BDフェスティバル遺産賞、米ウィル・アイズナー賞、日本の手塚治虫文化賞大賞など受賞歴多数。主な著書は『劇画大学』『劇画漂流』など。

「2014年 『再び大阪が まんが大国に甦る日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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