秘密 (Holly NOVELS)

著者 :
  • スコラマガジン(蒼竜社)
3.87
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本棚登録 : 619
感想 : 70
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784883863198

作品紹介・あらすじ

真夏の夜、寝床を捜して深夜の街を彷徨っていた啓太は、杉浦充という男と出会いセックスを条件に部屋に泊めてもらう。男と寝たい訳ではなかったが、啓太は自分のアパートに帰りたくなかった。大きな冷凍庫が唸る部屋で、独り夢を見たくなかったからだ。悪夢を抱えていた啓太にとって、泊めてくれる杉浦は都合のいい相手だった。しかし、杉浦の一途な想いに心が揺れるようになり…。

感想・レビュー・書評

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  • 主人公が人殺しをしていないのは性格から察しがついていましたが、人殺しをした恐怖で雁字搦めになっていて、尚かつそれをどう隠蔽しようかと狂った頭で考えているのを永遠と読まなきゃいけないのは苦痛でした。
    愚かな子を見ているのは辛い!
    でもそれも1章目のラスト2ページを読んだときの満足感のためだったんだと後から思えば、不満も昇華されました。
    最後2人の心が淀みなく、今までの濁った感じから解放されて透明できれいな水が溶け合ったみたいに優しく柔らかいほんわかした雰囲気で終わるのがとっても巧みでした!
    今まで汚水だったものが聖水に変わったよ!!みたいな変貌がこれぞまさにハッピーエンド!!でした。
    今までの劣悪に見えていたものが全て光り輝く宝石だったんだ!!と思うように最後きらきらしてました。
    楽しかったです。

    秘密1・2・3を通しては、充が出来すぎ愛おしい。
    何この完璧な子!!憧れる!あなたの寛容さ!
    きっと幸せになってくれると信じれる、生きようとすることに対する強さが充からは感じられてトキメキます。
    すごいシェフになってディスレクシアだとインタビューで告白して、それでも「僕は幸せです」って答えて勇気を与えるんだろ!
    「お手紙も大切に読ませて貰ってます。たまに読めないときは恋人に教えて貰って、みなさんの気持ちはすべていただいています。」ってファンレターへのコメントのはずがさり気なく啓太とのらぶらぶっぷりを公共にばらまくんだろ!

    自分の愛を隠さないキャラは格好良すぎる愛おしい。充らぶい!

  • ネタバレを知った上で読んだけど、楽しめました。
    本編もよかったのですが、充の家族の話がとてもよかったです。充の家族に対する思いが、もしかしたら少しだけ報われるかもしれないと感じさせる結末にほっとしました。

  • 内容ネタバレしない程度に言うと、最初こそドロドロ暗いですがハッピーな感じで終わっています。
    収まりは悪くないし後味もとても良かったんですが・・・最初こそ内海に焦点を当てていたものの、後半は攻めである杉浦の抱える事情の方が重要になっていて展開がまるで変わり、言ってしまうと前半と後半のギャップがありすぎるというか上手くいきすぎている感はありました。あんなに前半重い展開だったならいっそメリーバッドでも良かったのに・・・そう思えるくらい前半にはリアリティのある重苦しさがありました。

  • 恋人を殺して冷凍庫に入れてしまい・・・という
    衝撃の冒頭ですが、読んで行くうちに、
    これは妄想だな・・・と何となく分かって行きます。
    そういう意味では、あまり「秘密」ではなかった。
    でもこれは、ディスレクシアの充の物語だったのですね。
    ディスレクシアについてこんなにガッツリ書いた小説は珍しいのではないでしょうか。
    充の生い立ちが悲しく辛く、
    どうしようもない男に惚れてしまい、
    従兄の孝則のいらだちがよく分かったのですが、
    (でもあなたも大概酷かったですがね・・・)
    最終的には啓太がすごくいい恋人になって、
    献身的に充を支えてあげていて、暖かいラストでした。
    充の家族とも和解できそうで良かったな・・・。
    さぞかし痛い展開なのだろうなと思ったから
    ホッとしました。読後感がとてもよかったです。

  • 閉塞感のある話が好きなのでとてもよかった。秘密のある人×秘密のある人。

  • 何となく読めずにいた本。先にレビューを読んで興味を持ったので購入したのだが、やはりこれは「秘密」を知らずに読んだ方が楽しめるかなと感じた。
    LDだからってあんな幼い話し方になるかなあ?ってのが気になるが、伏線になってんのかな。
    個人的には充の母親が許せない。3で余計そう思ったけど、それでも充は許すんだろーなー切ない。
    BLで珍しいテーマだとは思った。

  • 最初は知的障害の話かと思っていたら、識字障害のひとの話だった。最初はどうなるかと、ハラハラ読んでいたけど、ハッピーエンドで終わっていて、すごく読了感がよい。

    茶屋町勝呂の挿絵のせいか、魚住くんシリーズを連想。どこか、純粋なところの残った男が、魚住くんとカブる。
    これも、続きがよみたくなる話。

  • ほろりと最後に気持ちいい涙でした。充と啓太のお話なんですが、最初は苦しくて…でも思いの外甘かったです。良かったなぁ…とジーンとしてしまった(つд`)特に秘密3ではもう…根っからの悪い人じゃなくて良かった…と。

  • 一種の学習障害を持つ純粋すぎる男×根暗で妄想癖がある大学生
    あとがきで木原さんも似たようなことをおっしゃってますが、序盤、少なくとも前半くらいまでは受けの啓太の『秘密』についての話なのかと思ったら、実際読み終わってみると攻めである杉浦充という人についての話だった。
    恥ずかしながらディスレクシアというものについてほとんど知らなかったので、そういうものがあるのか、という点で思わぬ勉強になりました。
    冷凍庫の中の死体については、最初から啓太の妄想なんだろうな、と思っていたらやはり妄想だったので、予想通りすぎて拍子抜けしてしまいましたが、書き下ろしの秘密2と3によってそれを上回るカタルシスを味わえたので星5。
    充の従兄弟や弟視点で充について知り、杉浦充が大好きになった。秘密3最後の「おそろしく汚い字で『おかあさん あか おとうさん むらさき……』……最後の『いつき あお』の下に、一行『ほんとうに、ばいばい』」で泣いてしまいました。充はこれだけ書くのにもきっとものすごく頑張ったんだろうなあ、と思うと涙が出て来た。勿論そのあと充の部屋に母と妹と甥っ子が尋ねて来るシーンも涙で目の前が滲んだ。良かったなあ。

  • ★4.0。木原さん初読。戦々恐々として読んだら、サスペンスのような仄暗さに引き込まれ、最終的にいい話だなあと感動。基本的にサスペンスやミステリー系のBLが好きなのでそれだけでも読みごたえあったんですが、受の身代わりになるほどの攻のピュアなヤンデレ愛が充分過ぎるほど報われて良かったな…としみじみする読後感でした。あんなに頼りなさそうなのにSEX上手の絶倫攻というのも…狡い(笑)どこか利己的だった受があそこまで甲斐甲斐いしくなるとは。愛だなあ、愛。身構えてたけど、これは木原作品の中では甘い部類なのかな。

  • カミュの小説みたいでおもしろかった。妄想癖のある受け萌えるな。

  • ハラハラして面白かったけど、他の作品と比べてしまうとちょっと劣るかな。
    木原さんの書く話は常に先が気になって仕方なくてページをめくる手が止まらないんですが、この本に関してはそれがなかったです。
    秘密の意味が早い段階でわかるからかな。
    それでもやっぱり面白かった!いろいろ考えさせられました。

  • 初めて木原先生の作品で読んだ本。
    個人的にBLでは1番好みの本。おもしろい!充さん大好きです。
    記憶がなくなってもまた読み返したい話だし、死んだら一緒に燃やして欲しい本。
    オススメ

  • 木原さんの作品は元気な時じゃないと読めないので、あまり数はこなしていませんが、わりと好きです。今回は単純に好みじゃありませんでした。低評価でごめんなさい。木原さんの、緻密で妙にリアルな描写は素晴らしいと思う。『美しいこと』や『深呼吸』や、かなり痛いけど『コールドシリーズ』も大好きです。
    特に、人間の弱いところ、ずるいところ、ダメなところを書かせたら、秀逸なのですが、やはりそういうものを読むにあたっては、受け取る側にもそれ相応の覚悟が必要です。だからこの作家さんの作品は精神状態がいい時じゃないと受け止められないと警戒して、なかなか手が出せません。
    本作品は、冒頭でいきなり受の男の子が、家に帰りたくない。その理由は家に死体があるから。その死体はロクデナシの元恋人だということがわかります。いきなり殺人犯です。いったいどういう着地点をめざしているのか想像もつかず、のっけから不安になります。
    一方、攻もディスクレシア(難読症)という学習障害を持っていて、お互いがお互いに秘密を抱えています。この攻くん、ピュア過ぎて、ちょっと知的障害?と思わせる雰囲気。しかも愛がひじょーに重たい。
    端的に言ってしまうと、受の殺人は実は本人の妄想だったというオチですが、それでもふたりの愛は滞りなく進行していきます。
    この物語をどこかが欠けた者同士の純愛と捉えられれば、感動できるのかも。わたしは単純に趣味じゃなかった。そして、茶屋町勝呂のイラストが怖かった。ごめん。

  • 冒頭から、サスペンス寄りのミステリ要素が非常に強く、むしろBLと言うジャンルで書かれている、と言う感覚がなくなる様な感触を覚えた。BL特有の濡れ場描写も客観視が徹底しており、性行為そのものを山場とするBLの描き方とはちと違う気がする。性描写を緩くしている、と言うのではなく、その面もきっちり押さえられているのに、数少なく読んだ他のBL小説とは明確に描き方が違う気がする。男同士の関係性に於いて、男同士の性描写は普通にある訳だが、そこが山場ではない、と言うか。行為そのものに「煽る」描写は殆ど感じられない。肉体の描写を詳しく書いてエロ度をあげる書き方はしてない。だけど、二人の男の肉体が抱き締め合っている力の強さとか、接触している皮膚が汗ばんで体温が上昇している様などがエロさとして伝わってくる。声を台詞として書くこともない。だけど、エロい。声の描写や局部の描写の実況タイプではなく、行為を行動描写として端的に書いてあるのが個人的に非常に好みで、こう言う文体で書かれるから、BLを読んでいる、と言うより一般小説を読んでいる、と錯覚してしまうのだろう。実況中継的に書かれるものも勿論好きなのだが、結果を簡潔に書かれた方が逆に状況が伝わっている、と言う場合もある、と言う感じだと思う。記憶喪失モノもそうだけど、ミステリ要素を踏まえて「恋する」と言う現象を事件として捕えた様な書き方で描かれる「恋愛もの」ってやっぱ面白い。

  • まさか一体誰がしょっぱなから巨大冷凍庫に死体が入ってると思うよ?
    これ…BLでよかったんですよね………?
    な感じの読み始めでしたが、序盤で謎解き出来てしまい、以後安心しながら読むことが出来ました。とはいえ、お話は至って真面目。
    純粋すぎるくらいに純粋な心を持った攻の杉浦と、卑屈で微妙に根暗な
    受の啓太。
    このお話はそれぞれが持つ『秘密』に焦点をあてたものだとは思うんですが、もの凄い家族愛のお話でもありました。
    行き詰まり、袋小路に追い詰められていくように見えて、それでも最後は
    もの凄く救いのあるお話で心がぽかぽかになりました。

    杉浦、よかったね、うん。
    ラストの1ページに涙します。ホント、杉浦よかったね。

  • 初の木原作品。

    表紙はあんまり好きじゃないんですが(苦笑)内容は面白かった。
    最後は、泣いてしまった。

    登場人物は個性豊かです。
    でも、他のどのBL小説とも雰囲気が違う。
    木原さんのこの独特の世界観が好きです。
    他の方もよく言ってますが、木原さんの作品を「BL小説だから」というだけで読まないのなら本当にもったいないと思う。

    heavyな作品も多いと評判の木原作品の中ではlightな方だと思います。

  • おもしろかった。
    けっきょく啓太の死体云々のあたりは全部妄想だったわけだけど、その結末(冷凍庫には端からなかった)を最初からわかっていたにもかかわらず、結局そのわかっていた結末も微妙に違っていたなーと二重の結末があった気がしました。
    死体はなかったけど、啓太にとってはずーっとあったわけですし、死体がなかったから良い(良いんですけども)ってことでもなくて、啓太は本当に人を殺したんだなあと思いました。彼も実際には殺してなかったからといってスカッと心が晴れたわけでもなくて、たぶん違いは刑務所に入らなかっただけで、実際に殺した人と同じように重い十字架を背負っている気がしました。
    また本当に怖がってるのに殺したことへの反省がないのはすごくリアリティがあった。後悔はしてるし罪悪感もあるけど、恋人への謝罪の気持ちはなかった気がする。まあほんとにひどい恋人だったからな。それでも最後まで謝罪の言葉を口にさせなかった木原さん、すごい。
    私もよく自分だっていつ誰かを殺したくなるかわからないなって思いますし、いつそんなぎりぎりの状況に追いやられるかわからないです。精神的に安定してるか不安定なのかとかそんなことは関係ないです。自分がどんなにまともに暮らしているつもりであっても、人は一人で生きてるわけではなくて誰かとかかわって生きてるわけだから。自分はちゃんとしててもいつ何かしらの事件に巻き込まれるかわからないし、まともに暮らしているつもりであってもまともじゃないかもしれない。自分だけは絶対に罪を犯したりしないと思ってる人がいますけど、そんな自信、わたしはぜったい持てないなと思います。自分だっていつ何をするかわからないです。決して殺しを肯定しているわけではないです。しかし殺しをした人たちを自分のいるところから簡単に線を引いてやんややんやと糾弾する人たちを見てると首を傾げたくなるんです。みんなそんなに確かに生きれてんのかいな、と。そういうことをこの妄想しまくる啓太から感じました。
    啓太の妄想でした!で終わったあとに、2,3とあったけど、1だけでよかった気がしました。でも2.3を読めたからこそ2と3はいらないかもなーって言えたのかも。でも私は、3はあまり好きじゃなかったです。なんでなんでしょう・・・杉浦さんのお母さんと妹が好きじゃなかったんだと思うけど・・たぶんそれ以外にもあるだろうな。でも大事な話だったんだろうな、2話も3話も・・。
    とにかく面白かったです。はーおもしろい。どうなってんだ。

  • 最後ハッピーエンドだ。平凡やけどみんな幸せなのがいいよね。

  • 話としては読ませるし、面白いと思う部分もあるけれど、好きかと問われると否。BL作品としてどこに楽しみを感じればいいんだろうと混乱する。恋愛や性愛に絡めず一般小説でこういったテイストのものを書いてくれればいいのに、と木原作品を読むたびに毎回思う。

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著者プロフィール

高知県生まれ。1995年「眠る兎」でデビュー。不器用でもどかしい恋愛感情を生々しくかつ鮮やかに描き、ボーイズラブ小説界で不動の人気を持つ。『箱の中』と続編『檻の外』は刊行時、「ダ・ヴィンチ」誌上にてボーイズラブ界の芥川賞作品と評され、話題となった。ほかの著書に『秘密』『さようなら、と君は手を振った』『月に笑う』『ラブセメタリー』『罪の名前』など多数。

「2022年 『コゴロシムラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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