- Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
- / ISBN・EAN: 9784883864355
作品紹介・あらすじ
「碧のかたみ」「天球儀の海」に続くシリーズ第3弾。
―― 帰る故郷はない。でもペアがいる。
太平洋戦争中期。
婚約者に逃げられた谷藤十郎は、外聞から逃れるように志願したラバウル基地で
高速爆撃機・彗星と共に着任した優秀で美しい男・緒方伊魚とペアになる。
伊魚は他人を避け、ペアである藤十郎とも必要最低限しか話さない。
しかし、冷たいようで実は生真面目で優しい男を、藤十郎は嫌いになれなかった。
そんななか、不調続きの彗星は偵察機の転用を命じられるが――。
感想・レビュー・書評
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2023/02/27-03/07
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それぞれ帰る場所をなくしラバウルへとやって来た藤十郎と伊魚。彗星の搭乗員としてペアになる2人だが、伊魚は藤十郎との接触を避けるような振る舞いをして…。
心を閉ざした受けが攻めの包容力によって心を開いていく話は大好きなので、伊魚が不器用で可愛くてもう最高でした。伊魚はすごい美貌の持ち主。真面目で不器用で、心を開いてくれるのには時間がかかるけれどその壁を越えれば深い愛情をもって精一杯答えてくれる。冷たいやつだと思うか、その奥の優しさに気づくか、それは相手次第。伊魚の事情や気持ちもすべて深い掬い上げて包んであげる藤十郎の懐の広さ…!この2人はまさに、ペア。お互いの唯一。防空壕の中で交わったり、死を待ちながら海の上で抱き合ったり、常に死を意識していた2人だったけれど、助かってよかった…! -
尾上先生の作品の1945シリーズ三作品目になります。どんどんより濃厚な設定を組んできてシリーズ最大ページ数になっています。前作と舞台は同じくラバウルの航空隊の話です。今までと違うニュアンスな気がしたんですが、互いがどこからか逃げてきて、死に一番近い場所でありながらラバウルが再スタートというところが面白いなと思いました。今回もたくさんたくさんすれ違って、お互いが大切で失えない存在になっていきます。死んでなお共に在りたい、というのは恋愛とは違うけど、友情でも友愛でもない、それでも確かに深い絆を結んでいるんですよね。幸せになって欲しいと本当に思いました。
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前作の月光ペア未読のまま一年を立つ。久しぶりの尾上先生の新作を手に取る。やはり素晴らしいな、と思わず感嘆の声を上げる。そんな難しい飛行機の操作半分以上に私の知識範囲を超えてるかかわらず、その張りがある場面を読んでるうちに、まるで彼らと一緒にその場にいる気がした。まずその臨場感がすごい。人に近寄らず、気位が高い割に、密やかに一人でモースルを叩く伊魚がカワイイ。無人島の鰐に罠をかける伊魚も、芳林堂のペーパーで蛇を捕まえてバンバンと捌く伊魚も勇敢で野生的な一面を垣間見できて嬉しい。唯一無二のペアという表現は好きだ。そう言えば、もしかして戦争で操縦員と偵察員という夫婦みたい存在はこういう関係があっただろうか、といろいろ想像してしまった。
書きたいんですこの二人の命がけの愛!!
って熱量が伝わるの...
書きたいんですこの二人の命がけの愛!!
って熱量が伝わるのよ〜